アメリカ成長株:ジムシッピング(ZIM Shipping)の概要
ジム・インテグレーテッド・シッピング・サービシズ
ZIM Integrated Shipping Services Ltd
ティッカーコード:ZIM
上場市場:NYSE
業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/ZIM
米国市場には、米国以外の企業も多く上場しています。今回紹介するジム・インテグレーテッド・シッピング社(以下ジム・シッピング社)はイスラエルの海運会社ですが、NY証券取引所に上場している「小型成長株」の一つです。
海運会社の経営は、船を使って輸送料を稼ぐ、という非常にシンプルなビジネスです。しかし、船の製造には長い時間がかかるためサプライサイド(=輸送できる)は短期的には変化しないのに対して、需要サイド(=輸送して欲しい品物の量)は景気に連動するため大きく変動します。結果的に、輸送料は大きく上下に振れることになります。さらに空船だろうと、満載だろうと、船乗りの数は変わらないため、利益は数倍のレベルで上下します。
また、船の価格は輸送トラック等に比べてはるかに高価であり、全ての船を自社所有した場合、バランスシートが膨大に膨れ上がります。バランスシートが大きく、一方で利益は猛烈に上下するという「非常にハイリスク」な性格のビジネスと言えます。
このような性格のある海運業界において、「高い経営効率」を達成しているのが、今回紹介するジム・シッピング社です。
ジム社の特徴は以下の3つです
1)資産を持たない:運用している船はほとんど借りています。
2)DX化:経営及び意思決定の効率化を図っています。
3)ニッチに焦点:競争の低いニッチな輸送機会を見つけ、迅速に対応します。
まず、1)の資産を持たないとうことですが、同社は約100隻の船を運用していますが、ほとんどは短期契約で借りた船です。これにより、需要の変化に合わせて供給を調整することで、経営の安定化を図っています。
しかし、船を貸す方=船主の立場からすれば、その時々で一番良い状況を出す海運会社に船を貸します。ジム・シッピング社が「需要が増えたから、借り船を増やそう」としても、他の海運会社が借船契約をしていれば、借りることができません。みすみすビジネスチャンスを逃す事になります。
このため、1)の「自分で船を持たない経営」をするためには「人が借りるより早く借りる」「人が借りない時に、船を借りる」といった能力が必要となります。
この視点で必要となるのが、2)と3)です。
まず、2)のDX化です。
顧客からの注文を迅速に処理するDX化、需要動向の先を読むDX化、といったことを積極的に進めることが、「借船経営」を支えています。
また3)のニッチへの積極的な進出も、「他の海運会社とは異なるマーケットで勝負すれば、他の海運会社とは異なる時期に、異なる条件で船を借りることができる」という解決策を生み出します。
例えば、eコマースに対応したサービスです。ネットで注文した商品を、非常に素早く届けるサービスですが、競争相手は他の海運会社ではなくて、航空便です。船便は航空便に比べて圧倒的に安価ですが、一方で非常に時間がかかるという難点があります。同社の場合、中国→米国(ロスアンゼルス)を12日間で運ぶそうです。
結果的に同社の経営は非常に効率的になっています。
例えば、日本郵船と同社を比較すると以下ようになっています。
日本郵船 | ジム・シッピング | |
決算期および単位 | 2021年3月、億円 | 2020年12月、100万ドル |
売上高 | 1兆6084億円 | 3991百万ドル |
営業利益 | 715億円 | 718百万ドル |
最終利益 | 1392億円 | 517百万ドル |
総資産 | 2兆1254億円 | 2824百万ドル |
もちろん、税務上の差があるため、単純な比較はできません。しかし、10分の1の資産で、同水準の営業利益を上げており、非常に効率的な経営がされていることがわかります。
世界景気の動向、米国と中国のデカップリング、世の中のIT化等々、海運会社の経営は本質的に環境に振り回されます。しかし、その中でも「相対的」に、事業環境への抵抗力・対応力が高く、効率的な経営をしているジム・シッピング社は、今後とも注目したい会社であると思っています。
会社ウェブサイト
https://www.zim.com/
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