アメリカ成長株: センテッサ(Centessa)の概要-4
センテッサ・ファーマシューティカルズ
Centessa Pharmaceuticals PLC
ティッカーコード:CNTA
業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/CNTA
センテッサ・ファーマシューティカルズ社はガン、血友病、自己免疫疾患、高血圧、神経障害、遺伝病などの様々な疾患のための治療薬を開発する10の製薬企業を子会社として抱えています。
今回はこれらの子会社のうちのZ factor社が開発しているアルファ-1-アンチトリプシン欠乏症(AATD)の治療薬候補である“ZF874”をピックアップして紹介します。
血液中にはプロテアーゼというタンパク質を分解する酵素が含まれていて血液の凝固・血栓の溶解、免疫で重要な役割を果たしています。
プロテアーゼは鋭利な刃物のようなもので、そのままでは無秩序にタンパク質を切断してしまうためプロテアーゼインヒビターと呼ばれる“鞘(さや)”のようなタンパク質で保護されています。
アルファ-1-アンチトリプシン(AAT)は“アンチ”という言葉が示す通りトリプシンというタンパク質分解酵素が働かないように保護するプロテアーゼインヒビターの一つです。AATは肝臓で作られて血中に運ばれますが、患者さんの体内では何らかの原因でこれが血中に運ばれずに肝臓に蓄積してしまいます。
通常タンパク質は遺伝子の情報を元にアミノ酸を連結して一本の鎖として作られた後に正しく折りたたまれて初めて機能を発揮できるようになります。
ところが患者さんのAATには遺伝子の変異に起因する異常があり、正常に折りたたまれず肝臓から血中に輸送されずに残ってしまうことが分かってきました。
異常なAATの肝臓への蓄積は肝硬変を引き起こすと同時にタンパク質分解酵素を保護するはずのAATの血中での不足を招きます。
AATが不足した血中でフリーとなったタンパク質分解酵素は無秩序にタンパク質を分解するため肺組織を破壊して慢性閉塞性肺疾患(COPD)を引き起こします。
COPDは肺に炎症が起こり肺機能が低下するもので、軽く体を動かすだけで息切れを感じたり咳や痰が慢性的に出続ける疾患です。
タンパク質の折りたたみがうまくいかないだけで肝臓と肺の2つの重要な臓器に不具合が生じてしまうのです。同社はこの点に注目し、タンパク質の折りたたみを助けることで異常型のAATを正常な形に折りたたむ作用を持つ治療薬の開発を進めました。この方法にはAATの肝臓への蓄積を防ぐと同時に血中のAATを増やす一石二鳥の効果があります。
現在主に使われているAATD治療薬はAATを補充するもので、血中のAATを増やすことはできても肝臓への蓄積は防げません。また、肝臓でのAATの生産を止める治療薬も開発されていますが、逆にAATを補充できないため肺疾患には効果がありません。
同社が開発したZF874はAATの折りたたみを助ける小分子の治療薬で、候補となる膨大な数の分子の中からコンピュータによって選び出されたものです。
ZF874はAATを変化させずに折りたたみだけを助ける理想的な性質を持つ小分子で、構造が単純で安定なので大量生産できる上に錠剤の形で経口投与できます。
AATが作られるタイミングや量は体内でコントロールされますが、ZF874のように折りたたみを補助するだけの治療薬はそれに影響を与えないため自然な状態に戻すことができます。
ZF874をAATDの患者さんに投与した先行試験では、経口投与によって肝臓に蓄積するAATを完全に排除し、血中のAATレベルを大幅に増加させることに成功しました。
現在ZF874の安全性を確認するフェーズ1の臨床試験が進行中で、フェーズ2以降の本格的な実証実験はこれからですが、その他の対症療法的な治療薬と比べて有利な点を多く持つ画期的な治療薬の誕生に期待が高まっています。
会社ウェブサイト
www.centessa.com
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