2022年8月26日の米国小型成長株インデックス(Russell 2000 Growth)は、1186.45で終わりました。一週間前に比べ31.79ポイントの続落(-2.61%)でした。主要インデックスのNYダウ(前週末比-4.22%)やSP500(前週末比-4.04%)の下落率に比べるとやや軽微でした。
FRBのパウエル議長のジャクソンホールでの講演が「予想よりタカ派」だったため、楽観的に偏っていた株式市場は冷水を浴びせられた形になりました。
<アメリカの景気と金融政策>
8月5日のこのコメントで書いたように、私は「米国経済は基本的に堅調。しかしマネーサプライは安定しているから高いインフレは続かない。デフレではない、そこそこのインフレが常態化する。金利もある程度あり、経済の成長にも適した環境が継続する」と期待しています。
7月の株式市場は景気後退期待→金利引き上げ鈍化期待、が行き過ぎだと思っています。
逆に、今回のパウエル議長のコメントにショックを受けたのも、反応し過ぎと思います。
パウエル議長は、「ボルカー前の時代のように高いインフレが継続したらいやだから、まずは金利でブレーキをかける」と言っています。しかし、2022年に入りマネーサプライが安定しているため、私は長期的に高インフレなりにくいのでは、と思っています。
既にマネーサプライ安定化の影響もあるのか、国際商品市況は安定しています。さらに、FRBの重視する米国個人消費支出(PCE)物価指数は伸び率が低下してきています。
8月上旬までの金融市場は非現実的な金利低下を期待しました。これはやり過ぎです。しかしかといって、米国が高いインフレ→高金利で無茶苦茶になるわけではないと思います。
しばらくは、景気・企業業績・インフレの落ち着きどころを見る相場となります。
そして、(毎回同じコメントですが)長期的な視点でみると小型成長株の割安は依然として解消されておらず、小型成長株の買い場は継続していると思っています。
<ウクライナ情勢>
ロシアがウクライナに侵略をしてから半年が経ちました。この侵攻直後のこのコメント(3月4日)では以下のような2つのシナリオ例を書きました。
→ アメリカ成長株市場の動き-2022-03-04
良いシナリオ例と悪いシナリオ例で、この半年で明確となったこと、実現した部分を赤字にしました。
良いシナリオ
「厳しい経済政策によってプーチン政権が弱体し、ウクライナを結局コントロールできないまま撤退する。
中国は台湾侵攻のリスクの大きさを理解し、民主主義勢力はより安定した国際秩序を獲得する。またロシアを助けたことで、中国に対する世界的な信頼化はさらに悪化し、中国の影響力は低下する。
ロシアが撤退することで原油・天然ガス価格は下落する。脱炭素も従来のスケジュールに沿って進展する。
欧州のNATO加盟国は国防費を積み増しし、米軍基地の拡充や設置を希望する。結果的に米国の覇権はさらに安定する。」
悪いシナリオ
「ロシア経済は中国とインドとの取引継続で、厳しいながらも持ち堪える。欧州も日本も米国も、ロシアの原油と天然ガスの輸入をゼロに出来ず、SWIFT排除は中途半端な状況が続く。ウクライナでの戦争はゲリラ戦となり、ウクライナの国土の荒廃が一段と進む。
ロシアの多くの銀行をSWIFTから排除した事で、中国の国際決済システムであるCIPSの利用拡大に弾みがつく。ロシアのみならず西側に経済制裁されそうな独裁国家・強権国家・軍事政権が、ロシアの窮状を見て、保険としてのCIPS利用が広がる。
原油価格は高止まりし、中東産油国の発言力も増す。サウジの皇太子など、独裁的指導者が、国際政治への影響力を回復する。
欧米では、脱炭素と国家安全保障とのトレードオフ関係に焦点が当たり、脱炭素は後退する。
米国及び米ドルの覇権が揺らぎ、国際秩序は大きく不安定化する」
残念ながら、半年経過時点では、「悪いシナリオ」が多くなっています。
良いシナリオにするためには、ウクライナの明確な戦場での勝利が必要です。現状のような戦線の膠着が継続した場合、一段と悪いシナリオに傾斜しかねません。
<中国経済>
8月12日のコメントに書いたように、“もはや、「地方政府、金融機関、不動産会社」に任せるだけでは、明らかに「支援不足」であることがはっきりしている以上、中国政府が「直接何かする」段階にきているのでは、”と思っています。
8月22日に中国人民銀行はプライムレートの小幅切り下げを行いました。しかし、私が想定する「中央政府の景気テコ入れ策」には程遠い処方箋です。中央政府による財政出動が行われるまで、不安定な状況が続くと思います。
<小型成長株相場とラッセル2000グロース VS SP500 >
2022年8月26日時点の、ラッセル2000グロース÷SP500は1186.45/4057.66=29.24%
26週移動平均との乖離は+1.09%でした。
ラッセル2000グロース÷SP500は、2013年から長期的に32%~38%のレンジで推移してきました。2020年12月中旬にこのレンジを一次上に離れ43%まで急上昇しました。しかし、その後継続的に下落し、レンジの下を抜けました。2022年7月から反発トレンドになっていますが、現在でも歴史的な安値水準にあります。
まだまだ、小型成長株は買い、と思っています。
→ 2020年1月以降の小型成長株とS500の相対比較の推移
→ 小型成長株関連投資信託のパフォーマンス(2022年7月末時点)
(過去の市場コメントは、「アメリカ成長株(米国成長株)市場」)
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