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アメリカ成長株:ヌバレント(Nuvalent):抗ガン剤の開発会社

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アメリカ成長株:ヌバレント(Nuvalent)の概要

ヌバレント
Nuvalent Inc
ティッカーコード:NUVL
上場市場:NASDAQ National Market System

業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/NUVL

健常な細胞とガン細胞の決定的な違いは増殖の仕方にあります。
健常な細胞の増殖は厳密にコントールされていますが、ガン細胞は何らかの原因によって無制限に増え続け臓器を蝕んでいきます。

この無秩序な増殖の原因となる代表格とも言えるのが“キナーゼ”と呼ばれるリン酸化酵素です。キナーゼによってリン酸化されたタンパク質の一部は細胞増殖を制御するシグナルを伝える役割を持っています。

遺伝子の変異によって異常な形のキナーゼが作られるとタンパク質のリン酸化が止まらなくなることがあって、これが細胞増殖をうながすシグナルタンパクであった場合はガン化につながります。多くのガン細胞でキナーゼの暴走が見られるため、キナーゼをターゲットとした抗ガン剤が開発されてきました。

しかし、全タンパク質の三分の一はリン酸化されているというデータもあるほどタンパク質のリン酸化による調節は体中のあらゆる組織で行われていて、安易にキナーゼの働きを抑えると様々な障害が体に起きてしまいます。

そこで最近は標的を絞り、数あるキナーゼの中でも無秩序な増殖を引き起こしているキナーゼの働きだけを抑える分子標的薬が開発されるようになりました。

今回紹介するヌバレント社は、ROS1、ALK、HER2といったガン細胞の増殖に関わるキナーゼの働きを抑える薬剤(阻害剤)を開発しています。
主力製品候補はROS1を標的としたNVL-520で、臨床試験の第一段階に入りつつあります。

ROS1の阻害剤はすでに中外製薬からエヌトレクチニブ(商品名:ロズリートレク)が承認を受けて商品化されています。
ただし、エヌトレクチニブはROS1だけでなくTRKという別のキナーゼも同時に阻害するため、従来の抗ガン剤に比べれば小さいとは言え見過ごせない心臓障害などの副作用が認められています。

これに対して同社のNVL-520はROS1阻害に特化していてTRKには影響を与えないことから副作用がより小さく抑えられると期待されています。

同社の戦略として副作用をなるべく低く抑えるために標的だけに厳密に結合するように薬剤分子が設計されています。
ところが、厳密にすればするほど今度はガン細胞に起きるタンパク質の構造変化に弱くなるという別の問題が生じることになります。
ガン細胞は増殖するうちに遺伝子の変異が起きるため設計図が変わってしまった標的のタンパク質の構造も変化します。

そうなると元のキナーゼの構造の中にきっちりと収まるように作られた分子は、ちょっとした構造の変化によって結合できなくなって効果が下がる“薬剤耐性”が出てきてしまうのです。そこで同社はキナーゼの構造に多少の構造変化があっても対応できるように、ある程度フレキシブルに結合するような分子設計を行っています。

しかし、ROS1だけに厳密に結合するような分子が、構造変化に対しては柔軟に結合できるという話は根本的に矛盾しているような気がします。

この「副作用の抑制と薬剤耐性の克服」という背反する課題の両立が可能なのか、今後の臨床試験の結果に注目したいと思います。

 会社ウェブサイト
www.nuvalent.com

 

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