2024年8月2日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1350.80で終わりました。一週間前に比べ-99.85(-6.88%)の急反落でした。主要インデックスのNYダウ(前週末比-2.10%)とSP500は(前週末比-2.06%)の下落率はさほど大きくなく、小型成長株だけが急落した感じです。
発表された雇用統計と景気指標が、ともに予想水準を下回ったため、これまでの「金利引き上げによってインフレはコントロールされて、景気はソフトランディングできる」というポジティブな見方から、「金利引き上げが強すぎて、景気はハードランディングになるのでは?」というネガティブな見方へのシフトがありました。
さらに、小型成長株の場合、ここ数週間の動きが「一部大型IT・AI銘柄が値崩れ、一方で、割安な小型成長株を買う」であったことから、この反動もあり、大きな下落となっています。
結果的に、対大型主力インデックスとの相対的な位置は、一か月前に戻った水準となっています。
このため、再び小型成長株の対大型株の比率は、この20年間で最も割安な水準となっています。(下記のラッセル2000グロース÷SP500も参照ください)
<米国小型成長株の出遅れ、割安さ>
この数か月、このコメントでは「米国景気のソフトランディング」を前提に、「米国の小型成長株にはポジティブな環境、さらに主力株に対して歴史的割安感」と考えてきました。
しかし、今週この前提条件である「ソフトランディング」への懸念が株式市場に出てきました。
まだ景気の堅調を支える指標もあり、ソフトランディングの可能性も捨てきれません。また、早晩FRBの利下げも期待されます。このため、小型成長株に対する強気な見方は維持できると思っています。
さらに、米国小型成長株が「相対的に異常な割安である」という点は変更がありません。
但し、景気が本当にハードランディングとなった場合、小型成長株は「少数の勝者、多数の敗者」が生まれ、この場合は「インデックス全体は冴えない動き」となると思っています。
インデックスファンドに対して、アクティブ運用のファンドの「運用の優劣」が明確になる局面でもあります。
<外部材料>
従来から、以下の4つの材料を懸念しています。
・中国経済
・欧州政治
・中東問題
・ウクライナ
今週は、かなり大きな悪化が見られました。
イスラエルがハマスの最高指導者をイランで殺害したことで、ガザの問題はさらにエスカレートしました。しかし、米国はこのようなイスラエルへの支援を停止するどころか、さらに支援を強化しており、中東の問題が収まる兆しはありません。
ウクライナでは、相変わらずいくつかの戦線でロシア軍の進行が続いています。そして、その進行スピードが加速しています。
F16の配備、ロシア潜水艦の撃沈など、ウクライナにとっても良い話はあるのですが、大きな流れではウクライナの劣勢が継続・加速しています。
このような背景から、「停戦」についての動きが活発になってきています。ウクライナ自身が「停戦」について情報発信する機会も増え、また、インドのモディ首相のウクライナ訪問の噂もあります。「停戦内容」については懸念されますが、もし停戦の動きが明確にでれば、米国小型成長株にとっては、一つ不安材料が消えることになります。
引き続き、ウクライナ情勢については注意して見ていきたいと思っています。
<小型成長株相場とラッセル2000グロース VS SP500 >
2024年8月2日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1350.80/5346.56=25.26%、
26週移動平均との乖離は-0.18%でした。
2020年12月中旬に長期的な持ち合いレンジを上に離れ43%まで急上昇しました。しかし、その後継続的に下落し、レンジの下を抜けました。その後も一貫して下落していましたが、「FRBの利上げ局面終了」により、2022年5月からやや持ち直しました。
しかし、昨年後半から、大型株は一部のIT銘柄に引っ張られる形で非常に堅調であるのに対して、小型成長株の上昇率は「利下げが明確にならない」ため上昇速度が「相対的に少ない」状況です。(実際には、小型成長株の決算も悪くないのですが、市場は正当に評価していません)
現在の小型成長株の相対的な水準は、この20年間で最低水準にまで下がっています。
主力インデックスに比べて、「歴史的な割安状態」にあると考えており、小型成長株の本格的・長期的なリカバリー相場を期待しています。
(外部材料のこれ以上の悪化がなければ、という条件付ですが。)
→ 2020年9月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2023年10月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)
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