アメリカ成長株：チャート・インダストリーズ(Chart Industries)の概要
チャート・インダストリーズ
Chart Industries Inc
ティッカーコード：GTLS
上場市場：NASDAQ
業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/GTLS
今回紹介するチャート・インダストリーズ社（以下チャート社）は、「冷やす装置・機械を作る会社」です。しかし、エアコンや冷蔵庫を作っているわけではありません。マイナス何十度という、「極低温」を作り出し、その低温を維持する装置や機械を作っています。
具体的には、「気体を冷やして液体にする」「液体になった気体を使って、他のものを冷やす」「液体の状態で気体を維持し、それを気体として使えるように保存しておく」といったことをする装置や機械を作っています。
一口に「気体を冷やして液体にする」といっても、これはかなりの低温を作り出す必要があります。例えば、気体の沸点（液体→気体になる温度）は、
・酸素：マイナス183度
・窒素：マイナス195度
・水素：マイナス252.9度
・アルゴン：マイナス185.8度
・液化天然ガス：マイナス161.5度
等となっています。沸点より低い温度まで下げると、気体は液体になります。
１．チャート社の技術の使われ方
例えば、次のような形で、チャート社の技術が使われています。
１）液化天然ガス（LNG）
天然ガスは地球環境にやさしい化石燃料ですが、問題は「体積」です。常温では気体なので、ガスパイプラインで運ぶ必要があります。しかし、米国や中東→日本といった場合には、液化して運ぶ必要があります。（液体になると体積は約600分の1になります。）膨大な量の気体を、液体にして運ぶことで、輸送効率が大幅に改善するわけです。プラントなどにおいて、天然ガスを液体にするときに、チャート社の技術が使われています。
２）液体酸素
病院などでは「酸素吸入」が必要です。液体の形で病院に運び、病院のタンクに貯蔵し、必要な時に気化させて使います。チャート社は、酸素を液体にし、液体となった酸素を運び、病院で酸素を液体で貯蔵する装置を提供しています。
３）液体窒素
様々な用途に使用されますが、最近で注目されているのは「バイオ・テクノロジー分野」です。例えば、卵子や精子の冷凍保存、ウィルス等の保全などに使われます。液体窒素を作ることより、「極低温を安定して維持する」ことが非常に重要になります。
例えば卵子バンク等の場合、自分の卵子を数十年維持したい、というニーズに答える必要があります。安定した極低温を提供する装置が必要となります。
また、今回のコロナのようなウィルスを研究のため飛行機で運ぶ場合はどうでしょうか？「極低温で、ウィルスが動けない状態にして運ぶ」必要があります。チャート社の低温凍結機・および低温輸送器は、IATA（国際航空運送協会）が使用を許可しています。
２．チャート社のこれからの成長
チャート社の年商は約11億ドル（約1200億円）です。売上の約半分が「液化天然ガス等のエネルギー関連のガス」に関する事業です。そして残りの事業が、「様々な気体を液化し、その維持・貯蔵に関する事業」となっています。それぞれに、これからも成長させる種を持っています。
１）液化水素
LNG部門は、地球温暖化の問題があり、今後とも需要は伸びると思われます。さらに将来的に期待されているのが水素エネルギーです。燃やすと水になる超クリーンエネルギーですが、沸点も非常に低く、さらに爆発するリスクもある、取り扱いが難しい気体でもあります。極低温で液化し、貯蔵する必要があります。
２）液体窒素滴下システム
エネルギー関連以外の気体の液化関連事業にも面白い用途が出てきています。「液体窒素滴下システム（Liquid Nitrogen Dosing Systems）です。
例えば、ソフトドリンクをペットボトルに充填するケースで使えます。ジュースを入れる前に、液体窒素を一滴ボトルに垂らします。すると常温では液化窒素は一気に気化します。
空のペットボトルは「気体の窒素が充満され、周りの空気（これは窒素と酸素）を押し出し」ます。酸素がペットボトルの内部に残ると、ジュースが酸化します＝痛みます。液体窒素を一滴たらせば、酸化リスクを大幅に軽減できます。
さらに、内側に大量の窒素があることで「ペットボトルがしゃんとする」ことが期待できます。薄い（＝ちょっとフニャフニャな）ペットボトルでも、「一瞬しゃんとする」ので、ジュースを充填できます。このことは、「薄い＝樹脂の少ないペットボトル」の使用につながります。「プラスチックごみを無くそう」という世間の流れに沿った技術になります。
会社ウェブサイト
https://www.chartindustries.com/
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