アメリカ成長株:シュレーディンガー(Schrodinger)の概要
シュレーディンガー
Schrodinger Inc
ティッカーコード:SDGR
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/SDGR
シュレーディンガー社は、創薬と材料科学のためのコンピューターシミュレーション・ソフトウェアを開発しています。ソフトウェアの提供だけでなく自社による治療薬の開発も手掛けていて、いくつかの新薬候補が治験に向けて準備中です。
注目したいのは新型コロナウイルスのための抗ウイルス薬の開発で、Googleクラウドを提供するGoogle社とのコラボレーション事業として助成金を受けて行われています。
ワクチンは感染前に打つ必要がありますが、抗ウイルス薬は感染後・発症後でも対処できる上に、同社が開発中のものは低分子であるため生産・保存・輸送・価格の面でもワクチンより有利です。また直近の報告では、抗体による攻撃を回避する変異型のコロナが登場してきていて、これに対抗するためにもウイルスを直接撃退できる抗ウイルス薬の開発が急がれます。
先日、イーライリリー社が開発した抗ウイルス薬の緊急使用許可がFDA(アメリカ食品医薬品局)から下りましたが、これは大量生産が難しくて不安定な“タンパク質”が成分の抗体治療薬であり、世界的な流行を止める決定打にはなり得ません。先進国だけに高価で扱いが難しい“ワクチン”を提供するだけでなく、途上国にも提供できる安価で手軽な“治療薬”が求められているのです。
創薬と言えば天然の物質、例えば薬草に含まれる有効成分を分離したり、土壌に含まれる微生物が作る化合物から役に立つものを探すというのが従来の方法でしたが、高性能のコンピューターが登場したことで創薬のスタイルが大きく変わりました。
なぜ薬が効くのかと言うと、病気を引き起こしている物質、たいていはタンパク質なのですが、これに薬の分子が結合することでその働きを抑えてしまうためです。うまく結合するためには、原因の物質の表面にある“くぼみ”に薬の分子がすっぽりと収まる必要があります。
従来は、適合する形の化合物の発見は偶然に頼っていましたが、今は原因物質の構造を調べて弱点となるくぼみを探し、ここにぴったりと結合できそうな形をした分子をコンピューターシミュレーションによって探し出せるようになりました。
コンピューターシミュレーションの登場で大きく変わったのは、分子のデザインだけではありません。新薬候補となる分子が「水に溶けるか」「体内にどれくらいの間残るか」「標的意外に結合するか」「副作用はあるか」などの性質を実際に合成して試験する前にシミュレーションによって推測できるようになったのです。
但し、コンピューターで一瞬にして計算できると聞くと、あっという間に夢の治療薬が誕生するようなイメージを抱きがちですが、過度な期待は禁物です。コンピューターシミュレーションによる効果は、すでに見通しが立っている新規薬の開発期間が数年ほど短縮され、開発費用が数百万ドル節約できる程度であることを同社の科学担当の開発者がブログで打ち明けています。
開発機関に関しては少し期待はずれな気もしますが、開発費用が削減されるのは大きなことです。Googleクラウドのスーパーコンピューター並の演算能力をしても一瞬にして全ての可能性の中から最適なものを選び出すのは困難であり、それ程分子構造の可能性の数は天文学的で無限に等しいのです。
しかし、量子コンピューターなどの画期的な演算装置が今後登場し、演算スピードが飛躍的に向上すれば一瞬で有効な治療薬が設計できるような時代が来るかもしれません。
会社ウェブサイト
www.schrodinger.com
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