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アメリカ成長株: ウェーブ・ライフ・サイエンス(Wave Life Sciences):RNA治療薬の開発

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アメリカ成長株: ウェーブ・ライフ・サイエンス(Wave Life Sciences)の概要

ウェーブ・ライフ・サイエンス
Wave Life Sciences Ltd
ティッカーコード:WVE
上場市場:NASDAQ National Market System

業績についてのリンク
https://finance.yahoo.co.jp/quote/WVE/performance

ウェーブ・ライフ・サイエンス社はRNAをベースとした核酸治療薬を開発しています。
同社の治療薬は筋ジストロフィーやハンチントン病などの遺伝性疾患や、肥満症のような後天性疾患の治療を目指すRNA治療薬です。

体内で作られるタンパク質は体を構成する筋肉・臓器・骨になったり、さまざまな物質を作る酵素として機能したりと、体を維持するあらゆる場面で重要な役割を果たしています。
タンパク質はDNAに書かれた遺伝子情報に基づいて作られますが、遺伝子は必要な部分だけメッセンジャーRNAにコピーされ、タンパク質の製造工場であるリボソームに運ばれます。

同社のRNA医薬品は、このメッセンジャーRNAに作用し、病気に関わるタンパク質の生成を抑制したり、その構造や機能を変化させたりすることで病状を改善するように設計されています。
これはRNA治療薬がRNAと結合しやすく、標的となる特定のメッセンジャーRNAだけに結合できる性質を利用しています。

現在同社が臨床試験を進めている主な治療薬候補は
・WVE-003(ハンチントン病治療薬):第1b/2a相試験を完了
・WVE-N531(デュシェンヌ型筋ジストロフィー治療薬):第2相試験を実施中
・WVE-006(アルファ1-アンチトリプシン欠損症治療薬):第1/2相試験を実施中
の3つのRNA治療薬です。

この中ではWVE-003(ハンチントン病治療薬)が2024年末までに規制当局から迅速承認を受ける可能性があり、最も早い承認が期待されています。

RNA医薬品には、従来の医薬品に比べて以下のようないくつかの重要なメリットがあります。

1.高い特異性1

RNA医薬品は特定の遺伝子をターゲットにできるという高い特異性を持っています。
これにより、正常な細胞や組織に対する副作用を最小限に抑えつつ病気の原因となる遺伝子を直接的に修正または抑制することが可能です。

2.多様なメカニズム
タンパク質の設計図であるメッセンジャーRNAをRNA干渉(RNAi)、スプライシング修正、RNA編集などによって修正・調整することで、作られるタンパク質の性質や量をコントロールできます。
これにより、従来の小分子薬や抗体医薬品では対応できない疾患に対しても治療の可能性の道を開きます。

3.迅速な開発
標的となるRNA配列さえ分かれば、RNA医薬品は比較的容易に設計・合成できるため、新しい治療法の開発が迅速に進む可能性があります。
特にパンデミックや新興感染症に対する迅速な対応が求められる場合に有利です。

4.治療の柔軟性
RNAは様々な細胞プロセスに関与しているためRNA医薬品は、ガン、感染症、遺伝性疾患などの幅広い疾患の治療に適用できる可能性があります。
従来の治療法では難しかった病態の改善が期待されており、患者にとって新たな治療の選択肢を提供します。

5.製造コストが低い
RNA医薬品は抗体薬のようなタンパク質医薬品と比較して、製造コストが低い傾向があります。
これはRNAが構成因子が少なく、タンパク質よりも単純な構造をしているためです。

こうしたメリットにより、RNA医薬品は次世代の医薬品として期待されています。
同社が持つ技術の中では特にWVE-006に使われているRNA編集という技術が注目されています。

近年盛んに聞かれるようになった“ゲノム編集”は、農産物の改良や医療での遺伝子治療に大きな進歩をもたらす革新的な技術として期待され、実際さまざまな場面に応用されて実績を積んでいます。
RNA編集はこれに似ていて、ゲノム編集が遺伝子のDNAを改変するのに対し、RNA編集はメッセンジャーRNAを改変する技術です。

ゲノム編集は設計図の元本である核内DNAを変えてしまうため効果は永続的ですが、RNA編集は元本のコピーであるメッセンジャーRNAを編集するだけなので効果は一時的です。
この特性は治療効果の持続期間を制御したり、副作用のリスクを軽減したりする上で有利です。

今年のノーベル生理学・医学賞は、マイクロRNAと呼ばれる小さなRNAの断片が細胞の遺伝子発現の調整で重要な役割を果たすことを解明した研究に与えられました。
今後こうした体内での多岐にわたるRNAの役割が明らかになっていくと、RNAを編集・調整する治療法が拡大していくと思われます。

RNAをターゲットとした治療薬の開発はまだ始まったばかりで、今後の研究によってRNAの機能やその調節メカニズムがより深く解明されることで、さまざまな疾患に対する新しい治療法が次々と開発されるでしょう。

会社ウェブサイト
https://wavelifesciences.com/

 

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