2022年6月17日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1002.44で終わりました。一週間前に比べ74.28ポイントの大幅続落(-6.90%)でした。主要インデックスのNYダウ(前週末比-4.79%)やSP500(前週末比-5.79%)を上回る下落率でした。
懸念された通り、0.75%の利上げにより一時的には材料出尽くしで買われたものの、5月同様その後は悪材料をもう一度織り込む動きとなり、大きな下落となりました。
但し、今週はやや割り負けしたものの、4月中旬以降、小型成長株の主力インデックスへの相対的パフォーマンスはほぼ同じであり、小型成長株の相対的な弱さは改善されつつあります。
<ウクライナ侵攻とスタグフレーション>
今週は、欧州の主要国(英、独、仏、伊)の首脳がキーウを訪問しました。一方、ロシアは中国と首脳会談を行い、モスクワで国際会議を開催しました。ロシア・ウクライナともに「相手は孤立している、自分には見方がいる」とアピール合戦という感じです。
最近の動きを見ると5月8日のコメントで書いたように、「世論戦」が今後の流れを決めるようです。
・西側諸国は、「ウクライナを見捨てられない」と「インフレにはこれ以上我慢できない」の世論の戦いです。
・ロシアは「ウクライナがNATO参加することによる国家安全保障のリスクを受け入れられない」と「これ以上国際的に孤立することには耐えられない」の世論の戦いです。
・ウクライナは「ロシアによる侵略を受け入れられない」と「これ以上の悲惨な戦争には耐えられない」の世論の戦いです。
・途上国は「西側諸国と仲良くしないと、経済的なダメージを受ける」と「何が正義とはどうでも良いから、とにかく食料とエネルギーをくれ」の世論の戦いです。
現状では、
・ロシアは「ウクライナがNATO参加することによる国家安全保障のリスクを受け入れられない」、
・ウクライナは「ロシアによる侵略を受け入れられない」
・途上国は「何が正義とはどうでも良いから、とにかく食料とエネルギーをくれ」
が主流で、しばらくはぶれそうにはありません。
問題は西側諸国です。
アメリカ、英国、そして予想外のスイスまでもが利上げをしました。いつ西側が「インフレにはこれ以上耐えられない」が「ウクライナを見捨てられない」を上回るか。世論調査では既に上回っています。しかしリーダーたちは、「ウクライナを見捨てることは、権威主義の国が勢いを持ち、長期的に危険であること」がわかっています。焦点は、どこまでリーダー達が我慢できるか?です。何かがきっかけを作るかもしれません。例えば、ブルガリアの政治が、大きな変化の小さな始まりになる可能性もあります。
アメリカ成長株の視点では、「戦争やめてインフレがピークアウト」がベストシナリオです。しかし、民主主義国の国民としては、長期的な問題をはらみます。もちろん、ウクライナで譲歩して、ロシアを長期的に締め上げればよい、という戦略もありますが・・・
戦争が短期的に終わる可能性が低くなり、インフレ&利上げによりスタグフレーションの可能性が反比例的に上がってきました。
<バイデン大統領とインフレ>
バイデン大統領の支持率が悲惨な事になっており、その最大の原因がインフレです。
石油会社に圧力をかけても、今までさんざん「化石燃料には投資させない」と言ってきた手前、説得力がありません。
スタグフレーションを避けるためには、インフレ抑制が必要ですが、実はバイデン大統領には処方箋がいっぱいあります。しかし、残念ながら全て「宗旨替え」が必要です。
・北米大陸の化石燃料の生産力・供給力を長期的に増加させる → 脱炭素の旗を降ろす
・需要超過の圧力を下げる → 予算の内容を小さくして、左派との約束を反故にする
・サウジアラビアの皇太子と仲良くする → 人権問題に目をつむる
・ウクライナとロシアの仲介をして戦争を止める → ロシア敵視の方針を撤回する
バイデン大統領は、どこから始めるのでしょうか?
何かしないと中間選挙は悲惨なことになります。人権、脱炭素、左派との連携、ロシアとの関係、の何を犠牲にするのか?
時間が限られた中で、どのような順番で、何を選択するのか?興味あるところです。
バイデン大統領の宗旨替えが、アメリカ成長株を救う。そんな目で見ています。
<小型成長株の押し目買い>
木曜日と金曜日、小型成長株は大幅に下がりました。良いところで買えたと思っています。
引き続き、毎日少しずつグレートスモールを買っています。
<小型成長株相場とラッセル2000グロース VS SP500 >
2022年6月17日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1002.44/3674.84=27.28%
26週移動平均との乖離は-1.27%でした。
ラッセル2000グロース÷SP500は、2013年から長期的に32%~38%のレンジで推移してきました。2020年12月中旬にこのレンジを一次上に離れ43%まで急上昇しました。しかし、その後継続的に下落し、レンジの下を抜けました。
現在の水準は、2020年のコロナの最悪期をも超え、リーマンショック以来の歴史的な割安水準になっています。相対的には歴史的な買い場となっており、非常に魅力的な投資機会を提供していると思っています。
→ 2020年1月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2022年4月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)
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