2022年3月4日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1244.22で終わりました。一週間前に比べ46.28ポイントの下落(-3.59%)でした。主要インデックスのNYダウ(前週末比-1.30%)やSP500(前週末比-1.27%)に比べても、大きな下落でした。この1ヶ月小型成長株の買戻しがあったことから、その反動安という感じです。
ウクライナ侵攻については、週の中盤まではある程度の問題は織り込み済という感じでしたが、ロシアが原発攻撃をしたことから新たなリスクが現出したため、木曜日、金曜日とかなり大きな下落となりました。
<ウクライナ情勢について>
先週のこのコメントに書いたように、今回のウクライナ侵略が米国小型成長株市場に影響を与えるか否かは、
・米国とNATOが軍事介入するか
・ロシアの銀行をSWIFTから排除するか
という2点次第です。
先週のコメントを書いた時点では、両方ともNOでした。しかし、その後ゼレンスキー大統領からの強烈な要請により、ロシアの多くの銀行がSWIFTから排除されました。しかし、天然ガス関連の銀行は排除されており、「中途半端なSWIFTからの排除」と言えます。
ゼレンスキー大統領はまだファイティングポーズを維持しており、キエフ周辺では戦線が停滞しています。NATOからの武器供与も一段と増加しています。一方、プーチン大統領もウクライナの非軍事化・中立化という戦争目的をおろしておらず、ロシア軍は市民を巻き込む爆撃や砲撃にウェイトを移しています。非常に残念ですが、このままではウクライナ国民にとっては最悪のシナリオである「戦争の泥沼化」が進行しそうです。
では、今回の戦争の我々(西側諸国に住む市民)にとってシナリオはどうでしょうか?
良いシナリオはいろいろ考えられます。例えば、
「厳しい経済政策によってプーチン政権が弱体し、ウクライナを結局コントロールできないまま撤退する。
中国は台湾侵攻のリスクの大きさを理解し、民主主義勢力はより安定した国際秩序を獲得する。またロシアを助けたことで、中国に対する世界的な信頼化はさらに悪化し、中国の影響力は低下する。
ロシアの撤退することで原油・天然ガス価格は下落する。脱炭素も従来のスケジュールに沿って進展する。
欧州のNATO加盟国は国防費を積み増しし、米軍基地の拡充や設置を希望する。結果的に米国の覇権はさらに安定する。」
しかし、一方で悪いシナリオも存在します。例えば
「ロシア経済は中国とインドとの取引継続で、厳しいながらも持ち堪える。欧州も日本も米国も、ロシアの原油と天然ガスの輸入をゼロに出来ず、SWIFT排除は中途半端な状況が続く。ウクライナでの戦争はゲリラ戦となり、ウクライナの国土の荒廃が一段と進む。
ロシアの多くの銀行をSWIFTから排除した事で、中国の国際決済システムであるCIPSの利用拡大に弾みがつく。ロシアのみならず西側に経済制裁されそうな独裁国家・強権国家・軍事政権が、ロシアの窮状を見て、保険としてのCIPS利用が広がる。
原油価格は高止まりし、中東産油国の発言力も増す。サウジの皇太子など、独裁的指導者が、国際政治への影響力を回復する。
欧米では、脱炭素と国家安全保障とのトレードオフ関係に焦点が当たり、脱炭素は後退する。
米国及び米ドルの覇権が揺らぎ、国際秩序は大きく不安定化する」
実際にどのような事が起こるか全くわかりませんが、大きなトレンドの変革点になる事は間違いありません。
<株式市場の動き>
ロシアが軍事進行を開始して2週間が経過しました。2月25日を起点として、3月4日までの株式市場の動きを、米国、日本、ドイツ、英国の株価動向をMSCI(ドル建て)でみると下図のようになります。
米国>日本>欧州となっています。戦地に近く、ロシアへのエネルギー依存の大きい欧州、特にドイルは、非常に厳しい状況となっています。一方米国は、比較的傷が浅いようです。NATOが直接軍事介入をしない限り、ウクライナ侵攻が続く間はこの傾向が継続すると思っています。
<小型成長株投資のボトムフィッシング>
数週間前のコメントで書きましたが、「現在、米国小型成長株は相対的にも絶対的にも安い。投資の方法としては、グレートスモールを毎日少しずつ購入し、日中の振れはシルバーゲートキャピタルでトレーディングする」という投資方法を紹介しました。
シルバーゲートキャピタルは、今週も期待通り非常に大きなボラティリティがあり、トレーディングに最適な銘柄でした。長期的には「銀行業という安定した基盤を持つ仮想通貨関連銘柄」という安心感もあります。引き続きこの投資(グレートスモールの時間分散投資+シルバーゲートのトレーディング)を続けたいと思います。
<小型成長株相場とラッセル2000グロース VS SP500 >
2022年3月4日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1244.22/4328.87=28.74%
26週移動平均との乖離は-3.14%でした。
ラッセル2000グロース÷SP500は、2013年から長期的に32%~38%のレンジで推移してきました。2020年12月中旬にこのレンジを一次上に離れ43%まで急上昇しましたが、再びこの歴史的なレンジに戻っていました。しかし、ここにきてこのレンジの下を抜けました。
現在の水準は、2020年のコロナの最悪期をも超える、歴史的な割安水準になっています。相対的には歴史的な買い場となっており、非常に魅力的な投資機会を提供していると思っています。
→ 2019年10月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2022年1月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)
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