2024年2月2日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1262.09で終わりました。一週間前に比べ+5.81(+0.46%)の小幅続伸でした。主要インデックスのNYダウ(前週末比+1.43%)やSP500(前週末比+1.38%)に比べてやや弱い動きとなりました。
今週の米国株式市場は、FOMCと景気を注視する一週間でした。1月31日のFRB議長のコメントは、「3月利下げは基本シナリオではない」という事で、利下げ期待感は後退しました。しかし、2月2日に発表された雇用統計が予想より大幅に強かったこと、一部の大手ハイテク銘柄の決算が好調であったことから、株式市場は堅調に推移しました。
一方で、不動産市場の不調を背景とする地銀経営に不透明感が広がっており、小型株に対するリスクプレミアムは上がっています。また、利下げ期待後退による債券金利高も小型成長株に対してマイナスの影響を与えています。
<米国小型成長株の出遅れ、割安さ>
小型成長株の主力株に対する相対的な負けが始まって、3年近くになります。
特にこの2年間は、長期的なトレンドから見ても、大幅に割安な水準が続いています。
この1年半、主力インデックスは上昇し最高値更新になっていますが、、小型成長株はまだまだ上昇率が鈍く、歴史的高値からはかなり下の水準にあります。
(下記のラッセル2000グロース÷SP500も参照ください)
景気は底堅い、しかし、インフレは落ち着く、というのは小型成長株にとっては最高の投資環境にあります。外部材料が悪化しなければ、小型成長株の逆襲相場が来ると期待しています。
<外部材料>
米国国内の環境は良いのですが、「米国の外の材料」は、今週も悪化しています。
従来から、以下の4つの材料を懸念しています。
・中国経済
・欧州政治
・中東問題
・ウクライナ
<中国の不動産と経済>
中国株の下落が止まらないことを見てもわかりますが、中国不動産の問題は政府が覚悟を決めるまで解決できないと思っています。
以前(2023年9月15日付け)のコメントにも書きましが、依然として中国政府は覚悟を決めていません。→ アメリカ成長株市場の動き-2023-09-15
2023年9月15日のコメントと重複しますが、中国不動産に絡む負債は
a)出来上がった不動産を作るために使った負債
b)まだ、未完成の不動産に関連する負債
c)まだ、手も付けていない不動産に関する負債
の3つがあります。
日本のバブルの時にはa)がメインでしたが、中国の場合はb)とc)も膨大になります。日本の場合、「金融機関の融資額に対して担保となっている不動産の価値が下がったから、金融不安」となりました。中国場合にはb)もc)の不動産の価値はほぼゼロです。凄まじい不良債権にならざると得ません。
a)の場合、不動産の値段が下がっても、不動産会社(及びそこに融資している金融機関)への最終的な債務者(例:住宅ローンを払っている買い手)が、ローンを払い続けてさえすれば、いつかは問題が解決します。
しかしb)とc)の場合は、「追加で資金投下しないとマンションが完成しない」わけで、追加資金投下して、やっと問題a)に”改善”、という感じになります。
しかし、そもそも経営不振の不動産開発会社がさらに資金投下できるわけなく、経営不安のある不動産開発会社に金融機関が追加融資できるわけもありません。
b)とc)については国が覚悟を決めて、「全く価値のない不動産事業(完成していない不動産)を担保に公的機関が資金提供」するしか解決できません。時間が経てばたつほど、完成していない不動産の問題は悪化します。(建設途上の建物が雨ざらしになる。さらに建設開始もされていない不動産に、追加支払をする購入者は激減する)
ただし、「国が覚悟を決めて」もし「b)+c)→a)」に”改善”したとしても「人口減少+膨大な不動産在庫」という状況で、さらにb)とc)の完成物件が積み増されます。需給関係はさらに悪化し、a)の問題が一段と悪化することになります。
そうなると、担保割れ融資によって巻き込まれる金融機関の問題解決にはさらなる公的資金の投入が必要となります。
実際にはa)もb)もc)も対応する必要があり、いずれにせよ「担保価値が大幅に劣化している、あるいは担保価値がゼロの不動産を担保に、公的資金を提供する」ことになります。
日本のバブル崩壊の時もそうですが、バブル崩壊が明確となると利下げは全く効果が無くなります。また、通常の財政政策でも解決は難しいことも明白です。
繰り返しになりますが「中国政府が覚悟するまで、中国経済の不振が続く」と思っています。
中国政府の覚悟が、米国株式市場が順調な間に行われて欲しいと希望しています。
<中東>
アメリカがイランを後ろ盾にする「反イスラエル(反米)軍事集団」に報復爆撃を開始しました。一段と収集がつかない段階になりました。
イスラエル国民は、国際的な批判が高まってもハマスとの融和的な取引はできません。
「イスラエル国家あってのユダヤ人の安全」を信じているため、国際的な批判の影響力は限られます。西欧各国は、歴史的な理由で「テロへの反撃」をしているイスラエルを強く批判できません。
アメリカは国内のリベラル派の反発があっても、イスラエル支持をやめられません。そんな事をしたら、保守層から中間派まで一気に共和党に支持が流れてしまいます。(しかし、バイデン政権は、リベラル派も無視できず、アクセルとブレーキを両方踏む、中途半端な対応を続けざるを得なくなる)
一方、イスラエルがガザ攻撃を続けている間は、反イスラエル軍事集団はイスラエル(及び周辺国に展開する米軍)への攻撃を続けます。結局、イスラエルが「もう手を引こう」と思う時点まで、状況の悪化が継続することになります。
<欧州とウクライナ>
欧州はウクライナへの支援予算を可決しました。ウクライナの財政破綻リスクは軽減されました。しかし、ウクライナの状況は「お金」だけでは改善しません。
先週のこのコメントで書きましたが、「武器の調達と大幅動員」が必要です。特に「動員」はウクライナ自身以外に解決できず、本質的な問題です。
今週ついに、ゼレンスキー大統領がザルジニー総司令官を解任することが、西側メディアで報道されました。(これまでも噂はあった)
ザルジニーは「戦線の悪化をひっくり返すには、50万人の動員が必要」、ゼレンスキーは「50万人動員の必要性を明確にすれば、これまでの損失・失敗を認めることになり、政治的負担が大きい」という立場でした。
結局、サルジニーを解任することになり、50万人動員の話も消えていく可能性があります。
しかし、動員の問題が解決しない限り、戦線の状況は改善できません。
一方でウクライナの農業輸出支援継続に絡む問題が大きくなってきています。これまではポーランド、ハンガリーなどウクライナの隣国に限られていた農家の反発が、フランスの農家にも広がり、6月の欧州議会選挙への影響が懸念されます。
ウクライナの戦線の状況は、相変わらずロシア軍がジリジリと押しています。
<小型成長株相場とラッセル2000グロース VS SP500 >
2024年2月2日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1262.09/4958.61=25.45%
26週移動平均との乖離は-0.61%でした。
2020年12月中旬に長期的な持ち合いレンジを上に離れ43%まで急上昇しました。しかし、その後継続的に下落し、レンジの下を抜けました。
2022年7月から27%~28%程度で「底値での横這い」という感じでしたが、2023年9月にはいり、さらにこのレンジを下に突き抜け、ついに2023年11月上旬には25%割れまで下落しました。FRBの利下げ期待が出てきたことから下げ止まっていますが、まだまだ異常に低い水準にあります。
小型成長株の本格的・長期的なリカバリー相場を期待しています。(外部材料が落ち着いてくれることを、願いながら)
→ 2020年9月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2023年10月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)
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