アメリカ成長株:クリスタル・バイオテック(Krystal Biotech)の概要
クリスタル・バイオテック
Krystal Biotech Inc
ティッカーコード:KRYS
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://finance.yahoo.co.jp/quote/KRYS/annual
クリスタル・バイオテック社はジストロフィー性表皮水疱症や先天性魚鱗癬などの遺伝性皮膚疾患を遺伝子導入によって治療する遺伝子治療薬を開発しています。
これらの遺伝病は遺伝子の欠損や変異によって必要なタンパク質が体内で作られないために引き起こされます。
ジストロフィー性表皮水疱症や先天性魚鱗癬では、いずれも正常な皮膚の構築に必要なタンパク質が作られないために皮膚のバリア機能が失われてしまいます。
開発が一番進んでいるのはジストロフィー性表皮水疱症のための“B-VEC”で、第三相の臨床試験段階でも有望な結果が得られていて、承認に向け大きく踏み出しています。
ジストロフィー性表皮水疱症は遺伝的にコラーゲンタンパク質の一種が体内で作られないために、表皮と真皮の接着が弱くなってわずかな摩擦や刺激で皮膚に水ぶくれや潰瘍を生じます。
重症になると激しい痛みがあり、感染症にかかりやすくなったり、手足の指がくっついてしまうこともある厄介な病気ですが、現在は有効な治療薬がなく患部に保湿剤や抗生物質を塗ったり、ガーゼで保護するなどの対症療法が中心となっています。
B-VECは“ベクター”と呼ばれる遺伝子治療用のウイルスを細胞に感染させてコラーゲンタンパク質を作らせます。
このウイルスは自身のパーツとなるタンパク質を感染した人間の細胞に作らせて増殖しますが、ウイルスの遺伝子を操作することでパーツの代わりにコラーゲンタンパク質を作らせます。
細胞内で作られたコラーゲンタンパク質は表皮と真皮の接着を助けて患部を正常な状態に戻していきます。
B-VECの最大の売りは「皮膚に塗るだけ」という点にあります。
ウイルスベクターは次々に周辺の細胞に感染してコラーゲンタンパク質を作らせますが、ウイルスベクター自体は増殖しないように遺伝子操作されているため必要以上には広がりません。
効果を継続させるには投薬し続ける必要がありますが、副作用のような問題が生じた場合には投薬をやめれば済むので安全です。
通常、遺伝子治療は大掛かりな治療であり、例えば最近承認された“CAR-T細胞療法”は、自己の免疫でがん細胞を攻撃するように免疫細胞を一度体外に取り出して遺伝子を導入して再び元に戻すという治療法で、入院期間も長く患者の負担も大きなものです。
それに比べるとB-VECは「皮膚に塗るだけ」「いつでもやめられる」という点で優れていて、入院・注射・手術が必要ない手軽で画期的な遺伝子治療と言えます。
B-VECが実用化されれば、その他の先天性の皮膚病への応用の道も開けることになり、アトピーのような患者数の多い皮膚病の特効薬の開発につながる可能性もあります。
対症療法しか打つ手のなかった先天性の皮膚病に苦しむ多くの人々に希望の光をもたらすB-VECの成功に期待したいと思います。
会社ウェブサイト
www.krystalbio.com
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