アメリカ成長株:ランセウス・ホールディングス(Lantheus Holdings)の概要
ランセウス・ホールディングス
Lantheus Holdings Inc
ティッカーコード:LNTH
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/LNTH
「病気の有効な治療は正確な診断から始まる」と言われていて、様々な画像診断装置が開発された結果、体の内部まで詳しく調べられるようになりました。
最近の医療にはCT、MRI、エコー、核医学イメージング(PET、SPECT)などの画像診断装置を使って体の内部の様子を3次元画像にする技術が多用されています。
今回紹介するランセウス・ホールディングス社は、こうした画像診断に使用される造影剤を開発・製造する企業を傘下に置いています。
造影剤は目的の臓器や部位を鮮明に撮影するための薬剤で、X線検査で使われるバリウムやヨード剤がよく知られています。
CT、MRIはX線、エコーは超音波、核医学イメージングは放射線を使いますが、核医学イメージングには他と違う大きな特徴があります。
CT、MRI、エコーが単純に体の内部を撮影するだけであるのに対して、核医学イメージングはガン細胞などの病変や知りたい部分だけをイメージ化できます。
抗体や分子を放射性物質でマーキングしておいて放射線を検出するカメラで撮影するとガン細胞などの特定の細胞や分子が立体映像として映ります。
核医学イメージングの一つにガン検診のPET検査がありますが、これはガン細胞で多く消費されるグルコースに放射性フッ素を結合した造影剤を使ったものです。
PET検査は初期のガンを発見するために役立っていますが、グルコースは健常な臓器でも盛んに消費されるため、脳、心臓、腎臓などの特にグルコースを多く使う臓器の診断には使えません。
そこで同社はグルコースの代わりに、ガン細胞だけで特に多く作られるFAPというタンパク質に集まる性質を持った小分子の造影剤(NTI-1309)を開発しました。
NTI-1309はガン細胞だけを可視化するので、グルコースを使った方法では不可能だった臓器のガンも診断できます。
一般的に放射性物質には放射線を出す時間の長さや放出する放射線の透過性に様々なタイプがあります。核医学イメージングには透過性の高い放射線を出す放射性物質を使いますが、これは透過性が高いと体にダメージを与えずに外に出てくるので患者の被爆が少なく外部からも検出しやすいからです。
放射性物質はサイクロトロンというイオン加速器で作成しますが、半減期が数分から数時間と短く放射線を出す時間が限られているため、速やかに目的の分子に結合させて出来たての造影剤を速やかに患者に投与する必要があります。
核医学イメージング用の造影剤を作成する工程は
・操作はすべて無菌状態で行う。
・合成は短時間で行う。
・作業員の被ばくを防ぐ。
という難しい条件を同時にクリアしなければなりません。
放射性物質は製造と取り扱いに手間がかかりますが、診断だけでなく治療にも使うことができます。同社が開発中のPSMA TTCは、抗体に放射性トリウムを結合させた前立腺ガン治療薬です。
この抗体はPSMAという前立腺ガンの細胞表面に多く存在するタンパク質に集まるように作られていてガン細胞だけを集中的に放射線で叩くことが可能です。
PET検査の造影剤には透過性の高い放射線を出す放射性物質を使いますが、PSMA TTCのような治療薬には透過性が低いものを使います。
透過しない分、周辺のガン細胞だけに放射線のエネルギーが吸収されて破壊されます。外部から放射線を照射する放射線治療にくらべて健常な細胞へのダメージが少ないため副作用が低く抑えられます。
この方法は“RI内用療法”、使用する薬剤は“RI治療薬”と呼ばれていて、患者の負担が少ない治療法として広まってきています。ガン細胞に集まったRI治療薬が出す放射線は外部から検出できるので治療と観察が同時に行えるというメリットもあります。
分子標的薬や抗体がガン細胞に集まることを利用して放射線治療を体の内部から行う方法は、これからのガン治療のホープとして期待されていて様々なRI治療薬の開発が進んでいます。
会社ウェブサイト
www.lantheus.com
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