2024年6月14日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1314.76で終わりました。一週間前に比べ-3.70(-0.28%)の小幅続落でした。主要インデックスのNYダウ(前週末比-0.54%)と下落しましたが、SP500は(前週末比+1.58%)とかなり上昇しており、大型株に比べて小型成長株は非常に弱い一週間でした。
6月12日に発表されたCPIが予想を下回ったことから、株式市場は堅調となりました。しかし、6月14日に発表された消費者信頼感指数が弱かったことから、景気の鈍化を「利下げ期待感が上がる=良い材料」ととらえた大型株に対して、「景気は弱い=悪い材料」ととらえた小型成長株で、大きな差となりました。
しかしながた、景気は大型株・小型株の両方に等しく影響を与えるため、今回の「逆の動き」は不合理な動きであり、長期的には修正されると思います。
<米国小型成長株の出遅れ、割安さ>
最近発表されている経済資料はまちまちです。しかし傾向としては
・景気は底堅い
・インフレの低下は予想よりスピードが遅い。しかしインフレが加速しているわけではない
・このため利下げのタイミングは先に延びてきた。しかし、利上げ局面は終わっている。
このような環境は、米国小型成長株にとっては、決して悪い環境ではありません。
利下げタイミングが先になったとしても、一時のような大幅なインフレが来ているわけではありません。景気が堅調だからインフレの低下が鈍っているだけです。全体としてはプラスの環境です。
また、金利もタイミングはともかく低下トレンドであり、さらに利上げ環境にはなりそうにありません。
外部材料が落ち着けば、小型成長株にとって良好な環境となります。時間をかけて堅調な市場が続くと思っています。
(下記のラッセル2000グロース÷SP500も参照ください)
<外部材料>
従来から、以下の4つの材料を懸念しています。
・中国経済
・欧州政治
・中東問題
・ウクライナ
今週は大きな動きがありました。
欧州議会選挙は、与党が惨敗、右派(特に極右)が大幅に議席を伸ばしました。フランスは一気に総選挙の実施となり、欧州政治のリスクファクターとしての大きさが増してきました。
既に、ユーロ安、フランス国債安、フランス株価安等、金融市場にも影響が出てきています。米国小型成長株への影響はまだ顕著ではありませんが、注意が必要です。
中東は相変わらず、停戦についての外交努力がなされていますが、「ハマス壊滅を戦争目的とするイスラエルは、短期的な停戦以外は受け入れない」「ハマスは短期的な停戦では、人質を渡せない」という根本的な問題あります。
このため、国際的な批判をかわすために、イスラエルが「人道に配慮した小刻みな停戦」をしたとしても、本格的な停戦→休戦にはならないと思っています。
ウクライナの戦線は、3週間前から同じコメントです。
「ウクライナはハルキウ戦線で速やかにロシア軍を押し返さないと、戦線全体が非常に厳しい状況になる」可能性が高いです。(私が中立的であると思っているブロガーやユーチューバー達の意見)
既に3週間経ちました。
ハルキウ戦線では、ボルチャンスクで激戦となって、戦線が膠着しています。しかし、一方で、それ以外の戦線ではウクライナ軍が兵員をハルキウ戦線に移した悪影響がでており、ロシア軍の支配地域がジリジリと増加しています。現在の状況が続けば続くほど、戦況はロシアに有利になってしまいます。
<中国とロシア>
今回のG7では、中国の過剰生産能力に大きな批判が集まりました。
不動産バブル崩壊を背景とする経済不況を、(補助金付きの)設備投資で支えれば、一時的な有効需要は増えます。しかし、過剰生産能力につながるのは明白です。電気自動車をはじめ、あらゆる商材が過剰生産となっています。
そして「有り余る商材は国内では売り切れない」→「輸出で売りさばく」という行動にでているわけですが、G7等の国は「これは、我々の国内産業を破壊する行為」と非難し、関税の引き上げなどで「中国製品を締め出そう」という方向に動いています。
しかし、もし中国が作っている商材を自国では作れない国はどうでしょうか?外貨さえあれば、外貨に変えれる商材さえあれば、大歓迎のはずです。
この視点で見れば、ロシアはピッタリの貿易相手になります。ロシアの持っている・余っている商材は原油と天然ガスで、「すぐ外貨になる」かつ「中国も欲しい」商材です。
一方、ロシア国内は「戦時経済」で、「労働力・生産設備を武器生産に集中させたい」=「それ以外の商材は、安い海外から購入したい」となります。
中国にとって、ロシア経済の規模は小さいことから、中国の問題をロシアが解決することはできませんが、ロシアの問題を中国が解決することはできます。
現在のこの関係は、中国と北方騎馬民族との歴史的な関係と似ているかもしれません。
北方騎馬民族が軍事に特化して、南の中国は有り余る生産力で手なずける。
騎馬民族が中国に輸出できるものは、馬等非常に限られているが、中国には騎馬民族の欲しいものは何でもある。普通の貿易では、需給がアンバランスになるので、騎馬民族は略奪で帳尻を合わせる。中国は略奪されるのが嫌なので、朝貢貿易の形で「いっぱいお土産を持たせて」騎馬民族を手なずける。
匈奴、突厥、遼、金、モンゴル・・・・軍事力だけあるが、生産力は(中国に比べれば)全くなく、経済では中国に寄生する。そして、たまには征服王朝もつくる。何となく、現在のロシアと中国の関係に、似ていなくもない。そんな感じがします。
中国からすれば、ロシア市場の規模では全く経済を支えるには力不足です。しかし、米国との緊張状態にあり、「仲間」が必要です。そういう意味でも、ロシアにとって非常に有利な環境になっていると思います。
このままいくとロシアは中国の属国、という意見が多いのですが、歴史的には中国が属国にしてきたのは、「中国より軍事力の劣る近隣諸国」です。中国より軍事力の優れた国とは、「中国が多くのお土産を与えて手なずける」か「中国が征服王朝の下に入るか」の2つしかありません。ロシアはどう考えても、中国より軍事力があり、かつ「実戦経験が豊富な兵隊」を持っています。
<小型成長株相場とラッセル2000グロース VS SP500 >
2024年6月14日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1314.76/5431.60=24.21%、
26週移動平均との乖離は-1.53%でした。
2020年12月中旬に長期的な持ち合いレンジを上に離れ43%まで急上昇しました。しかし、その後継続的に下落し、レンジの下を抜けました。その後も一貫して下落していましたが、「FRBの利上げ局面終了」により、2022年5月からやや持ち直しました。
しかし、昨年後半から、大型株は一部のIT銘柄に引っ張られる形で非常に堅調であるのに対して、小型成長株の上昇率は「利下げが明確にならない」ため上昇速度が「相対的に少ない」状況です。(実際には、小型成長株の決算も悪くないのですが、市場は正当に評価していません)
結果的に、現在の状況は歴史的な割安状態を更新し続けています。
主力インデックスに比べて、「歴史的な割安状態」にあると考えており、小型成長株の本格的・長期的なリカバリー相場を期待しています。
(外部材料の悪化が続いています。心配しています。)
→ 2020年9月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2023年10月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)
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