アメリカ成長株:アイオバンス・バイオセラピューティクス(Iovance Biotherapeutics)の概要
アイオバンス・バイオセラピューティクス
Iovance Biotherapeutics Inc
ティッカーコード:IOVA
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://finance.yahoo.co.jp/quote/IOVA/performance
アイオバンス・バイオセラピューティクス社は、近年発達してきた新しいガンの治療法である“ガン免疫療法”の開発に焦点を当てています。
ガン免疫療法の中では比較的に歴史のある“腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法”を中心に革新的な開発を進めています。
ガン免疫療法は、患者が持つ免疫機能を利用してガン細胞を攻撃し、ガンの進行を抑制し、除去することを目指します。
現在行われている代表的なガン免疫療法を普及している順に挙げると以下のようになります。
1.免疫チェックポイント阻害剤
ガン細胞が免疫系から逃れるメカニズムをブロックし、免疫系をガン細胞の攻撃に向かわせる治療法。
代表的な免疫チェックポイント阻害剤には抗PD-1抗体であるオプジーボがある。
2.CAR-T細胞療法
患者自身の免疫系のT細胞を遺伝子組み換えによってガン特有の抗原に反応するように改造し、体内に戻す治療法。
特にB細胞がガン化するタイプの血液ガンに対して効果がある。
3.腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法
患者自身の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)を取り出し、体外で増殖させた後に再び患者の体内に戻す治療法。
特に進行性の悪性黒色腫(メラノーマ)や子宮頸ガンなどに対して有効性がある。
4.ガンワクチン
ガン細胞に対する免疫応答を促進するためのワクチン。
ガン細胞の特異的な抗原を認識させることで、免疫系をガン細胞の攻撃に向かわせる効果が期待される。
これらのガン免疫療法は患者の状態やガンの種類に応じて適切な方法が選択されます。
同社が開発している3の腫瘍浸潤リンパ球(TIL)療法は、患者の免疫細胞を取り出して元に戻すという意味で2のCAR-T療法と似ています。
TIL療法は患者が持つ免疫力をそのまま活用するという点でその他の方法と比べてユニークです。
人体には毎日のようにDNAに損傷が起きて小さなガンのタネが生じていますが、DNA修復機構や免疫によって修復・排除されます。
たとえ体内に発生したガン細胞が増殖し始めたとしても、免疫系に見逃されて放置されることはほとんどありません。
大抵の場合、免疫系が発見して排除しようとするシステムが働くことになり、腫瘍の中にはガン細胞と戦う腫瘍浸潤リンパ球(TIL)が見つかります。
しかし、その数が足りなかったり活動が弱かったりするとガンの増殖に追いつかず、無秩序な増殖を許してしまうことになります。
実際にガン細胞と戦っているTILは、患者のガン細胞の攻撃に特化しています。
このTILを外部に取り出して人工的に増やし、再度体内に戻してガンとの戦いに加勢させるのがTIL療法です。
TIL療法は比較的歴史のある治療法で、1980年代後半から研究が進められてきましたが、長年に渡る紆余曲折があり、今年の2月、同社のリフィレウセル(販売名:アムタグビ)がFDAによって初めて承認されました。
技術の進歩でTIL療法の改善が進み、様々な種類・状態のガンへの応用が期待されています。
今回FDA承認されたのは悪性黒色腫(メラノーマ)に対するものでしたが、同社は子宮頸ガンへの適用にも広げていて、こちらもBTD(画期的治療薬指定)を受け、承認に向けて臨床試験が進行中です。
また、リフィレウセルは、同じくガン免疫療法薬(免疫チェックポイント阻害剤)であるペムブロリズマブと併用する治療法の開発も進められています。
一言でガン細胞と言っても、その種類・性質・状態は患者によって千差万別であり、一つの治療法や薬剤で対処できるほど単純ではありません。
現在のガン治療は患者個別のガンにカスタマイズされた“オーダーメイド医療”の方向に向かっています。
TIL療法はガン細胞を実際に攻撃している患者の免疫細胞を使うという意味で、究極のオーダーメイド療法と言われています。
治療法としては優れていますが、高度な技術と限られた専門の施設が必要で、普及には超えなければならない様々なハードルがあります。
今後は高額で治療場所も限られるTIL療法を、より多くの患者が利用できるようにするためにさらなる研究と技術革新が不可欠です。
将来的にはTIL療法が広く利用され、多くの患者が手軽に選択できる治療法になるようになることを願います。
会社ウェブサイト
https://www.iovance.com/
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