アメリカ成長株:エッジワイズ・セラピューティクス(Edgewise Therapeutics)の概要
エッジワイズ・セラピューティクス
Edgewise Therapeutics Inc
ティッカーコード:EWTX
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://finance.yahoo.co.jp/quote/EWTX/performance
エッジワイズ・セラピューティクス社は、筋肉の動作不良が引き起こす遺伝性の筋疾患のための治療薬を開発しています。
筋肉は数多くのタンパク質が正確に働いて複雑に制御されることで正常に機能しています。
ところがこの中の一つにでも異常が起きると、そのバランスが崩れて筋肉の機能不全に陥ってしまう場合があります。
同社が治療対象とする筋ジストロフィーや重篤な心臓疾患も、筋肉の動作に関わるタンパク質の一つに遺伝的な異常が生じることで発症します。
現在同社は遺伝性の筋疾患のためのセバセムテンとEDG-7500という2つの低分子薬を中心に臨床試験を進めています。
1.セバセムテン:筋ジストロフィー(第3相臨床試験が進行中)
筋ジストロフィーは過剰な力が加わった際に筋肉が傷つき、その修復が不十分であるために損傷が蓄積して症状が進行していく病気です。
進行するにつれて歩行困難や心筋症などの合併症を引き起こす可能性があります。
遺伝的な要因でジストロフィンという筋肉を保護する成分が不足するために筋損傷が通常より激しくなることで発生します。
同剤は筋肉を収縮させる役割のミオシンというタンパク質の働きを抑えることで、筋肉が過剰に収縮するのを防いで筋損傷を抑えます。
2.EDG-7500:肥大型心筋症(第2相臨床試験が進行中)
肥大型心筋症では、心筋細胞の過剰な収縮を引き起こすことによって心筋が異常に肥大して心臓の壁が厚くなります。
その結果、心臓の拡張機能と収縮機能が損なわれ、様々な症状を引き起こします。
サルコメアと呼ばれる心筋の収縮に関与するタンパク質複合体の遺伝子変異が原因で発症する最も一般的な遺伝性心疾患です。
同剤は異常なサルコメアに作用し、その機能を調節することで過剰な収縮と弛緩の障害を改善し、心筋の活動を正常化します。
これらの開発薬はどちらも簡単な分子構造を持つ低分子薬です。
よく話題になるのは抗体薬のようなタンパク質でできた高分子薬の方が多い傾向にあり、最近注目を集めたアルツハイマー病治療薬のアデュカヌマブやレカネマブなどもその例です。
しかし、高分子薬と比べると低分子薬には、製造コストが安い、経口投与できる、保存・輸送がしやすい、組織浸透性が高いなどのメリットがあり、地道に開発する医薬品会社も多くあります。
低分子薬は一般的に高分子薬よりも短期間で開発できる傾向にあります。
その理由としては
・高分子薬は生物学的製剤であり、製造方法が非常に複雑だが、低分子薬は化学合成によって比較的簡単に大量生産が可能で、開発プロセスがスムーズに進行する。
・高分子薬は新しい治療ポイントを標的にするため、臨床試験、特に安全性や有効性の確認に時間がかかるが、低分子薬は既存の技術やプロセスを利用するため、比較的迅速に開発が進むことが多い。
・高分子薬は新しい技術を用いることが多いため、規制当局による審査が厳しく、承認までに時間がかかる。
・高分子薬は、温度やpH、保存条件に対して敏感であるため、安定性を確保するための研究が必要で、長期間の安定性試験や保存・投薬条件の最適化が含まれ、開発期間が延びる要因となる。
・高分子薬は体に異物として認識されやすく免疫応答や副作用のリスクが高いため、臨床試験のデザインが複雑になり、試験の実施やデータ解析に時間がかかる。
などが挙げられます。
同社はこうした低分子薬の開発上の利点を活かして迅速に開発を進めています。
最近登場している画期的な治療薬は、細胞や生物由来の高分子薬、いわゆるバイオ医薬品であることが多くなっています。
ただし、低分子薬も依然として多くの疾患に対する治療法として重要な役割を果たしています。
今では、低分子薬の開発に人工知能(AI)を活用した創薬、コンピュータ技術を利用した新しい薬物の設計・最適化や薬物候補の大量スクリーニングの敏速化などの新しい手法が使われるようになっています。
こうした新しいテクノロジーによって画期的な低分子薬の開発も可能になっていて、今後の開発にも期待が寄せられています。
会社ウェブサイト
https://edgewisetx.com/
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