アメリカ成長株:メルス(Merus)の概要
メルス
Merus NV
ティッカーコード：MRUS
上場市場：NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/MRUS
メルス社は“二重特異性抗体”という特殊な抗体を作成する技術を持っていて、これを利用した治療薬の開発と抗体作成プラットフォームの提供の両方を事業展開しています。
抗体は免疫システムで働く高分子のタンパク質で、標的の異物に結合することで囲い込んで動きを止めたり、異物を食べる免疫細胞を呼んだりする役割があります。
体内で作られる抗体は一つの物質だけに結合しますが、二重特異性抗体は異なる2つの物質に結合できるように遺伝子組み換え技術によって作られた特殊な抗体です。抗体の構造は両手を広げて立つ人のような“Y字”の形をしていて、標的を2本の手でしっかりとつかみます。
普通の抗体と違って二重特異性抗体は片手ずつ別々の物をつかむように設計されているので、別々のものを引き合わせたり、逆に、くっついたもの同士の間に割り込んだりする新しい機能を持っています。標的とするのは主に細胞の表面に出ているタンパク質であり、別々の細胞を接近させることもできます。
同社の開発リストの中で最も臨床試験が進んでいるのはゼノクツゾマブ（MCLA-128）で、肺ガン、膵臓ガン、その他の固形ガンのための治療薬として第二相試験が進められています。
ゼノクツゾマブはガン細胞の無秩序な増殖に関わるHER2とHER3というタンパク質に結合する二重特異性抗体です。HER2とHER3はガン細胞の表面にあって二者同士がピッタリとくっついて機能しますが、ゼノクツゾマブが間に入って邪魔をすることによって機能しなくなりガン細胞の増殖が抑えられます。
その他にも二重特異性抗体を使った次の３つ開発薬の治験が進行中で第一相試験の段階にあります。
1)MCLA-145
ガン細胞のPD-L1と免疫細胞のCD137というタンパク質に結合して両者を引き合わせます。ガン細胞はMCLA-145によって引き寄せられた免疫細胞の攻撃を受けて破壊されます。
※IncyteCorporationとの共同開発（ライセンス契約）
2)MCLA-129
ガン細胞の増殖・浸潤を促すシグナルを送るc-METとEGFRというタンパク質に結合してその働きを抑えます。
それに加えて免疫細胞を呼ぶ機能も持っているためガン細胞の排除も促進します。
２つのタンパク質に同時に結合するので細胞選択性が高くなり、正常な細胞とガン細胞を正確に区別できます。
※Betta Pharmaceuticals Co. Ltd.との共同開発（ライセンス契約）
3)ONO-4685
免疫細胞の暴走によって引き起こされる自己免疫疾患と血液悪性腫瘍を対象としています。免疫細胞の一つのT細胞にあるPD-1とCD3というタンパク質に結合することで免疫の過剰な活性化を防ぎます。
※ONO PHARMA USA、INCが開発（マイルストーン・ロイヤリティ契約）
さらに同社は二重特異性抗体を発展させた“三重特異性抗体”というユニークなツールを開発しています。これは抗体についている片方の手の先にもう一本手を付け加えた形をしていて、合計３本の手で標的をつかむことができます。
例えばガン細胞と免疫細胞を標的とした場合、一本の手で免疫細胞、二本でガン細胞をつかむように設計すれば、より確実にガン細胞だけをつかめるようになり副作用を小さくできます。３つの標的を同時につかめる三重特異性抗体の特性を活かし、治療・検査・研究への幅広い応用が想定されています。
近年の研究でガン細胞の表面にあるタンパク質の解明が進み、どの表在タンパク質をつかめば効果を高めたり副作用を下げたりできるかが推測できるようになりました。
こうしたガン細胞の詳しい知見を基に、二重特異性抗体・三重特異性抗体をうまく使ったガン治療薬の開発が進むことが期待されています。
会社ウェブサイト
www.merus.nl
コメント