2025年12年26日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1690.67で終わりました。一週間前に比べて+6.82(+0.41%)と小幅反発しました。

主要インデックスのNYダウ(前週末比+1.20%)およびSP500(前週末比+1.40%)に比べるとやや弱い動きとなっています。
クリスマス休暇も近くなり、大きな材料がない中で、堅調に推移しました。小型成長株はこのような「材料なき堅調な相場」では、引っ張る力が弱く、主力インデックスに後れをとっています。
従来からコメントしておりますが、大手IT、AI銘柄の割高感は顕著であり、一方で多くの投資家が既に投資ポジションを持っているため、何か理由があれば(ほんの些細な事でも)、これらの銘柄は売られやすくなっています。これまでの上昇スピードが急激であった分、下落率も強烈であり、時価総額数十兆円の銘柄が一日で10%近くも下落するという、信じられないような相場となっています。
一方で、米国小型成長株は、AIやITのウェイトが大型株に比べれば低く、また業種も幅広く分散しています。米国の基本的に高い経済成長率の恩恵を受け、さらに米国第一主義のトランプ政策との相性も、「グローバルに展開する大型銘柄」に比べるとよくなっています。
にもかかわらず、米国小型成長株は相対的には大幅な割安水準にあります。
主力株(といっても一部の超大型AI、IT銘柄でインデックスが動かされている)に比べて、相対的に有利な点があるとおもっています。(ただし、このようなコメントはこの3年間ずーっと書いてきています。そろそろ、実現化して欲しいと思っています。)
<プライベート・クレジット問題>
この問題はすぐに片付くとは思っておらず、引き続き高い関心を持って見ています。
<外部材料>
従来から以下の3つの材料を懸念しています。
・中国経済
・欧州政治
・中東問題
今週も、米国小型成長株にとって、大きな材料はありませんでした。
<中国経済の苦闘>
優良不動産会社と言われていた「万科企業」の債券がついにデフォルトしそう、というニュースがでました。中国経済は、一段と厳しい状況となってきました。
中国経済の根本的な問題は以下の2つの過剰在庫です
・メーカー:過剰な設備投資(この段階では有効需要=経済成長)
→過剰な生産→製品の過剰在庫
・不動産:過剰な開発(この段階では有効需要=経済成長)
→過剰な不動産販売→不動産の過剰在庫
現在、中国はこの2つの「(有効需要を作った後始末の)過剰在庫」を捌く方法がありません。
まず製品ですが、世界中で「安い中国製品輸入による国内メーカーの破壊」が問題視されています。米国は関税をかけ、多くの国が様々な政策で「中国からの輸入を止める政策」を施行しています。今後、これまでのように、中国の輸出が増えることは期待できません。中国国内の「製品の過剰在庫」は、いくら価格を下げようとも、売りさばくことができません。最終的に、製品は劣化・陳腐化により価値がゼロとなってしまいます。
メーカーのバランスシートは悪化し、銀行のメーカーへの貸付は、不良債権となります。
不動産は、一段と問題が明白です。「万科企業」ですら、デフォルトの可能性があるということは、ほとんどの不動産開発会社は債務超過になっていることを意味します。
さらに中国経済にとって問題なのは、多くの国民のバランスシートです。こちらも、不動産価格の下落によって、(この流れが続けばいずれ)超過状態になっていきます。
メーカーも、不動産会社も、個人も、資産の価値がとめどなく下落し、負債がどんどん不良債権化しますが、解決する方法がありません。
・金融緩和
不動産価格を支えるために、流動性を供給しても、バランスシートが痛んでいる状態では、不動産価格反転にはつながりません。
・財政の出動
インフラ等の財政出動をしたとしても、(短期的な有効需要を獲得できても、結果的には)
再び過剰な施設、設備、製品を積み上げるだけであり、一段と問題を悪化させます。
・通貨引き下げ
人民元安になったら、今以上に中国からの輸出への摩擦が大きくなるため、これも問題を悪化させるだけです。
・最先端技術で世界をリード
どれだけ技術が世界最高となっても、中国の外の需要を取り込むことが出来なければ、経済にプラスになりません。中国製品締め出しが続くかぎり、「最高の製品の過剰在庫」を生むだけです。太陽光パネルが既に実例を示しています。
中国政府が、公的資金を使って、不動産の買い取りを行う。さらに、国民の過剰貯蓄体質を消費体質に変えるために、所得再分配、社会保障拡充、労働者の交渉力の強化、民間企業の裁量拡大、等の政策を打つ。といったことが必要となります。
しかし、これらの政策は結果的に「中国共産党の国家支配の基盤を弱める」性質を持ちます。中国共産党にできるのでしょうか?
<ウクライナ戦争>
ゼレンスキー大統領がトランプ大統領に会いに、フロリダに行くそうです。
ウクライナの状況は非常に厳しく、非線形崩壊に近づいています。
米国は、この状況を理解して、「ウクライナを譲歩させて、早めに停戦すべし」の立場です。
欧州も、この状況を理解していますが、「ウクライナが非線形崩壊させにように支える」立場です。
この2つの政策が全く逆であるため、「ウクライナは消耗を続けて、確実に非線形崩壊の可能性が上がる」という皮肉な状況が続いています。
ウクライナに消耗を強いて、さらに戦場で勝ち続けているロシアが「中途半端な条件」で停戦するわけはなく、「ウクライナが譲歩して停戦するか?」「ウクライナが譲歩せず、戦争が継続して、ウクライナが非線形崩壊するか?」の二択となっています。アメリカが停戦に関与している間は前者の、停戦の関与をやめれば後者の、可能性が高くなります。今回のトランプ・ゼレンスキー会談、どのような結果がでるのでしょうか?
<小型成長株相場とラッセル2000グロース VS SP500 >
2025年12月26日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1690.67/6929.94=24.40%、
26週移動平均との乖離は+0.19%でした。

大型株(特にAI,IT)は割高であり、小型成長株は歴史的にみて大型株との比較では非常に安い場所にあります。一方で、政策は金利低下、米国第一主義で、米国小型成長株にとっては追い風です。
現在の歴史的な「ゆがみ」が訂正される相場が来ると期待しています。
→ 2022年1月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2024年11月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)

コメント