アメリカ成長株:ハロザイム・セラピューティクス(Halozyme Therapeutics)のアップデート2
ハロザイム・セラピューティクス
Halozyme Therapeutics Inc
ティッカーコード:HALO
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/HALO
ハロザイム・セラピューティクス社はヒアルロン酸分解酵素であるヒアルロニダーゼを使って体内の必要な場所に薬剤を届ける“ENHANZE”というドラッグデリバリーシステムを提供しています。
(ハロザイム・セラピューティクス社については、過去2回紹介しています。
→ ハロザイム・セラピューティクス社の概要
→ ハロザイム・セラピューティクス社のアップデート1)
ヒアルロン酸には高い保湿性があるため、美容や食品の分野で盛んに利用されていて、ヒアルロン酸クリームやヒアルロン酸サプリメントが多数出回っています。
また、食品の乾燥を防ぐための食品添加物としても昔から加工食品に使われてきています。
この保水性は、ヒアルロン酸が水と親和性の高い“糖”が連なった構造をしていることから来るものです。人間の皮膚の中にもヒアルロン酸が存在していて水分を保持して流動させないことで皮膚の潤いを保つと同時に外部からの浸透を防ぐバリアとして機能しています。
良いことばかりのヒアルロン酸ですが、この“肌のバリア”が問題となることがあります。外部からの水分を内部に浸透させないため、治療薬を皮下注射した際に注射液が浸透するのを妨げてしまうのです。
この問題を解決するのがヒアルロニダーゼという酵素で、ヒアルロン酸の鎖を切ってバリアを一時的に破壊し、注射液を通過させて内部への浸透を促進させることができます。
皮下注射の液量の限界は2ミリリットル程ですが、ヒアルロニダーゼを使うと速やかに吸収されていくため、600ミリリットルまで上げることが可能になります。
分解されたヒアルロン酸は通常 1~2日で自然に回復して元の状態に戻ります。
元々ヒアルロニダーゼはウサギの精巣から見つかったもので、ウシやヒツジなどの動物由来のものが使われていましたが、アナフィラキシーショックのようなアレルギーを人体に引き起こすこともあります。
同社のENHANZEに使われるヒアルロニダーゼは、動物由来ではなくヒト由来のもので、遺伝子組換えによってヒアルロン酸の分解効率が140~200倍に増強されています。
ENHANZEとその他の治療薬を混合して使用する他社とのコラボレーションしていて、ヤンセン社のダラツムマブ、ロシュ社のトラスツズマブなどの抗体を使った抗ガン剤がすでに発売されています。胃酸で分解されてしまうタンパク質の抗体薬は、経口ではなく点滴で投薬されるため、特にENHANZEの恩恵が大きくなります。
2021年6月にはヴィーブヘルスケア社が開発したHIV治療薬であるカボテグラビルとENHANZEの併用が承認されました。
これにより、カボテグラビルの投薬の間隔を2ヶ月から最大6ヶ月まで延長できることになりました。
HIVは致死の病でしたが、複数の薬剤を併用することでウイルスを抑えられるようになり生存率は劇的に上昇しました。
しかし、患者は毎日大量の錠剤を飲み続けなければならない上に副作用やウイルスの薬剤耐性にも悩まされてきました。
近年は開発が進み、効果が高く副作用も少ない治療薬が出てきていますが、カボテグラビルもその一つで、世界初の長期作用型注射剤として承認されたものです。
毎日大量の錠剤を飲んでいた時代から比べれば2ヶ月に一度の注射で済むのは大きな進歩ですが、さらにそれを6ヶ月に一度にできれば費用、時間、手間などの患者の負担を大きく軽減します。
一度に注射できる液量を増やす効果は大きくて、投薬の間隔を広げるだけでなく、投薬時間の短縮、患者と医療機関の負担軽減、空床の確保なども含まれます。
最先端のバイオ医薬品は点滴での投与が必要となる抗体を使っているものが多いため、ENHANZEが重要な役割を果たしていくことになるでしょう。
会社ウェブサイト
www.halozyme.com
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