2022年9月23日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1043.12で終わりました。一週間前に比べ79.32ポイントの大幅続落(-7.07%)でした。主要インデックスのNYダウ(前週末比-4.00%)やSP500(前週末比-4.65%)の下落率も大幅に上回り、非常に弱い相場となりました。
FRBは予想通り0.75%の利上げでした。利上げ後のパウエル理事長のコメントは、「インフレが完全に終わるまで、リセッションがあっても金利を上げる」という姿勢を維持しており、債券市場は急落(金利は急騰)、株式、商品市況も全面安となりました。
<アメリカの景気と金融政策>
現在金融市場には以下の3つのシナリオがあります。
1)インフレ低下には急速な金利引き上げが必要。現在の景気はまだ悪くないが、結果的に景気が悪くなる。
2)インフレ低下には急速な金利引き上げが必要。しかし、既に景気は悪化しており、早晩FRBは軌道修正が必要となる。
3)景気はそこそこ維持する、しかし、賃金上昇圧力の低下と国際商品市況の下落でインフレが下がっていく?このため、急速な金利引き上げの必要性が薄れる
今年の6月~7月の株式市場の安値は1)を想定していました。その後、3)の可能性がでてきたため、株式市場は反発しました。しかし、ジャクソンホールのパウエル議長のタカ派的コメントで、やはり1)だ!、さらにCPIが下げ止まったため、絶対1)だ!となっています。
6月と7月の安値を100として、株式(SP500、ナスダック、ラッセル2000グロース)、債券(債券先物価格)、商品(原油先物価格)、仮想通貨(ビットコイン)を週末の値段で比較しました。株式と債券は6月13日が最安値、原油とビットコインは7月4日が最安値となっています。
株式とビットコインは、6月と7月の安値とほぼ同じ水準にまで下落しています。しかし、債券と原油は、安値を大きく更新していることがわかります。これは、単に時間差があるだけなのか?(いずれ株式も大きく安値を割ってくる)それとも、株式市場・仮想通貨市場と債券・商品市況が異なるストーリーを織り込んでいるのか?注目されるところです。
例えば株式・仮想通貨は2)あるいは3)を、債券・商品は1)を織り込んでいる可能性があります。
景気については、センチメントは非常に悪いのですが、「実際の景気指標」はまだ底堅い数字が多くなっています。特に、ソフト消費(旅行等)は非常に堅調であるとの報告が相次いでいます。
もし債券・商品市況が間違っている場合、株式・仮想通貨はかなり強烈な反発となります。
逆に、株式・仮想通貨が間違っている場合、しばらく株式・債券市場の下落が継続することになります。
<仮想通貨と金(ゴールド)について>
最近のビットコインは、株式に比べて「底堅い」感じがします。
昨年の高値から、今年の安値までの下落率は株価をはるかに超える凄まじさでしたが、その下落に比較すると、この3ヶ月の動きは安定しています。
これから株が底割れしたら一緒に底割れするのか?
それとも、本来のあるべき「代替資産」としての性格がでてきたのか?
株式が下落しているのは、分子に相当する企業利益がリセッションで減少すると懸念され、分母に相当する金利が上昇したためです。しかし、仮想通貨の場合、そもそも分子に相当する部分がありません。
似た性格を持つ資産は、金=ゴールド、です。
金も仮想通貨も、保有すること自体で何かが得られるわけではありません。現在保有していない人が、何等かの価値を見出すのでは?という期待感に支えられた価格です。
金の動きを見ると、インフレ懸念は現物資産である金には「本質的には」プラスのはずです。
しかし、ドル建ての金価格はドル高の影響もあり、あるいは原油等の他の商品価格の下落もあり、6月~7月の安値を下回っています。(金の価格は、SPDR Gold Shares を利用)
金と仮想通貨を比較すると、価格の動きはやや異なる動きをしています。
金は7月の安値をかなり下回っていますが、ビットコインは安値近辺でとどまっています。
こちらも単なる時間差なのか?=今後ビットコインも下落を継続する。
それとも、何か違うストーリーが裏にあるのか?=他の資産の動きから分かれて、再びビットコインは「唯我独尊」となる。
6月~7月の安値との相対的な場所で、株式、貴金属、原油、債券、仮想通貨・・・が違う場所、違う動きを示しています。最後は全部売り、全部安値更新、となるのか?それとも、2022年後半~2023年にかけて、新しい相場のトレンドを示唆しているのか?注目しています。
<ウクライナ情勢>
ウクライナの反撃により、ロシアはかなり追い詰められました。
中国とインドの中立姿勢維持によって制裁をしのいだロシア経済も、原油価格の下落でかなり厳しい状況になってきました。
ここにきてロシアは予備役の招集と占領地域での住民投票、さらに核攻撃の脅しなど、「やけくそ」とも思える態度を示しています。
インドと中国は「中立的立場を強調」し、全面的なサポートも期待できず、ロシアはこのまま崩壊していくのか?それとも、天候(これから寒い冬がくる)や外部材料(欧州のウクライナ疲れ)で、再び巻き返すことができるのか?
本日のイタリア選挙の結果は明日には大勢がわかると思います。中欧と西欧とは違うところを見せらせるのか?
<小型成長株相場とラッセル2000グロース VS SP500 >
2022年9月23日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1043.12/3693.23=28.24%
26週移動平均との乖離は+0.13%でした。
ラッセル2000グロース÷SP500は、2013年から長期的に32%~38%のレンジで推移してきました。2020年12月中旬にこのレンジを一次上に離れ43%まで急上昇しました。しかし、その後継続的に下落し、レンジの下を抜けました。2022年7月から反発トレンドになっていますが、現在でも歴史的な安値水準にあります。
まだまだ、小型成長株は買い、と思っています。
→ 2020年1月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2022年8月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)
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