2024年2月16日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1318.58で終わりました。一週間前に比べ+12.01(+0.92%)の小幅続伸でした。主要インデックスのNYダウ(前週末比-0.24%)やSP500(前週末比-0.77%)に比べてやや強い動きでした。
今週の米国株式市場は、
・発表されたCPI、PPIがともに予想より高い伸びを示したことから、利下げ期待が後退
・一方で、鉱工業生産や小売り売上高といった景気データは、逆に予想より弱く、利下げ期待の復活
・個別銘柄はAI関連や好決算銘柄が引き続き買われる
ということで、全体を通してみれば、やや弱いという感じでした。
小型成長株は、この2年ほどずーっと主力インデックスに負け越しており、その修正もあるのか、「相対的」には少し強い流れが続きました。
<米国小型成長株の出遅れ、割安さ>
小型成長株の主力株に対する相対的な負けが始まって、3年近くになります。
特にこの2年間は、長期的なトレンドから見ても、大幅に割安な水準が続いています。
この1年半、主力インデックスは上昇し最高値更新になっていますが、小型成長株はまだまだ上昇率が鈍く、歴史的高値からはかなり下の水準にあります。
(下記のラッセル2000グロース÷SP500も参照ください)
景気は底堅い、しかし、インフレは落ち着く、というのは小型成長株にとっては最高の投資環境にあります。外部材料が悪化しなければ、小型成長株の逆襲相場が来ると期待しています。
<外部材料>
米国国内の環境は良いのですが、「米国の外の材料」は、全く好転せず、今週はさらに悪化が加速しました。
従来から、以下の4つの材料を懸念しています。
・中国経済
・欧州政治
・中東問題
・ウクライナ
今週は、ウクライナ情勢と中東問題で悪化が見られました。
<ウクライナ情勢>
以前からこのコメントでは「日本(及び西側)メディアと(私が中立的であると思っている)軍事ブロガーやユーチューバーには、発信している情報内容に大きな差異がある」と書いてきました。
善悪は別として、投資を行う場合、何が真実かは知っておく必要があります。
今週は、この差異が一気に詰まった一週間でした。やはり中立的なブロガーの方が正しい情報を提供していたようです。アウディーイウカが陥落しました。
西側メディアの情報内容はともかく、(彼らも政治的な理由もあるからバイアスをかけていると思われるので)、今回のアウディーイウカの陥落についてのブロガー達の情報内容は衝撃的です。
この1ケ月、中立的ブロガー達はアウディイーイウカが非常に危機的な状況であることを発信してきました。しかし、彼らでさえ驚くぐらい、最後の数日の動きは急激でした。
苦境を救うための援軍は成果がでず、その直後に撤退命令がでました。舗装道路は全てロシア軍に抑えられている中で、ウクライナ軍が撤退(逃走?)しました。非常に悲惨な状況になっているようです。(様々な映像が出回っています)
ブロガー達も多くが「バフムトのように数週間に及ぶ市街戦」を予想していたため、ウクライナ軍が一気に逃走したことを、ショックをもって伝えています。
バフムトはワグナーが甚大な犠牲を払って制圧したため、「その次」を行う余裕はありませんでした。しかしアウディーイウカでは市街戦の時期が非常に短く、ロシア軍に余力があるため、一気に広範囲の掃討戦に展開するのでは?との見方もあります。(一部ブロガーは、いったんこの戦線は休憩し、次はクピアンスクとロボティネとも言っていますが)
いずれにせよ、戦況はかなり大きな転換点に来ています。
<アメリカのウクライナ支援>
一方米国では、このウクライナの危機的な状況にもおかまいなく、下院がウクライナ支援の法案の審議をほったらかしにして、2週間の休会に入ってしまいました。共和党が悪い!と言いたいところですが、米国市民の考えの変化も気になります。
最近の世論調査で、アメリカ人の2/3以上が、「ウクライナの戦争を終わらせるために、アメリカは外交的努力を急ぐべきだ」と考えていることがわかりました。
→ Quicy Institute & Harris Poll の世論調査
そして、ウクライナに対して「外交的な成果を条件とする経済援助」が48%となっています。(経済援助ストップは30%、条件無しで援助すべきは22%)
共和党支持者に絞った場合、「外交的な成果を条件とする経済援助」が40%、経済援助ストップは46%、条件無しで援助すべきは15%であり、現在のバイデン政権のアプローチ(=外交的なアプローチなしで援助継続)とは、全く相容れません。
ちなみに、民主党支持者ですら、それぞれ54%、17%、29%となっています。
ウクライナの援助が今回は議会を通過したとしても、遅かれ早かれ、米国は外交的なアプローチ(=ウクライナの領土妥協による停戦)へと進む可能性が高くなってきました。
<ガザ>
私は過去のコメントでも書いていますが、「イスラエルは国際的な批判を重視しない。彼ら自身がもうここまでで手を引こう、と考えるところまで行く」と思っています。
ネタニヤフ政権も、下手に妥協したら政権が持ちません。もはや正面突破する=ハマスを徹底的に破壊する、しか方法がないと思っています。
バイデン政権は
・イスラエルの支持をやめれば、国内の中道(保守層はもちろん)の支持を失う
・パレスチナの惨状を放置すれば、国内のリベラルの支持を失う
という板挟みになっています。
アンチトランプの幅広い(しかし弱い)支持で大統領選の勝利を目指すバイデン大統領にとって、アクセルとブレーキを両方踏む中途半端な政策しか取れません。
しかしこの煮え切らない態度では、「国家の存亡を意識するイスラエル国民」と「政治生命を賭けているネタニヤフ氏」を強烈にリードすることは非常に難しくなります。
イスラエル軍がラファに攻撃を開始したとき、さらなる国際的批判が起こることは間違いありませんが、バイデン政権のどっちつかずの政策はそのまま継続すると思われます。
「もう、イスラエルの肩は持たない。軍事行動はやめろ!」っていうのは期待できないと思っています。中東問題の混迷は一段と悪化すると心配しています。
<小型成長株相場とラッセル2000グロース VS SP500 >
2024年2月16日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1318.58/5005.57=26.34%、
26週移動平均との乖離は+0.37%でした。
2020年12月中旬に長期的な持ち合いレンジを上に離れ43%まで急上昇しました。しかし、その後継続的に下落し、レンジの下を抜けました。
2022年7月から27%~28%程度で「底値での横這い」という感じでしたが、2023年9月にはいり、さらにこのレンジを下に突き抜け、ついに2023年11月上旬には25%割れまで下落しました。FRBの利下げ期待が出てきたことから下げ止まっていますが、まだまだ異常に低い水準にあります。
小型成長株の本格的・長期的なリカバリー相場を期待しています。(外部材料が落ち着いてくれることを、願いながら)
→ 2020年9月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2023年10月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)
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