アメリカ成長株:ベンティックス・バイオサイエンシズ(Ventyx Biosciences)の概要
ベンティックス・バイオサイエンシズ
Ventyx Biosciences Inc
ティッカーコード:VTYX
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
ベンティックス・バイオサイエンシズ社は、自己免疫疾患と炎症性疾患のための新しい経口治療薬を開発しています。
対象は乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、リウマチなどの根本的な治療法がまだ確立されていない難病です。
自己免疫疾患は、本来外敵を排除するために働く免疫の防御システムが自分の体を攻撃してしまう厄介な病気であるため根本治療は難しく、ステロイド剤で炎症を抑えるか免疫を抑制するしか方法がないのが現状です。
同社が開発中の治療薬も免疫を抑えるという基本は同じですが、副作用が出ないようにできる限りピンポイントで必要な部分にだけ効くように設計されています。
公表されている開発リストでは現在以下の4つの治験が進行中ですが、いずれも低分子の経口治療薬で体内の巨大なタンパク質の一部に結合してその働きを抑える阻害薬として機能します。
・VTX958:乾癬、乾癬性関節炎、クローン病(第一相臨床試験中)
・VTX002:潰瘍性大腸炎(第二相臨床試験中)
・VTX2735:心血管、代謝、肝臓、腎臓の疾患およびリウマチ(第一相臨床試験終了)
・VTX3232:神経炎症性疾患(前臨床試験中)
ターゲットとなるのは免疫に関わるタンパク質で、過剰な免疫を抑制する効果が期待できます。
この中でも注目したいのは“アロステリック阻害剤”と呼ばれるタイプのVTX958です。
生体内で機能している酵素のような多くのタンパク質には、別の分子と結合する“くぼみ”があり、ここが機能を発揮するための活性中心となっています。
従来の阻害剤は、この“くぼみ”に結合して塞ぐことで阻害効果を発揮します。ところが生体内には似たような形のくぼみを持つタンパク質が多く存在する場合もあり、ターゲット以外のタンパク質の働きまで抑えてしまうという難点があります。
VTX958のターゲットは免疫応答のシグナル伝達に関わる“TYK2”というタンパク質ですが、エネルギー代謝やシグナル伝達に幅広く関わるリン酸化酵素群の一種で、一緒くたに阻害すると様々な副作用が出てしまいます。
一方、アロステリック阻害剤であるVTX958は活性中心のくぼみではなく、全く別の部位にくさびを打つように突き刺さることでターゲットのタンパク質が機能できないような構造に変化させます。
TYK2だけが持つ独特の構造の部位を狙ってくさびを打ち込むので、関係のないその他のリン酸化酵素には影響を与えません。
従来の阻害薬より副作用を抑えられると期待されるアロステリック阻害剤ですが、開発にはタンパク質の構造を詳しく調べて、どの位置にどのようなくさびを打ち込めばいいのかを決めるための詳細なタンパク質の構造解析やコンピューターによる薬物選択の技術が欠かせません。
こうした高度な技術が出てきたのは近年のことであり、アロステリック阻害剤の研究・開発もまだ始まったばかりで、副作用の大きな従来の阻害薬に代わる優れた治療薬がこれから続々と出てくると期待したいと思います。
会社ウェブサイト
www.ventyxbio.com
コメント