2024年2月23日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1311.15で終わりました。一週間前に比べ-7.43(-0.56%)の小幅反落でした。主要インデックスのNYダウ(前週末比+1.30%)やSP500(前週末比+1.66%)は堅調であり、相対的にかなり弱い動きでした。
今週の米国株式市場は、
・景気は底堅い→利下げのスケジュールが先に延びた→債券金利はやや上昇→株式市場はやや下落
・しかし、個別銘柄、特にエヌビディアの決算への注目度が高く、エヌビディアの好決算の発表で、グロース株・ハイテク株が大幅上昇→大型主力インデックスは反発に転じる
・但し、小型成長株がこの流れに追随するには時間がかかり、取り残された小型成長株はやや下落にとどまる
という感じの一週間でした。
<米国小型成長株の出遅れ、割安さ>
小型成長株の主力株に対する相対的な負けが始まって、3年近くになります。
特にこの2年間は、長期的なトレンドから見ても、大幅に割安な水準が続いています。
この1年半、主力インデックスは上昇し最高値更新になっていますが、小型成長株はまだまだ上昇率が鈍く、歴史的高値からはかなり下の水準にあります。
(下記のラッセル2000グロース÷SP500も参照ください)
景気は底堅い、しかし、インフレは落ち着く、というのは小型成長株にとっては最高の投資環境にあります。外部材料が悪化しなければ、小型成長株の逆襲相場が来ると期待しています。
<外部材料>
米国国内の環境は良いのですが、「米国の外の材料」は、懸念材料が山積しています。
従来から、以下の4つの材料を懸念しています。
・中国経済
・欧州政治
・中東問題
・ウクライナ
<中国の不動産問題>
今週は中国で住宅ローンの利下げがあり、住宅ローン金利の低下によって不動産市場を下支えしようという中国政府の姿勢が見られました。
しかし、「不動産価格上昇中は、利上げは不動産投機の過熱を抑えるには有効」ですが、「不動産価格下落中の場合、利下げだけでは不動産市場の底入れは難しい」ことは、歴史的によく見られます。私は、大きな不動産市場の下落があった場合、公的部門が不良債権問題への財政出動が思っています。
このため、短期的にはセンチメントの変化はあるかもしれませんが、利下げだけでは問題解決にはつながらず、引き続き不動産の問題は中国経済に悪影響を与え続けると考えます。
<ウクライナ情勢>
以前からこのコメントでは「日本(及び西側)メディアと(私が中立的であると思っている)軍事ブロガーやユーチューバーには、発信している情報内容に大きな差異がある」と書いてきました。
しかし、ここにきて日本のメディアもやっと、ディープステート等の軍事ブロガーの意見をニュースソースとして利用し始めました。さすがに、西側政府や主要メディアの情報があまりにも実態からかけ離れているため、「もう戦線の状況と辻褄を合わせるのは不可能」という感じになってきたのでしょう。今後は、少しは中立に近い報道がされるのでは?と思っています。
状況だけ書けば、アウディーイウカ、ロボティネ、バフムート等多くの戦線でロシア軍の侵攻が続いています。
<ウクライナ侵攻後のシナリオ>
ところで、ロシアがウクライナに侵攻して2年になります。
侵攻直後のコメント「アメリカ成長株市場の動き-2022-03-04」には以下の2つのシナリオが考えられると書きました。
(我々西側諸国の市民にとって)良いシナリオ例
「厳しい経済政策によってプーチン政権が弱体し、ウクライナを結局コントロールできないまま撤退する。
中国は台湾侵攻のリスクの大きさを理解し、民主主義勢力はより安定した国際秩序を獲得する。またロシアを助けたことで、中国に対する世界的な信頼化はさらに悪化し、中国の影響力は低下する。
ロシアの撤退することで原油・天然ガス価格は下落する。脱炭素も従来のスケジュールに沿って進展する。
欧州のNATO加盟国は国防費を積み増しし、米軍基地の拡充や設置を希望する。結果的に米国の覇権はさらに安定する。」
悪いシナリオ例え
「ロシア経済は中国とインドとの取引継続で、厳しいながらも持ち堪える。欧州も日本も米国も、ロシアの原油と天然ガスの輸入をゼロに出来ず、SWIFT排除は中途半端な状況が続く。ウクライナでの戦争はゲリラ戦となり、ウクライナの国土の荒廃が一段と進む。
ロシアの多くの銀行をSWIFTから排除した事で、中国の国際決済システムであるCIPSの利用拡大に弾みがつく。ロシアのみならず西側に経済制裁されそうな独裁国家・強権国家・軍事政権が、ロシアの窮状を見て、保険としてのCIPS利用が広がる。
原油価格は高止まりし、中東産油国の発言力も増す。サウジの皇太子など、独裁的指導者が、国際政治への影響力を回復する。
欧米では、脱炭素と国家安全保障とのトレードオフ関係に焦点が当たり、脱炭素は後退する。
米国及び米ドルの覇権が揺らぎ、国際秩序は大きく不安定化する」
2年後の現在、悪いシナリオの方が多く実現していることが明確です。
但し、西側諸国の中では、アメリカの地位がかなり強くなったのは事実です。西側諸国の中ではアメリカの一人勝ち。ドルも堅調です。(アメリカの株式市場も堅調!小型成長株はちょっと期待はずれでしたが)
しかし、グローバルサウスの立場が全体として大きくなり、西側諸国による世界全体のコントロールが効かない世界になってきました。さらにイスラエルのガザ侵攻が、西側諸国のダブルスタンダートを目立たせ、「理念的にも」西側先進国の国際的な影響力を削りました。
結果的に、ロシアは生き残り、戦争を有利に進めています。
また、中ロ接近による中国警戒感の一段の高まりにより、日本が漁夫の利を得ました。
<小型成長株相場とラッセル2000グロース VS SP500 >
2024年2月23日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1311.15/5088.80=25.77%、
26週移動平均との乖離は-0.16%でした。
2020年12月中旬に長期的な持ち合いレンジを上に離れ43%まで急上昇しました。しかし、その後継続的に下落し、レンジの下を抜けました。
2022年7月から27%~28%程度で「底値での横這い」という感じでしたが、2023年9月にはいり、さらにこのレンジを下に突き抜け、ついに2023年11月上旬には25%割れまで下落しました。FRBの利下げ期待が出てきたことから下げ止まっていますが、まだまだ異常に低い水準にあります。
小型成長株の本格的・長期的なリカバリー相場を期待しています。(外部材料が落ち着いてくれることを、願いながら)
→ 2020年9月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2023年10月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)
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