アメリカ成長株: トラヴェール・セラピューティクス(Travere Therapeutics)の概要
トラヴェール・セラピューティクス
Travere Therapeutics Inc
ティッカーコード:TVTX
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://finance.yahoo.co.jp/quote/TVTX/performance
トラヴェール・セラピューティクス社は、主に希少腎疾患をターゲットとして将来的な標準治療薬を開発しています。
同社が開発したスパルセンタン(商品名:FILSPARI)は米国ではすでに販売されており、ヨーロッパ、オーストラリア、ニュージーランドでは、CSL Vifor社が独占的な商業権を持っており、これらの地域でも販売が開始される予定です。
さらに、日本、韓国、台湾、東南アジア諸国においても、Renalys Pharma社との提携による販売を計画しており、今後の市場展開が期待されています。
スパルセンタンはIgA腎症の成人患者の腎機能低下を遅らせる低分子薬で、経口投与可能な錠剤の形で提供されます。
IgA腎症は腎臓のフィルターである糸球体に、IgAという抗体が異常に蓄積されることによって引き起こされる疾患で、免疫系の機能不全が関与しています。
IgAの蓄積は腎臓の炎症を引き起こし、タンパク尿や血尿などの症状が現れ、進行すると腎機能が低下し、最終的には腎不全に至る可能性があります。
IgA腎症の進行にはエンドセリン-1(ET-1)とアンジオテンシンIIという2つのペプチド(小さなタンパク質)の因子が関与していることが分かっています。
これらの因子はIgAの蓄積によって活性化され、腎臓の細胞を損傷し、炎症をさらに悪化させます。
スパルセンタンはET-1とアンジオテンシンIIの両方の作用を抑える阻害剤で、病状の進行を遅らせる効果が認められており、現在、IgA腎症の治療薬として使用されています。
米国ですでに発売されているスパルセンタンは、2024年度の売上高が約1億3,200万ドルに達しており、前年に比べて大幅な成長を示しています。
また、同社はスパルセンタンを巣状分節性糸球体硬化症(FSGS)の治療薬としても開発を進めています。
この疾患は糸球体の一部の構造が変化することで引き起こされ、腎不全の主要な原因となる深刻な腎臓病です。
FSGSの発症と進行にも先述のET-1とアンジオテンシンIIが密接に関与していると考えられています。
これらの因子は、糸球体のフィルター機能を支える役割を果たすポドサイトという細胞の損傷、炎症、糸球体の構造的な変化を促進し、FSGSの病態を悪化させます。
原因となる2つの因子を抑制する作用を持つスパルセンタンは、FSGSのケースでも腎機能の保護に寄与します。
第3相臨床試験でスパルセンタンはタンパク尿の有意な減少、および症状の改善が見られる部分寛解と、症状がほぼ完全に消える完全寛解を達成する可能性を示しました。
FSGSは腎不全の主要な原因の一つであり、現在の治療法は限られています。
患者の約40%が移植後に病気が再発し、30~60%の患者が5~10年以内に腎不全に至ることが報告されています。
スパルセンタンはこれらの患者に対して新たな治療選択肢を提供する可能性があります。
同社は、IgA腎症に対するスパルセンタンの商業的成功を活かし、FSGSにおいても同様の成功を目指しています。
スパルセンタンの開発は、IgA腎症やFSGSなどの希少な腎疾患に対する新たな治療法を提供するだけでなく、これらの疾患に対する治療戦略を大きく変える可能性を秘めています。
単なる新しい薬剤の提供にとどまらず、治療ターゲットの転換、治療効果の向上、治療時期の前倒しと併用療法の促進、患者のQOL(生活の質)改善、などの幅広い変革をもたらす可能性があります。
IgA腎症やFSGSの治療では、抗体の産生を抑える免疫抑制剤の使用が一般的ですが、スパルセンタンは免疫抑制剤ではありません。
スパルセンタンは、免疫抑制剤に頼らずに長期的に腎機能を維持するための標準治療薬として使用できる可能性があります。
そうなれば、腎機能を維持するための長期的な基礎治療として位置付けられ、必要に応じて免疫抑制薬を断続的に併用する新たな治療アプローチの扉を開くことになるでしょう。
これにより、副作用のリスクを軽減しながら、より効果的に病気の進行を抑制できるようになります。
この新しい治療アプローチは希少腎疾患の治療パラダイムを大きく変える可能性を秘めており、この分野の治療においてトップ企業としての地位を確立するための重要な要素となるでしょう。
会社ウェブサイト
https://travere.com/
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