2024年5月18日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1348.29で終わりました。一週間前に比べ+25.80(+1.95%)の続伸でした。主要インデックスのNYダウ(前週末比+1.24%)やSP500(前週末比+1.54%)に比べても、やや強めの上昇でした。
5月15日に発表された4月のCPIは3.4%上昇と予想(3.5%)を下回り、インフレ亢進への懸念が後退したことで安心感が広がりました。
<米国小型成長株の出遅れ、割安さ>
最近発表されている経済指標はまちまちです。しかし傾向としては
・景気は底堅い
・インフレの低下は予想よりスピードが遅い。しかしインフレが加速しているわけではない
・このため利下げのタイミングは先に延びてきた。しかし、利上げ局面は終わっている。
このような環境は、米国小型成長株にとっては、決して悪い環境ではありません。
利下げタイミングが先になったとしても、一時のような大幅なインフレが来ているわけではありません。景気が堅調だからインフレの低下が鈍っているだけです。全体としてはプラスの環境です。
また、金利もタイミングはともかく低下トレンドであり、さらに利上げ環境にはなりそうにありません。
外部材料が落ち着けば、特に原油価格が落ち着けば、小型成長株にとって良好な環境となります。時間をかけて堅調な市場が続くと思っています。
(下記のラッセル2000グロース÷SP500も参照ください)
<外部材料>
従来から、以下の4つの材料を懸念しています。
・中国経済
・欧州政治
・中東問題
・ウクライナ
今週は4つ全てが悪い方向に動きました。
・欧州政治
スロバキア首相が狙撃されました。6月の欧州議会選挙が近づくなかで、緊張感はさらに高まりそうです。
米国小型成長株にとってベストな状況は、極右がやや増加してもあまり伸長せず、かといってリベラルも伸び悩み、「対ウクライナに欧州が一段とのめりこむ事」が避けられることです。
極右が急伸した場合、ウクライナを見放すリスクが高まり、これは世界秩序の急変につながります。これは米国小型成長株にとってマイナスです。
一方で、リベラルが予想外に検討して、欧州のウクライナ支援が加速し、「兵器と金だけではウクライナを支えられない。兵士の派遣も必要」となると、一気に戦争拡大リスクが高まります。これも避けて欲しいシナリオです。
・中国経済
中国の地方政府が銀行からファイナンスを受けて、売れ残った不動産を買い取る案が出てきました。しかし、この方法では、問題の解決にはつながりそうにありません。
理由は、ファイナンスが銀行である事、不動産会社から大幅な値下げで買い取れない事、ある程度安く購入した場合は不動産市況を悪化させる事、の3つです。
2つの可能性があります。
① 買い入れ価格を大幅に下げる
この場合、在庫を抱えている不動産会社が、価格低下によって経営破たんします。この場合、これら不動産会社と契約している消費者が契約した未完成不動産は完成せず、政策目標は達成されません。一方で、安い不動産が市場に出回り、不動産市況は一段と悪化します。
② 買い入れ価格をあまり下げない
この場合、結局在庫が不動産会社から地方政府に移るだけです。地方政府の財政状況も、ファイナンスをした銀行の財務状況も悪化します。問題の場所が、不動産会社から地方政府と金融機関に移っただけです。
前々からこのコメントで書いていますが、「中国の中央政府が、本来価値のない不動産及び不動産を裏付けとする債権を、損を被る方法で買い取る方法」しか、問題解決にはなりません。中国政府の覚悟が必要ですが、今回の政策には「覚悟がまったく見られない」状況です。
・中東情勢
予想どおりイスラエルは妥協しません。ハマスせん滅が目的である以上、一時停戦はあっても、期限を切らない休戦はありえません。しかし、ハマスは一時停戦では解決になりません。一致点がありません。
・ウクライナ情勢
ウクライナが本当の問題=動員を本気で解決しない限り、状況の悪化は止まりません。
新法制の設定で、動員問題の解決のきっかけは作ったのですが、執行の段階でまた頓挫してきました。
欧州政治のところでも書きましたが、米国小型成長株にとって中途半端が最善のシナリオです。
「ロシアは勝てない、ウクライナも負けない、戦線があまり動かず、欧州も本格参戦しない。
ロシア・ウクライナともに厭戦気分が高まり、自然と休戦状態となる。」という状況です。
しかし、このままいけばロシアが押し切り、ロシアが勝つ、あるいは欧州が座視できず参戦する、の2択になる可能性が高まります。どちらもリスクが高まります。
米国内の材料は米国小型成長株にとって好環境であるだけに、外部環境が何とか崖を転がり落ちないように切に願っています。
<小型成長株相場とラッセル2000グロース VS SP500 >
2024年5月18日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1348.29/5303.27=25.80%、
26週移動平均との乖離は-0.45%でした。
2020年12月中旬に長期的な持ち合いレンジを上に離れ43%まで急上昇しました。しかし、その後継続的に下落し、レンジの下を抜けました。
2022年7月から27%~28%程度で「底値での横這い」という感じでしたが、2023年9月にはいり、さらにこのレンジを下に突き抜け、ついに2023年11月上旬には25%割れまで下落しました。FRBの利下げ期待が出てきたことから下げ止まっていますが、まだまだ異常に低い水準にあります。
小型成長株の本格的・長期的なリカバリー相場を期待しています。
(外部材料の悪化が続いています。心配しています。)
→ 2020年9月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2023年10月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)
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