2024年7月5日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1330.69で終わりました。一週間前に比べ-6.38(-0.48%)の小反落でした。主要インデックスのNYダウ(前週末比+0.66%)とSP500は(前週末比+1.95%)は上昇しており、小型成長株は市場に冴えない一週間となりました。特に大型株であるSP500 とは2%を超える差がでています。
今週発表された経済指標は景気の過熱感を薄れさせる印象でした。債券市場は横這いで、小型成長株も横這いでした。しかし、大型株は利下げ期待を先取りし、非常に堅調な動きでした。
再び、同じ経済指標を、大型株と小型成長株で全く異なる形で消化する一週間でした。
結果的に小型成長株の対大型株の比率は、この20年間で最も割安な水準にまで下がっています。(下記のラッセル2000グロース÷SP500も参照ください)
<米国小型成長株の出遅れ、割安さ>
最近発表されている経済資料はまちまちです。しかし傾向としては
・景気は底堅い
・インフレの低下は予想よりスピードが遅い。しかしインフレが加速しているわけではない
・このため利下げのタイミングは先に延びてきた。しかし、利上げ局面は終わっている。
このような環境は、米国小型成長株にとっては、決して悪い環境ではありません。
利下げタイミングが先になったとしても、一時のような大幅なインフレが来ているわけではありません。景気が堅調だからインフレの低下が鈍っているだけです。全体としてはプラスの環境です。
また、金利もタイミングはともかく低下トレンドであり、さらに利上げ環境にはなりそうにありません。
外部材料が落ち着けば、小型成長株にとって良好な環境となります。時間をかけて堅調な市場が続くと思っています。
(下記のラッセル2000グロース÷SP500も参照ください)
<外部材料>
従来から、以下の4つの材料を懸念しています。
・中国経済
・欧州政治
・中東問題
・ウクライナ
今週も先週に引き続き、小型成長株に影響を与える動きはありませんでした。
欧州の選挙では、英国は予想通り労働党が圧勝しています。しかし、中身をみれば労働党の得票率は前回より微増しているだけで、保守分裂が本当の理由であり(保守党、自由民主党、リフォームUKに票が分かれる)、本当に左派が評価されているのかは、不明です。
フランスは本日決戦投票ですが、「選挙協力」が効果を上げて右派の伸長が抑えられるか、選挙協力しても右派が議席数を伸ばすのか注目されます。
私は、「右派」「左派」という政策はあまり関係なく、単純に「政権政党が国民から信頼を失っている」と思っています。一番の原因は「インフレ」であり、この視点でもウクライナ戦争の行方及び西欧諸国の関与の中身は、大きな影響を持ちます。
中東は相変わらず変化ありません。イスラエルとヒズボラの緊張が極端に高まらない限り、米国小型成長株への影響は限られます。
<ウクライナ>
このコメントでは従来より、「西側のメディアと、中立と思われる軍事ブロガー・ユーチューバーの間で、大きく意見が異なることがある」と指摘してきました。
一か月半前に、ハルキウ方面にロシアが攻撃したときに、(中立と思われる)軍事ブロガー等は「これはロシアの罠だ。ハルキウにウクライナ軍を集めて、他の戦線で侵攻する可能性がある」「速やかにハルキウ戦線でロシアを押し戻さないと、非常に危険なことになる」と指摘していました。
今週の動きはまさに、これら軍事ブロガーの見方通りの動きでした。ボルチャンスク(ハリキウ戦線の主要戦場)では、ウクライナがロシア数倍の兵力を送っているにも関わらず膠着しています。一方で、多くの戦線でロシア軍はかなり占領地域を増やしています。(特にアウディーイウカやニューヨーク等の戦線では、一日で数キロ~5キロという、極端な進軍をしています)
軍事ブロガーたちはいくつかの戦線で、ロシアによる「ウクライナ軍の包囲」の可能性を予想しており、状況が非常に懸念されます。
ロシアのウクライナ侵攻の結果は、(ガザとは異なり)世界の枠組み全体に大きな影響を与えます。
既に欧州経済→欧州政治には明確に影響を与えています。当然ながら米国小型成長株にも甚大な影響を与えます。引き続き非常に高い関心を持って見ています。
<小型成長株相場とラッセル2000グロース VS SP500 >
2024年7月5日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1330.69/5567.19=23.90%、
26週移動平均との乖離は-1.55%でした。
2020年12月中旬に長期的な持ち合いレンジを上に離れ43%まで急上昇しました。しかし、その後継続的に下落し、レンジの下を抜けました。その後も一貫して下落していましたが、「FRBの利上げ局面終了」により、2022年5月からやや持ち直しました。
しかし、昨年後半から、大型株は一部のIT銘柄に引っ張られる形で非常に堅調であるのに対して、小型成長株の上昇率は「利下げが明確にならない」ため上昇速度が「相対的に少ない」状況です。(実際には、小型成長株の決算も悪くないのですが、市場は正当に評価していません)
現在の小型成長株の相対的な水準は、この20年間で最低水準にまで下がっています。
主力インデックスに比べて、「歴史的な割安状態」にあると考えており、小型成長株の本格的・長期的なリカバリー相場を期待しています。
(外部材料の悪化が続いています。心配しています。)
→ 2020年9月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2023年10月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)
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