2023年9月15日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1180.95で終わりました。一週間前に比べ-9.61(-0.81%)と続落しました。主要インデックスのNYダウ(前週末比+0.12%)やSP500(前週末比-0.16%)に比べてやや弱い動きが継続しています。
今週はアーム株の上場により、大型株はかなり上昇しました。金曜日にかけ、原油の値上がりや、大手自動車会社のスト等の「インフレを印象させる」材料がでたとから、市場全体は下落しました。
大型株は週の半ばまで上昇した分があり、小幅上昇・横這い、小型成長株は週の半ばまで横這いだったので、一週間を通してそれなりのマイナス、という感じでした。
2023年も秋となり、来年の大統領選挙の影響が少しずつ出始めています。中絶や国境など、様々な争点がありますが、最大の争点=経済の争点はインフレです。
コロナ後のインフレをどのように吸収、あるいは収めていくのか?民主党と共和党それぞれの主張がぶつかります。
例えば、インフレの大きな流れを作る、「ガソリン価格」=「原油価格」についても、対立します。そもそも米国内のエネルギーの供給力を増やすのか?
それとも、(化石エネルギー増産をおさえて)グリーンエネルギーを推し進め(短期的なインフレを享受して)正面突破するのか?
ロシアと融和的になって、(サウジとも人権問題をさらに目を瞑って)、オペックが増産するように導くのか?
それとも、一段とロシアとの対立を先鋭化させ、原油価格が上昇することで、逆にグリーンエネルギーの相対的優位性を高めるのか?そしてエネルギー価格を抑えるのは諦めて、鎮痛剤のバラマキ補助金で解決するのか?
<外部材料と中国経済>
米国小型成長株に影響を及ぼす外部材料は
・中国経済
・欧州の政治
・ウクライナ情勢
です。
ウクライナは、先週のコメントで指摘したように「時間とウクライナの損害」が焦点です。ゼレンスキー大統領の訪米で、さらなる兵器提供が予想され、一段とエスカレートする方向になるでしょうが、本質的にはウクライナの「時間と損害」がさらに大きな流れ決めます。
中国経済については、相変わらず不動産不況のニュースがでていますが、これは予想されたことです。問題は、「政治」です。今週は、国防相が消息不明というニュースがでました。中国政治が非常に不透明となっています
中国の不動産業界の問題は、「抱えている負債が資産をはるかに上回る」ことです。負債は
a)出来上がった不動産を作るために使った負債
b)まだ、未完成の不動産に関連する負債
c)まだ、手も付けていない不動産に関する負債
の3つがあります。
a)については、「値下げして売却」することで、実現損はでますが、負債も減ります。
しかし、b)とc)については、さらに資金調達(=借金か増資)しないと、負債を減らせるステージ=売却、に進めません。
負債を減らせるために、一時的にさらに大きな負債を負う必用があるわけです。
当然ながら、b)とc)は、「負債の返済をしようにも、その担保となるものが(まったくあるいはほとんど)ない」ので、不動産会社の債権者にとって、通常の経済原則に則った解決方法はありません。
そうなると、経済法則の外にいる主体=政府が、全く資産の裏付けのない負債を買い取るしか、解決方法はありません。これには「強烈な覚悟」が必要です。
もちろん、もう一度流動性を供給して、さらに大きなバブルを作る方法がありますが、これは「既に人口が減少し、住み切れないほどの不動産在庫問題がある」という状況を、一段と悪化させます。
結局、中国政府の「覚悟」次第となります。
しかし、この状況におよんでも、中国政府は「政権内の暗闘」とも言える状況にあります。
なかなか「覚悟の発表」のタイミングが見えてきません。
<小型成長株相場とラッセル2000グロース VS SP500 >
2023年9月15日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1180.95/4450.32=26.54%
26週移動平均との乖離は-1.01%でした。
2020年12月中旬に長期的な持ち合いレンジを上に離れ43%まで急上昇しました。しかし、その後継続的に下落し、レンジの下を抜けました。
2022年7月から27%~28%程度で「底値での横這い」という感じです。長期的な視点で見れば、小型成長株は歴史的な買い場となっています。
上記の分析は単純にインデックスの水準だけを比較したものですが、ファンダメンタルデータ(利益水準およびPER)で比較しても、現在の小型成長株はかなり割安です。
「小型成長株は割安」といって1年以上なります。そろそろ小型成長株相場が来て欲しいと思っています。
→ 2020年4月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2023年7月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)
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