2020年8月7日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1145.52で終わりました。一週間前に比べて、59.29ポイントの大幅上昇(+5.46%)でした。主要インデックスのNYダウ(前週末比+3.80%)やSP500(前週末比+2.45%)に比べても、かなりアウトパフォームしました。
この2か月続いた持ち合いを上に離れかけています。「ワクチン開発の進展」「緩和的な金融政策の維持」「経済データの回復」等が背景と言われていますが、これらの材料はこの数週間続いています。今週相場が上に離れつつ(=売り材料と買い材料のバランスが崩れた)あるのは、「新規患者数の増加の鈍化+日次死者数の増加の鈍化」が大きいと思っています。
<コロナの新規感染者増がピークアウト>
今週、米国の新規感染者数のトレンド(7日間移動平均)が下落になってきました。遅効性のある日次の死者数のトレンドは横ばい・やや下落になりました。州によって動きは異なり、状況も違います。しかし、全体として「コロナはピークアウトしてきた」と期待させる動きになってきています。
現時点の人口100万人当たりの累計感染者数は、15,386です。もし本当の感染者数が、累計患者数の10倍なら、感染率は15.386%、20倍なら30.77%、25倍なら38.47%となります。
人口100万人当たり15000人を超えた国で、新規感染者が増加傾向にある国は無いように思います。それぞれ国によって、やっている対策や医療環境は異なるのに「共通して、増加が鈍る」のは、やはりこのぐらいの水準になると、「何かあるのでは?」という感じがします。
<米中の緊張>
今週はTikTokやウィーチャットへの米国内での使用禁止、香港のキャリー・ラム氏への制裁など、引き続き米国の攻撃は継続しています。しかし予想通り、金融機関への制裁がない限り、米国株式市場への大きな売り材料になっていません。
私は「中国および香港の金融機関へ制裁が無い限り、米国株式市場は大きなダメージを受けない」と考えています。理由は次のようなことです。
・人への制裁は、中国の対米政策に影響を与えるものの、米国の株式市場にはマイナスにならない。
中国の要人の米国内資産が凍結されても、米国経済への影響は限られます。中国要人が「激怒して対米政策が硬化」しても、「中国ができることは、米国からの農産品の輸入停止」ぐらいです。しかし、「(米国からすれば)農産品の輸出激減」が「短期的に米国経済に与える悪影響」はかなり限られます。
確かに米国の農業は世界最大ですが、GDPに占める農業のウェイトは5%程度です。(米国の名目GDPは約21兆ドル、農業は1兆ドル程度)通常ならば、「輸出激減→政治的な圧力」となりますが、現在70%近い米国人が中国に批判的で、民主・共和両党、上下院ともに中国に厳しい態度です。
農産品価格が急落しても、(米国内では食品価格下落の効果もあり)、米国の株式市場への影響はかなり限られています。
・中国のSNS・アプリ企業への制裁は、米国の競争相手企業にはプラス。
一方で、米国のSNS・アプリ企業は、既に中国から締め出されています。失うものはかなり限られています。
・しかし「中国・香港の金融機関への攻撃」は「米国も返り血」を浴びる
この場合は、中国経済、香港経済は大荒れとなります。さらに「中国景気の急減速+資金手当ての問題」は中国・香港で事業をしている米国(そして欧州・日本)企業にも大きなダメージを与えます。これは劇薬で、「中国は大けが、米国もそれなりの大けが」になります。
<米国の小型成長株の割安について>
8月7日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1145.52/3351.28=34.18%
26週移動平均との乖離は、+1.63%でした。
ラッセル2000グロース÷SP500は、長期的に32%~38%のレンジで推移していました。
短期的には中立、長期的にはまだ小型成長株は少し割安、という感じです。
→ 2019年1月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2020年6月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)
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