アメリカ成長株:アクサム・セラピューティクス(Axsome Therapeutics)のアップデート
アクサム・セラピューティクス
Axsome Therapeutics Inc
ティッカーコード:AXSM
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://finance.yahoo.co.jp/quote/AXSM/annual
アクサム・セラピューティクス社については、3年ほど前に一度紹介しましたが、その後の進展についてレポートしたいと思います。
同社は、うつ病、アルツハイマー病の興奮、偏頭痛、過食症などの中枢神経の異常が関与する疾患のための治療薬候補の臨床試験を進めていましたが、その中のAXS-05が無事に上市まで漕ぎ着けることができました。
AXS-05は、うつ病とアルツハイマー病の行動障害の治験が進められ、2022年8月に抗うつ薬としてFDA(アメリカ食品医薬品局)の承認を受けました。
現在“オーヴェリティ(Auvelity)”という商品名で米国内ですでに販売され始めており、欧州や日本での承認申請も進められています。
新しい錠剤タイプの抗うつ薬が承認されたのは60年間ぶりのことで、患者や医療関係者には大きなニュースとなりました。
従来の抗うつ薬は効き始めるまで数週間かかるのに対し、オーヴェリティは服用してから1週間で効果が発揮される即効性があります。
特に評価されているのは、即効性の抗うつ薬として最近よく使われるようになった“ケタミン”のような重篤な副作用がない点にあります。
ケタミンは元々麻酔薬でしたが、近年の研究で治療抵抗性のうつ病に効果があることが明らかになり、治療に用いられるようになりました。
しかし、依存性、幻覚、妄想など覚醒剤のような副作用を伴うため、代替となる優れた即効性の抗うつ薬の登場が待たれていました。
そんな中で出てきたオーヴェリティは、飲んですぐに効く安全な抗うつ薬として大きな期待を持って受け入れられています。
うつ病は様々な要因が関わって引き起こされますが、その一つに中枢神経での神経伝達物質のバランスの乱れがあります。
神経伝達物質は、神経細胞を伝わってきた電気信号を次の細胞に伝える役割をする化学物質で、神経細胞上の受容体タンパク質に結合することで機能します。
うつ病の治療には、この神経伝達物質の乱れを正常化する治療薬が有効です。
オーヴェリティやケタミンもその一種で、過剰な神経伝達物質が受容体タンパク質へ結合するのを防ぎます。
中枢神経にはセロトニン、ドーパミン、ノルアドレナリン、グルタミン酸、ガンマアミノ酪酸、アスパラギン酸などの様々な神経伝達物質があり、こられが働きすぎたり、働かなすぎたりすることがうつ病を引き起こす場合があります。
従って、多くの神経伝達物質とその受容体タンパク質が抗うつ薬の新しいターゲットとなる可能性があり、開発の余地が残されています。
最近のタンパク質の構造解析、コンピューターによる薬剤分子の設計、人工知能などの技術進化により、従来よりも優れた抗うつ薬が登場するかもしれません。
まだうつ病の原因については完全に解明されているわけではなく、今後研究が進んでより効果が高く副作用の低い治療薬が開発されることが期待されています。
会社ウェブサイト
www.axsome.com
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