アメリカ成長株:サイトキネティクス(Cytokinetics)のアップデート２
サイトキネティクス
Cytokinetics Inc
ティッカーコード:CYTK
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/CYTK
サイトキネティクス社については過去2回紹介しました。
サイトキネティクス社の概要
サイトキネティクス社のアップデート：心不全治療薬の開発について
今回はALS薬の開発について紹介します。
筋萎縮性側索硬化症（amyotrophic lateral sclerosis：ALS）は、徐々に神経が侵されることで筋肉に力が入らなくなりやせ細っていく難病です。筋力が失われると運動ができなくなるだけでなく、声を出せない、物が飲み込めない、呼吸ができないなどの症状が進み、発症後２～５年で死に至ると言われています。
心臓や胃腸などにある自律神経でコントロールされる筋肉に問題は生じませんが、意識して動かす筋肉に影響が出ます。
神経が侵される原因については遺伝子異常、酸化ストレス、グルタミン酸過剰などが言われていますが、未だにはっきりとは解明されていません。病気の根本的な治療法の確立は原因の解明が出発点となることもあり、今のところALSの特効薬というものは存在しません。
現在使われている治療薬は、筋肉ではなく神経系をターゲットとしていて病気の進行を遅らせる作用のものがほとんどです。今回紹介するサイトキネティクス社は、筋肉の働きを改善する治療薬の開発を主軸としており、ALSにもこの方向からのアプローチを試みています。
筋肉は神経からの信号を受けて放出されるカルシウムイオンによってコントロールされています。
カルシウムイオンは筋肉の表面にある“トロポニン”というタンパク質が感知して筋肉を収縮・弛緩させます。
トロポニンには、カルシウムイオンと結合する部位があり、カルシウムイオンの濃度が高いと結合して収縮させ、低いと放出して弛緩させます。
同社が開発したALS治療薬である“reldesemtiv”は、トロポニンがカルシウムイオンを放出する速度を下げる働きがあり、収縮状態を維持することで筋肉の収縮性を高めます。これにより、神経から来る信号が弱くても筋肉を動かせるようになるというのが狙いです。
従来のALS治療薬は神経系に作用するものが多く、病気の進行を遅らせるのが限界でしたが、reldesemtivは筋肉の動きを直接改善させるため、患者の受ける恩恵は比較にならないほど大きくなります。
現在、有効性と安全性を評価するための第3相の臨床試験が進んでいて、実用化に向けて期待が高まっています。
ALSにはパプアニューギニア、グアム島、紀伊半島南部で多発するという謎の地域性が認められていて、遺伝、飲水のミネラル、植物毒、ウイルスなど様々な原因説が言われていますが決定的なものはありません。
ALSは長期にわたって患者を苦しめた挙げ句死に至らしめる深刻な病であり、原因が早く特定され回避する方法や根本的な治療薬の開発につながることを切に願います。
会社ウェブサイト
www.cytokinetics.com
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