2024年3月8日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1364.84で終わりました。一週間前に比べ+3.72(+0.27%)の小幅続伸でした。主要インデックスのNYダウ(前週末比-0.93%)やSP500(前週末比-0.26%)に比べるとやや堅調という感じでした。
今週の米国株式市場は、ISMの指数や雇用統計等の経済指標、パウエルFRB議長の議会証言などの材料を織り込む一週間でした。景気はまずまず、FRBは利下げをする方向にあるがタイミングは不明、全体として株式市場にはポジティブ。しかし、先週までハイテクを中心に堅調が続いていたので小休止。そういう感じの動きでした。
出遅れの小型成長株が、その負けを少しづつ埋めた一週間でもありました。
<米国小型成長株の出遅れ、割安さ>
小型成長株の主力株に対する相対的な負けが始まって、3年近くになります。
特にこの2年間は、長期的なトレンドから見ても、大幅に割安な水準が続いています。
この1年半、主力インデックスは上昇し最高値更新になっていますが、小型成長株はまだまだ上昇率が鈍く、歴史的高値からはかなり下の水準にあります。
(下記のラッセル2000グロース÷SP500も参照ください)
景気は底堅い、しかし、インフレは落ち着く、というのは小型成長株にとっては最高の投資環境にあります。外部材料が悪化しなければ、小型成長株の逆襲相場が来ると期待しています。
<外部材料>
米国国内の環境は良いのですが、「米国の外の材料」は、懸念材料が山積しています。
従来から、以下の4つの材料を懸念しています。
・中国経済
・欧州政治
・中東問題
・ウクライナ
<中東情勢>
ガザは相変わらず、休戦に至っていません。
ハマスは人質を渡せば全滅させられるので、「一時停戦」は受け入れられません。「休戦」が必要です。一時停戦なら、人質をほんの少し開放するだけです。
一方イスラエルは、人質のために休戦したら、ハマスを生き延びさせることになるため、「休戦」は受け入れられません。「人質解放があっても極めて短時間の一時停戦」しか受け入れられません。
ハマスの全滅を目指すイスラエルの目的自体が変更にならない限り、「一時的」にせよ「戦争状態を止める」のは非常に難しい情勢です。
しかし、ガザでの戦闘が一日伸びれば、その分パレスチナ難民の悲惨な状況は悪化し、国際的な圧力も大きくなります。
イスラエルは「国の存続」がかかっているため「外野の圧力」は、無視します。
しかし、国内のリベラル派の声を無視できない欧米諸国は厳しい状況に追い込まれていきます。
<ウクライナ>
相変わらずロシア軍の攻勢が続き、多くの戦線でウクライナの後退が報告されています。
ウクライナは、欧州諸国と2国間協定を結び、さらにトルコやサウジにゼレンスキー大統領が訪問して「ロシア軍の全面撤退を前提とする停戦案」への支持を訴えました。
しかし、戦線の悪化は覆い難く、トルコからは「ロシアを含めた停戦交渉」を提案されました。さらにローマ教皇からは「白旗をあげる勇気が必要」とまで言われる状況に追い込まれています。
私が見ている(中立と思われる)軍事ユーチューバーやブロガーが、戦線の悪化同様に注目しているのが、「ウクライナの動員問題」です。
「アメリカ成長株市場の動き2024年2月2日」のコメントにも書きましたが、これらのユーチューバーやブロガーが問題視していることは:
「ウクライナは戦線の維持には大幅な新規兵員の動員が必要。しかし、ゼレンスキー大統領が大幅動員をするためには、本当の事=戦況の悪化、を言う必要がある。現状でも動員は上手くいっていない。戦況の悪化を言ったら、一段と動員は難しくなる。
しかし、戦況を好転させるには、大量=50万人の動員が必要。(さらに武器も必要だが)
このジレンマをゼレンスキー大統領は乗り切れるのか?」
アメリカの支援法案が下院を通過した時に、ゼレンスキー大統領は「これでウクライナは反撃できる!」という雰囲気を作り出して、この動員問題を一気に進めるのでは、と思われます。アメリカの支援決定を待ちながら、いよいよウクライナは正念場を迎えることになります。
<中国の不動産問題>
全人代が行われています。これに伴い、住宅相が記者会見をしました。
「経営不振の不動産開発会社の清算を促進し、一方で消費者が損害を受けないように、住宅開発会社への資金供給を支援する」と述べました。
不振企業の整理のやりかた、資金提供の方法によって経済全体への影響が変わってきます。
このコメントでは過去何度も書いていますが、私は、
「中国政府が、経済的価値を持たない、あるいは額面に比べて大幅に毀損している債権を、損失覚悟で購入しない限り、問題は解決しない」と思っています。
「経営不振の不動産開発会社を整理」する時に、これらの不振会社の
・資産(在庫不動産、建設途中の不動産、土地の開発権利等)と
・債務(銀行融資、社債、内外ファンドからの資金提供、既に不動産購入者から受け取った資金等)
の「差」をどうやって処理するのか?が重要になります。
放置するのか?(=この場合は、経済的&社会的に大混乱)
差額を政府が補填するのか?(=この場合は、政治的な覚悟が必要)
開発企業を整理しても、それだけでは問題を悪化させます。この「差」をどうやって埋めるかが非常に重要になります。
<小型成長株相場とラッセル2000グロース VS SP500 >
2024年3月8日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1364.84/5123.69=26.64%、
26週移動平均との乖離は+0.74%でした。
2020年12月中旬に長期的な持ち合いレンジを上に離れ43%まで急上昇しました。しかし、その後継続的に下落し、レンジの下を抜けました。
2022年7月から27%~28%程度で「底値での横這い」という感じでしたが、2023年9月にはいり、さらにこのレンジを下に突き抜け、ついに2023年11月上旬には25%割れまで下落しました。FRBの利下げ期待が出てきたことから下げ止まっていますが、まだまだ異常に低い水準にあります。
小型成長株の本格的・長期的なリカバリー相場を期待しています。(外部材料が限界点に達して爆発しないことを、願いながら)
→ 2020年9月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2023年10月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)
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