アメリカ成長株:プロタゴニスト・セラピューティクス(Protagonist Therapeutics)の概要
プロタゴニスト・セラピューティクス
Protagonist Therapeutics Inc
ティッカーコード:PTGX
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://finance.yahoo.co.jp/quote/PTGX/performance
プロタゴニスト・セラピューティクス社は、ペプチド医薬品の開発に特化しており、自己免疫・炎症疾患、血液疾患、代謝性疾患などの満たされない医療ニーズの高い分野に取り組んでいます。
ペプチドとは、アミノ酸が2~50個つながった比較的に短い分子です。
50個以上(数百から数十万)のアミノ酸が複雑な構造を形成する“タンパク質”と比べると、人工的な化学合成が簡単で分子としても安定しています。
ペプチド医薬品には、以下のようなメリットがあります。
・高い特異性と選択性
特定の標的に対して高い親和性を持ち選択的に作用するため、副作用を最小限に抑えられる。
・高い安全性
比較的に天然物質に近い構造であるため、免疫からの攻撃を受けにくく安全性が高い。
・高い親和性と効率的な作用
生体内での標的への結合力が強く、少量の投与で効果的な作用を発揮できる場合が多い。
・合成工程の容易さと効率性
化学合成技術を用いて比較的容易に大量生産できるため、タンパク質製剤と比べてコストが抑えられる場合が多い。
・生産期間の短縮
合成の工程が比較的短いため、開発・生産サイクルを短縮でき、コスト効率を高めるられる。
ペプチド医薬品の優れた点で、特に重要なのが安定性の高さです。
抗体医薬品のようなタンパク質製剤は注射剤ですが、安定なペプチド医薬品は錠剤やカプセルでの経口投与が可能で、その点が大きな差別化要因となっています。
同社が現在開発を進めているペプチド医薬品の概要は以下の通りです。
・Rusfertide (ラスフェルチド):第3相臨床試験段階
鉄の代謝に関わるホルモンであるヘプシジンを模倣したペプチド。
真性赤血球増加症(PV)や血色素症などの鉄過剰症の治療を目的とする。
鉄の吸収抑制と過剰鉄の除去を促進し、血液学的疾患の管理に新たな治療選択肢を提供。
・Icotrokinra(イコトロキンラ):第3相臨床試験段階
炎症に関わるサイトカインであるIL-23(インターロイキン-23)の阻害効果を持つペプチド。
自己免疫疾患や炎症性疾患、主に乾癬、潰瘍性大腸炎、クローン病などの治療を目的とする。
既存のIL-23阻害薬とは違って経口投与可能であり、患者の負担軽減につながる。
・PN-881:初期段階の臨床試験に向けて化合物の評価・準備中
炎症に関わるサイトカインであるIL-17(インターロイキン-17)の阻害効果を持つペプチド。
乾癬、乾癬性関節炎、化膿性汗腺炎などの自己免疫疾患を治療の目的とする。
既存のIL-17抗体製剤と比較して、経口投与の利便性が大きな特徴。
・PN-477:第1相臨床試験が来年開始予定
体重増加や代謝に関わる因子であるGLP-1R、GIPR、GCGRの3つに同時に作用するトリプル作動ペプチド。
肥満および関連合併症(2型糖尿病など)の治療を目的とする。
肥満治療において、より革新的で、より効果的で、より便利で、より安全性の高い“ベスト・イン・クラス”の治療薬となる可能性がある。
タンパク質は、アミノ酸が数百から数十万個つながる複雑な構造を持っていますが、機能発揮に必要なのはタンパク質の中の限られた一部分の場合があります。
この“機能部位”と同じ配列を持つ短いペプチド(機能ペプチド)を人工的に合成すると、元のタンパク質と同様の作用を示すことがあり、これがペプチド医薬品としての開発につながります。
合成ペプチド医薬品が登場したのは1950年代ですが、近年注目されるようになり、開発や応用が進んでいます。
以前は「分解されやすい」「経口投与が難しい」などの理由で治療の中心になりにくい面がありました。
しかし近年は、ペプチドを安定化する技術や、標的だけに結合させる標的特異性を高める技術が進歩してきました。
その結果、抗体医薬や小分子薬でしか治せなかった病気に対してもペプチド医薬品が使えるようになってきたのです。
さらに近年は、経口投与が可能なペプチド医薬品や、体内での分解耐性を持つペプチド薬開発が進んだことで、治療の幅が急速に広がっています。
最近、ガン、自己免疫疾患、アレルギー、感染症、アルツハイマー病など幅広い疾患に対して開発された画期的な治療薬の多くは抗体医薬品ですが、治療費が高額になるという欠点があります。
これは、複雑で大きく不安定な“タンパク質”である抗体医薬品では、最先端の研究開発費、製造コスト、注射剤特有の取り扱いコストがかさんでしまうためです。
抗体の代わりにペプチドが使用できれば、開発、製造、治療などのコストが下がる可能性があり、医療機関と患者双方にメリットがあります。
これは、医療システムを支える国家の財政負担の軽減にもつながるものであり、ペプチド医薬品の開発は、単なる新薬創出を超え、社会・経済的インパクトをもたらすものなのです。
会社ウェブサイト
https://www.protagonist-inc.com/
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