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アメリカ(米国)成長株: アローヘッド・ファーマシューティカルズ(Arrowhead Pharmaceuticals):“RNA干渉”という現象を利用した治療薬を開発

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アメリカ成長株: アローヘッド・ファーマシューティカルズ(Arrowhead Pharmaceuticals)の概要

アローヘッド・ファーマシューティカルズ(アローヘッド・リサーチ)
Arrowhead Pharmaceuticals, Inc.(Arrowhead Research Corp)
ティッカーコード:ARWR
上場市場:NASDAQ National Market System

業績についてのリンク
https://finance.yahoo.co.jp/quote/ARWR/annual

アローヘッド・ファーマシューティカルズ社(旧アローヘッド・リサーチ)は、“RNA干渉”という現象を利用した治療薬を開発しています。

RNAという単語は、新型コロナウイルスのメッセンジャーRNAワクチンの登場で一躍有名となりましたが、RNAはワクチンに限らず様々な利用法が広がっており、その一つがRNA干渉薬です。
体内では、DNAに書かれているタンパク質の設計図がRNAにコピーされ、それを元に指示どおりのアミノ酸配列を持ったタンパク質が作られます。

ここに、その設計図と同じ情報を持つRNAを外部から入れると、驚くことに標的のタンパク質が作られるのが妨害されてしまいます。設計図が増えるのだからタンパク質が、より多く作られてもよさそうですが、逆にストップしてしまうのです。
これは外来のRNAに対する人体の警戒・防御システムの一つで、RNA干渉と呼ばれています。
この現象を逆手に取り、病気の原因となるタンパク質のRNAと同じ配列のRNA分子を治療薬として利用するのがRNA干渉薬です。

あるタンパク質の働きを抑えたり除去したりする方法としては、主に抗体薬や阻害薬が挙げられますが、いずれも標的のタンパク質が作られた後に作用するため効果が不十分な場合もあります。
それに対して、RNA干渉薬は設計図の段階で止めてしまうため完全に除去することも可能です。

抗体薬や阻害剤と比べると特異性が高く、標的のタンパク質だけを除去できるので、その他のタンパク質への影響を抑え、副作用を最小限にできるというメリットがあります。
抗体薬や阻害薬のようにタンパク質を標的とすると、似たような構造の部分に効いてしまうことがありますが、RNA干渉薬ではそういうことは起きません。

ただし良いことばかりでもなく、メッセンジャーRNAワクチンがそうであったように、分子として不安定であるため、保存、輸送、投薬の問題があります。
保存・輸送時は低温を保ち、注射で投与し、体内での分解をかわしながら効率的に患部に配送される必要があります。

最近では、RNA干渉薬のようなRNAベースの治療薬の有用性が認識され、飲み薬や塗り薬などの様々な投薬方法が検討されています。
同社は遺伝性疾患のRNA干渉薬を中心に数多くの開発を進めていて、現在の開発薬リストには15種類が載っています。

この中では以下の3つが臨床試験の最終段階にあります。
・ファジルシラン(Fazirsiran)
遺伝性疾患であるα-1アンチトリプシン欠乏症(AATD)の一つで、肝疾患を引き起こす異常型のα-1アンチトリプシンというタンパク質を作るタイプが対象。異常型のタンパク質を作らせないことで治療する。武田薬品との共同開発。

・ARO-APOC3
高トリグリセリド血症(HTG)、重度高トリグリセリド血症(sHTG)および遺伝性疾患の家族性キロミクロン血症(FCS)の原因となる肝臓でのアポリポタンパク質C-III(apoC-III)の過剰な産生を抑える。

・オルパシラン(Olpasiran)
血中のリポタンパク質A値が高くなる原因のアポリポタンパク質Aの産生を減らすことで心血管疾患のリスクを下げる。アムジェン社とのライセンス供与契約。

同社の開発薬の多くが遺伝性疾患を対象としているのは、RNA干渉薬が体内で悪さをするタンパク質の除去を得意としていて、遺伝子の異常が元で異常なタンパク質が作られてしまう遺伝性疾患に適しているからです。

同社は2025年までに、20種類の開発薬を市場に投入する目標を掲げていて、RNA干渉薬の開発リーダーとしての地位を確立しつつあります。
従来の薬剤が標的物質の“形”を認識して結合するのに対して、RNA干渉薬は、遺伝子の“配列”を狙うため、間違って別の物質に働くことがほとんどなく副作用が低く抑えられるとされています。
遺伝性疾患の他にも、ガン、糖尿病、心血管疾患、感染症、神経変性疾患など多くの疾患に応用され実用化される可能性があります。

期待の大きいRNA干渉薬ですが、人の免疫をかいくぐって目標の細胞にうまく届けられる必要がある上に、製造、保存、輸送、投薬などの課題を抱えているのも確かです。
しかし、RNA分子の製造は、新型コロナウイルスのメッセンジャーRNAワクチンの急速な開発と成功によって大きく前進したため、RNA干渉薬のようなRNAベースの治療薬にも多大な恩恵がありました。

製薬会社は製造プロセスの最適化や効果的な投薬法の開発に取り組んでいて、こうした課題も克服されていくと期待されます。
RNAは次世代の医療を担う期待の星でもあり、技術の進展によっていよいよ“RNA創薬”の時代に入ったと言えるでしょう。

会社ウェブサイト
https://ir.arrowheadpharma.com/

 

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