2025年2月21日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1444.87で終わりました。一週間前に比べ-63.45(-4.21%)の大幅続落となりました。主要インデックスのNYダウ(前週末比-2.51%)およびSP500(前週末比-1.66%)に比べても、かなり大きな下落であり、一週間前に引き続き米国小型成長株は明確に「負け」の一週間でした。
21日に発表されたPMIが予想外に弱く景気不安懸念が一気に強まりました。一方で、インフレ懸念もくすぶっており、株式市場はスタグフレーションを織り込む相場になりました。
特に、財政基盤が(大手企業に比べて相対的に)弱いと予想される小型成長株は、厳しい下落相場が続いており、主力インデックスに対してこの1か月で5%近いアンダーパフォーマンスとなっています。
<トランプ政策と米国小型成長株>
株式市場は、トランプ政権の政策をかなり「ネガティブ」に消化しています。しかし、長期的には、「トランプ政策は米国小型成長株にとっては、全体としてはプラス」と思っています。
背景は
・需要サイドは、大型株は「グローバル展開」しているのに対して、小型株は「より米国国内景気主導」であり、アメリカ第一主義のトランプ政策は小型成長株にとって追い風になると考えられること。
・インフレと金利については、悪いシナリオと良いシナリオがあります。最近の株式市場の動きをみれば、株式市場は「悪いシナリオ」を織り込む方向に進んでいます。
悪いシナリオ:
関税によって輸入物価は上がる。移民を締め出すことで、労働需給がひっ迫することで賃金も上がる。一方で、景気は強い。結果的にコストプッシュ型+ディマンドプル型のダブルでインフレ率が再び上昇し、FRBは緩和姿勢を維持できない。
良いシナリオ:
DOGE(政府効率化省)によって規制緩和、財政規模削減、公務員の大量解雇により、インフレ圧力は緩和される。特に環境関連の規制緩和によって石油生産も増加し、エネルギー価格は下落する。これらにより、関税上昇によるインフレ圧力は緩和される。
さらに、財政改善により米国国債市場の需給が改善し、長期金利は下がる。
一方、規制緩和+輸入締め出しによって、国内企業の業績は改善する。
実際にはトランプ政権がスタートして1か月しかたっておらず、政策の及ぼす本当の経済への影響はまだ明確になっていません。イメージ先行です。
今後数か月で、本当に「悪いシナリオ」が現実となっているのか?
それとも「良いシナリオ」が起こりつつあるのか?
経済指標を注視したいと思っています。
<外部材料>
トランプ大統領とゼレンスキー大統領の「舌戦」はありますが、「停戦」に向かう方向はかわらず、ウクライナ戦争は「米国小型成長株に悪影響を及ぼす外部材料」ではなくなったと思っています。
このため、現在は以下の3つの材料を懸念しています。
・中国経済
・欧州政治
・中東問題
中国経済は、「不動産の債務問題を中央政府が肩代わりするまで本格的な解決はない」と思っています。しかし、短期的には現在行われているような、「金利低下や流動性供給」などで「短期的な刺激による回復」が来ます。どこまで現在の「薬」の効果が続くかを見極めていく状況です。
中東は、トランプ政権が「パレスチナ人の気持ちなど考慮せず、徹底的にイスラエルを支える政策」を取るため、バイデン政権のような「板挟み」に陥る可能性はありません。
トランプ大統領とサウジとの良好な関係もあり、人質問題で紆余曲折はあるものの、しばらくは小康状態と思っています。
<欧州政治>
欧州政治は、ウクライナ戦争についてトランプ大統領が「(欧州の視点では)はしごを外す」政策を取ったため、一段と複雑化していきます。
米ロが話し合いをしたため、欧州で第三次世界大戦につながる「大戦争」のリスクはなくなったものの、新しい秩序構築の荒波にもまれるため、今後非常に流動的な状況となると予想されます。
ロシアとの緊張状態を維持すれば、インフレ傾向は続き、一方で景気は悪化します。さらに、「国防費急増を達成」のファイナンスは「増税」か「赤字財政へのハードルを下げる」の2択であり、いずれにせよ大きな政治の争点となります。
一方、経済の悪化を抑えるために「ロシアと融和的政策」を推し進める方法もありますが、これは一部の極右政党だけが主張しています。移民問題についても極右政党のみが厳しい態度を取るべきと主張しており、国内政治と対外政策が絡まった非常に複雑な政治情勢となります。
<小型成長株相場とラッセル2000グロース VS SP500 >
2025年2月21日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1444.87/6013.13=24.03%、
26週移動平均との乖離は-1.23%でした。
この4年間、小型成長株は相対的に「大負け」の状況です。
金利上昇、一部の大型IT・AI企業の上昇など、負け材料が連発でした。
現在の小型成長株の相対的な水準は、この20年間で最低水準にまで下がっています。
主力インデックスに比べて、「歴史的な割安状態」にあります。
トランプ政権によって、「超割安な小型成長株の、長期的な回復相場が始まる」と期待しています。
→ 2021年6月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2024年11月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)
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