アメリカ成長株:ダイス・セラピューティクス(DICE Therapeutics)の概要
ダイス・セラピューティクス
DICE Therapeutics Inc
ティッカーコード:DICE
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/DICE
ダイス・セラピューティクス社は主に自己免疫疾患のための小分子経口薬を開発しています。小分子経口薬は分子サイズが小さく安定であるため製造・保存・コスト・投薬の面で有利な“錠剤”の形で提供できます。
開発が一番進んでいるのは“乾癬（かんせん）”という自己免疫疾患の治療薬を目指す“S011806”で臨床試験の第一段階にあります。
乾癬は免疫の暴走が招く炎症によって肌に赤いウロコのような病変、かゆみ、出血、痛みが起こり外見上の問題から精神的苦痛も伴うもので、800万人異常のアメリカ人、世界では1億2500万人が苦しんでいると言われています。
この厄介な自己免疫疾患は、感染がないのにもかかわらず過剰に放出される“インターロイキン-17”という情報伝達物質によって引き起こされることが分かっています。
このインターロイキンは細胞の受容体に結合して病原体を除去するための炎症を誘発します。S011806はインターロイキンと受容体との結合を妨害する働きをする小分子の薬剤です。
どちらも巨大分子であるため、小さな分子一つで確実に結合を妨害するのは容易ではありません。これは巨大分子同士の結合は接着面が広く、小さな分子が間に挟まったくらいでは他の部分で補って結合してしまうためです。
乾癬の治療薬としてはすでにセクキヌマブとイキセキズマブという抗体薬がありますが、抗体自体が巨大分子であるため確実に結合を妨害できます。
しかし抗体薬は病院にて点滴で投与する必要があり、治療期間が長期に渡る自己免疫疾患では自宅で飲める錠剤の形の小分子経口薬が特に求められています。S011806はこれらの抗体薬と同様の効果を発揮できる小分子経口薬を目指しています。
巨大分子間の結合を確実に妨害できる小分子を見つけるためには、膨大な量の候補の中から選び出す必要があり、同社は“DNAコード化ライブラリー（DEL）”という手法を使ってこれを実現しています。
この方法では、候補となる小分子群にDNAでラベルをつけておき、標的タンパク質と混合して結合能の高い小分子だけを選別できます。
従来の個別に調べていた方法に比べて一度にたくさんの候補の中から選べるので非常に効率的です。同社は乾癬のためのS011806と同様に自己免疫疾患である潰瘍性大腸炎やクローン病の治療薬として承認されているベドリズマブという抗体薬に代わる小分子経口薬（ENTYVIO）も開発しています。
これらの疾患では免疫細胞による自己の細胞に対する攻撃が免疫細胞の表面にある“インテグリン”というタンパク質と標的の細胞の表面にあるタンパク質同士が結合することで始まります。ベドリズマブはインテグリンに対する抗体で、免疫細胞が攻撃目標の細胞に結合するのを妨害します。
また特発性肺線維症という自己免疫疾患が原因の一つと考えられている病気のための小分子薬の開発も進めていて、いずれも開発の初期段階にあります。
このケースでもインテグリンの一種が関わっていて、インテグリンと受容体の結合を妨害することで症状を緩和します。
抗体薬は標的の物質をマウスに投与するだけで作られるため開発は比較的容易ですが
・生産コストが高い
・大量生産に向かない
・低温で保存する必要がある
・投薬は点滴に限る
などの欠点も多く抱えていて、できれば抗体薬よりも小分子経口薬の形で提供できればそれに越したことはありません。
同社の開発は主に抗体薬と小分子経口薬の代替作業であり、実現すれば抗体薬の市場をそのまま受け継ぐことができます。
すでに抗体薬が開発されているか標的が特定されている疾患を対象としているため、病気の原因となる標的物質の解明などの基礎的な研究を省いて効率的に新しい薬を市場に投入できます。
効果が高く副作用も小さいとしてもてはやされてきた抗体薬ですが、こうしたタンパク質でできたバイオ医薬品には上記したような欠点もあり、今後は小分子経口薬に置き換わるバイオ医薬品も増えていくことになるでしょう。
会社ウェブサイト
www.dicemolecules.com
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