アメリカ成長株:ESABの概要
ESAB
ティッカーコード:ESAB
上場市場:NYSE(ニューヨーク証券取引所)
業績についてのリンク
https://finance.yahoo.co.jp/quote/ESAB/annual
モノを作る製造業において、金属材料の溶接と切断は基本中の基本となる技術です。
ESAB社は、溶接と切断およびガス制御、個人保護具、ソフトウェア、ロボット装置などを含む高品質で信頼性のある製造技術を提供しており、世界の約150カ国において多くの産業で採用されています。
また、研究開発に力を入れていて革新的な製品とソリューションを提供し、業界をリードしています。
事業は溶接材料、自動化設備、ガス制御装置の3つの製品グループで展開されています。
1.溶接材料
・溶接に使用する溶加材(溶接部に溶かし込む材料)やフラックス(溶接部分の保護材)などの消耗品を製造・販売する。
・80人以上の科学者やエンジニアが溶接材料の配合技術を開発する。
・宇宙開発、防衛、医療などで使われる高度な品質と安定供給が求められる製品が全体の50%以上を占める。
2.自動化設備
・溶接ロボットとその周辺装置などの設備機器を製造・販売する。
・大手メーカー向けのIoT化した(インターネットに接続できる)重工業用の産業ロボットや溶接装置を製造・販売する。
・最新のAIやデジタルソリューションを取り入れて生産性向上に貢献する。
3.ガス制御装置
・各種工業用ガスの制御装置を製造・販売する。
・医療現場や半導体製造に使われる各種ガス市場への参入で高成長を遂げている。
・デジタルソリューションの導入で、顧客の装置運用コスト低減に貢献する。
同社の最大の強みは、溶接とデジタルの連携による自動化ソリューションにあります。
同社の“InduSuite”は、IoT化した溶接機器からリアルタイムでデータを収集し、解析・最適化して指示を返すもので、溶接作業の標準化、自動追跡、品質改善をクラウドベースで実現します。
“ESAB Cobot”は溶接作業者向けに設計された協働ロボットで、スマホやタブレットのアプリを使って溶接作業を指示できます。
高品質な溶接を維持しながら人手を増やすことなく生産性を向上させます。
また、作業者の技能に依存しない自律型の溶接ロボット“Adaptio”も開発中です。
これは人工知能(AI)とロボットアームを連携させて自動で最適な溶接を実行させるもので、人間が行う指示までをAIに任せることにより全自動化を実現します。
まだ実用化には至っていませんが、製品化されれば溶接の自動化が次の段階へ進むことになります。
これにより、
・人材が不足する熟練工が不要になり、人件費削減と生産性向上につながる。
・AIが解析した最適条件での自律溶接が可能となって品質が安定化する。
・熟練工の技能伝承や新人の育成の期間が短縮される。
・溶接データの蓄積により、欠陥予測やメンテナンス精度が向上する。
などの大幅な進歩がもたらされます。
最新のデジタル技術を取り入れることで、作業全体の生産性向上、自動化、品質安定化が実現されますが、これは現在世界的に見られる製造・建築業に従事する溶接工の不足問題に対する重要な解決策となるものです。
こうした生産工程の完全自動化は、インダストリー4.0(第4次産業革命)と呼ばれる製造業における生産や流通のデジタル化やオートメーション化を目指す動きにつながると期待されています。
同社の事業は一言で言って“堅調”であり、コロナパンデミックの影響もそれほど受けず業績を上げてきています。
背景には、現代の産業界におけるモノ作りの必須基盤としての溶接技術への依存が高まっていることに加え、同社が常に最先端の研究開発を推進し、グローバルに事業を展開していることがあります。
製造業が存在する限り、溶接ソリューションへのニーズはなくならないはずで、研究開発によって常にトップレベルの技術を維持している同社は、業界の世界的なリーダーとしての地位を維持し続けていくことになるでしょう。
会社ウェブサイト
www.ESAB.com
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