2025年10年17日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1655.35で終わりました。一週間前に比べて+36.74(+2.27%)と反発しました。
主要インデックスのNYダウ(前週末比-0.13%)およびSP500(前週末比-0.44%)に比べてもかなり強く、一週間前の負けを取り返しました。一週間前は少し心配でしたが、米国小型成長株の(主力インデックスに対する)回復トレンドは継続しているようです。
先週のこのコメントでも触れましたが、トランプ大統領は中国への関税上乗せによるショックの火消しを図ったことで、関税問題による株式市場の懸念は少なくなっています。
<プライベート・デット時代の終焉??>
ファースト・ブランズ・グループ(FBG)の破綻をきっかけに、「ダイレクト・レンディング(ファンドが直接企業に貸し付けを行う)」「プライベート・デット・ファンド(非上場企業向けの貸付を行うファンド)」「ファクタリング(売掛金の買い取り)」「サプライチェーン・ファイナンス(売掛金の買い取りによる企業融資)」といった「銀行融資に代わる企業へのファイナンス」に対する不安が増大しています。
もともと、リーマンショック以後、銀行が中小企業への融資を絞ったため、資金繰りに困った中小企業は「新しいファイナンス」が必要となりました。ここに、銀行より柔軟性の高い(よく言えば機動的な、悪く言えば基準の緩い)ファンドが直接融資を行う事業機会が発生しました。プライベート・デット・ファンド(以下PDファンド)あるいはプライベート・クレジット・ファンドと呼ばれるファンドです。
融資の方法は、貸付もあれば、企業の発行する債券の購入、さらにその企業が持っている売掛債権の買い取りなど、さまざまな方法があります。
一方投資家も、国や大手企業が発行する債券の金利に比べて、かなり「おいしい金利」が付く、これらのPDファンドに多くの資金を投資してきました。
資金の集まったPDファンドは、さらに多くの企業融資が行えることができるようになりました。こうやって、投資家→PDファンド→中小企業への貸付、の流れが大きくなりました。
しかし、このPDファンドには、隠れたリスクがいろいろとあります。
銀行の場合、銀行口座を通じて企業活動の中身が随時・十分にチェックできるのに対して、PDファンドの場合は四半期や半期決算が出た後に、融資先企業の経営状況がわかるため、「状況が悪くなったときには、すでにその企業はかなり厳しい状況になっている」というリスクがあるからです。
さらに、ファクタリングの場合は、売掛金の発行会社の信用格付けが高くても、同じ売掛債権を複数のファンドに買い取らせるような「粉飾取引き」されているリスクがあります。
今回のFBGの場合も、負債額が当初予想していた金額より精査後はかなり膨らんでいたことから、二重売却の可能性が指摘されています。
また、「PDファンドのNAV」という問題もあります。
通常の債券投資ファンドは、投資先がセカンダリー市場で価格がついている国債や大手企業の債券に投資するため、どうしてもファンドのNAV(純資産価値)が上下します。
一方で、PDファンドは、投資先債権のセカンダリーがほとんどないため、簿価+経過利息で評価されるため、NAVが安定します。高い利回りにも拘わらず「表面上」は価格が安定している=ローリスク・ハイリターンに見えることになります。この特性を好む投資家が、PDファンドに大量に投資をしてきたわけです。
しかし、このローリスクは、価格が動きにくい、というだけで、「投資リスクが低い」わけではありません。今回のFBGの一件は、この「PDファンドの本当のリスク」を知らしめただけではなく、もしかしたら「とんでもないことが見えないところで起こっているのでは?」という心配も発生させています。
米国株式市場において地銀株が売られているのですが、日本の機関投資家や富裕層もPDファンドにかなり投資をしているはずです。今後この問題が、以前のサブプライム問題のように「とてつもない金融不安」を起こさないかどうか、非常に高い関心をもって見る必要があります。
<外部材料>
従来から以下の3つの材料を懸念しています。
・中国経済
・欧州政治
・中東問題
トランプ大統領は中国向け関税について火消しを行ったため、大きな売り材料はありませんでした。
<ウクライナ戦争と欧州政治>
このコメントでは、9月23日のトランプ大統領の変心は、「ウクライナ敗戦の責任を、いかにしてウクライナと欧州だけにできるか?トランプ大統領はウクライナ敗戦の戦犯ではなく、ウクライナ戦争を終わらせた平和の使者という印象を作り上げるか?」が背景にあると書いてきました。
トランプ大統領とプーチン大統領の電話会議。ゼレンスキー大統領が2日連続でトランプ大統領に電話をして埒が明かないからワシントンに直訴。最終的にトランプ大統領は、トマホークをウクライナに提供せず、「今の戦線で停戦すべき」とゼレンスキー大統領に伝えた。
という流れを見ると、やはり上記の考えで進んでいるのだと思います。
欧州の問題も悪化を続けています。
フランス政府は、内閣不信任案を回避するために、「どうしても必要」な年金開始年齢の変更を断念しました。選挙をしたくないだけのために、国の将来に大きな問題を起こすことが明白な決断をしました。イギリスも厳しい状況は同じです。
<小型成長株相場とラッセル2000グロース VS SP500 >
2025年10月17日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1655.35/6664.01=24.84%、
26週移動平均との乖離は+0.98%でした。
2025年4月のトランプ関税ショックの時には、23%割れの水準まで売り込まれました。しかし、利下げや景気の底堅さにより米国小型成長株は少しずつ「負け」を回復してきました。しかし、まだまだ長期的には「割安」な水準です。
米国小型成長株は、トランプ政権の「米国一国主義」の恩恵を一番受けます。長期的な回復相場を期待しています。
→ 2021年6月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2024年11月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)
コメント