2024年5月10日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1322.49で終わりました。一週間前に比べ+15.74(+1.20%)の続伸でした。主要インデックスのNYダウ(前週末比+2.16%)やSP500(前週末比+1.85%)に比べても、やや低めの上昇でした。
5月3日に発表された非農業部門雇用者数の伸びが予想より鈍化したため、FRBの利下げ期待が再び高まり、5月6日・7日と株式市場は堅調に推移しました。週の後半は、急上昇の反動もあり、ほぼ同じレンジでの持ち合い相場となりました。
<米国小型成長株の出遅れ、割安さ>
最近発表されている済資料はまちまちです。しかし傾向としては
・景気は底堅い
・インフレの低下は予想よりスピードが遅い。しかしインフレが加速しているわけではない
・このため利下げのタイミングは先に延びてきた。しかし、利上げ局面は終わっている。
このような環境は、米国小型成長株にとっては、決して悪い環境ではありません。
利下げタイミングが先になったとしても、一時のような大幅なインフレが来ているわけではありません。景気が堅調だからインフレの低下が鈍っているだけです。全体としてはプラスの環境です。
また、金利もタイミングはともかく低下トレンドであり、さらに利上げ環境にはなりそうにありません。
外部材料がこれ以上あったせず、原油価格が落ち着けば、小型成長株にとって良好な環境となります。時間をかけて堅調な市場が続くと思っています。
(下記のラッセル2000グロース÷SP500も参照ください)
<外部材料>
従来から、以下の4つの材料を懸念しています。
・中国経済
・欧州政治
・中東問題
・ウクライナ
先週のこのコメントで書きましたが、次の波乱のエネルギーが溜まり始めました。
中東では、休戦提案をハマスは受け入れました。国連総会で、パレスチナの国連加盟を支持する決議案も採択されました。しかし、イスラエルはラファ攻撃拡大の構えです。
従来からこのコメントで書いていますが、ハマスの壊滅を目的としているイスラエルにとって、中途半端な休戦を受け入れることは、ありえません。少なくとも、ハマスの国外追放等の条件がなければ、何のための(ここまでの犠牲を出した)今回のガザ侵攻であったのか?ということになります。しかし、イスラエルの独走が強まるほど、この問題は米国株式市場にとって「レベルの違うリスクを生む可能性」を高めます。
ウクライナについては、ロシアの攻勢がまったく止まりません。ウクライナにとっては、米国からの武器が前線に届き、新しい動員法が効果を出すまでは我慢の時期ですが、あまりにロシアの攻勢が強く、ジリジリと後退が続いています。さらにここにきて、ハルキウ方面の新たな北部戦線が開かれたことから、一段と厳しさが増しています。ウクライナ第二の都市であるハルキウが危険にさらされる北部戦線には、ウクライナは予備戦力を送るはずです。
しかひ、もし予備部隊を送れなかった場合、もう予備の部隊がいないのでは?となります。この場合、ロシアが一気に勝負をつけにくるリスクがあります。
最近のマクロン大統領や、イギリスのキャメロン外相の発言をみると、「このままでは本当にウクライナはやばい」という見方が、西側首脳に広がっていると予想されます。
ロシア有利の攻勢が継続し、それを看過できない西側諸国がウクライナに「兵士派遣を伴う関与」をした場合、ウクライナ侵攻は米国株式市場にとって「レベルの違うリスクファクター」になります。
このような状況で、来月、欧州議会選挙が来ます。
この3週間ほど、外部材料は米国株式市場、小型成長株に悪影響を与えませんでした。しかし、今週は大きくリスクが高まる方に状況は動いています再び注意深く見る必要がでてきました。
<小型成長株相場とラッセル2000グロース VS SP500 >
2024年5月10日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1322.49/5222.68=25.32%、
26週移動平均との乖離は-0.55%でした。
2020年12月中旬に長期的な持ち合いレンジを上に離れ43%まで急上昇しました。しかし、その後継続的に下落し、レンジの下を抜けました。
2022年7月から27%~28%程度で「底値での横這い」という感じでしたが、2023年9月にはいり、さらにこのレンジを下に突き抜け、ついに2023年11月上旬には25%割れまで下落しました。FRBの利下げ期待が出てきたことから下げ止まっていますが、まだまだ異常に低い水準にあります。
小型成長株の本格的・長期的なリカバリー相場を期待しています。
(しかし、外部材料が再び悪化を始めました。非常に心配しています。)
→ 2020年9月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2023年10月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)
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