アメリカ成長株: トランスメディクス(TransMedics)の概要
トランスメディクス・グループ
TransMedics Group Inc
ティッカーコード:TMDX
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://finance.yahoo.co.jp/quote/TMDX/annual
病気や事故で臓器の機能を失った場合、薬や機械に頼るか他の人から臓器提供を受けることになります。
当然ですが、臓器は生きている人間の中にあるのが一番状態がよく、心停止と同時に劣化が始まり時間とともに損傷が進行します。
脳死の状態で血流があれば、心臓・肺・肝臓・腎臓・膵臓・小腸・眼球の7つの臓器が提供できますが、心停止後は腎臓、膵臓、眼球の3つに限られてしまいます。
臓器を提供する側と受ける側が間近にいてすぐに移植するのが理想ですが、免疫の型が合致する患者が近距離にいるとは限らず、遠方まで輸送するには時間がかかるため長時間いかにして損傷を少なく保存できるかの勝負となります。
現在主流なのは摘出後すぐに保存溶液に浸して氷水で4℃以下に保つ冷蔵保存です。
最近は、特殊な保存溶液を使って氷点下以下に冷やす“過冷却”という方法でより長く臓器を保存する技術も登場していますが、取り出して冷却し再度温めて移植する際の温度変化で生じる活性酸素が臓器を傷めてしまうため、いったん冷やす方法は理想的とは言えません。
今回紹介するトランスメディクス社は、冷蔵輸送に代わって臓器を体内に近い環境を維持したまま常温で保存・輸送できるシステムを製造・開発しています。
同社が開発した“OCS”というポータブルの臓器保存システムは温度と酸素濃度を最適にした血液が常に流されていて臓器は生きた状態が保たれます。
常にモニターで臓器の状態を監視して必要に応じて酸素や栄養素を補給できます。
対象となるのは肺、心臓、肝臓の3つで、それぞれ専用のOCSが用意されています。
従来の冷蔵保存では、血液循環が止まる“虚血”によって臓器に回復不能の損傷が起きる確率が上がりますが、輸送中は状態のチェックをせずにとにかく急いで輸送し、どうなっているかは蓋を開けてみないと分からないというものでした。
輸送中にも監視と処置ができるOCSでは、冷蔵保存と比べて時間と距離の制限が大幅に緩和されるため貴重な臓器をより多くの人々に提供し有効活用できます。
冷蔵保存の代わりにOCSを導入すると、提供された肺・心臓の利用率は2~3割から8割を超えるまで上昇し、移植後の合併症は30~35%から10~14%まで減少すると同社はアピールしています。
臓器移植で常に問題となるドナー不足、拒絶反応、倫理などの問題を避けるため、自己の細胞から臓器を作って移植する技術が求められてきました。
その期待が一番大きいiPS細胞は血液細胞ぐらいがやっとで、心臓や肺のような複雑な臓器にはとても及ばない状況である上に、ガン化しやすい、莫大な費用がかかるなどクリアすべき難題があってなかなか実現していないのが現実です。
将来的に画期的な臓器製造技術が出てくる可能性もありますが、当面はドナーからの臓器移植に頼らざるをえない状況が続き、OSCのような臓器保存技術が支えていくことになるでしょう。
会社ウェブサイト
www.transmedics.com
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