アメリカ成長株:センテッサ(Centessa)の概要-3
センテッサ・ファーマシューティカルズ
Centessa Pharmaceuticals PLC
ティッカーコード:CNTA
業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/CNTA
センテッサ・ファーマシューティカルズ社はガン、血友病、自己免疫疾患、高血圧、神経障害、遺伝病などの様々な疾患のための治療薬を開発する10の製薬企業を子会社として抱えています。
今回はこれらの子会社のうちのOrexia Therapeutics社が開発しているナルコレプシー治療薬をピックアップして紹介します。
ナルコレプシーは日中に抵抗できないような強い眠気が襲ってくる慢性の希少疾患で、会社の会議や商談中、車の運転中などの重要な場面で突然眠ってしまうこともあり社会生活に大きな支障を生じることになります。
健康な人の脳では“オレキシン”と呼ばれる神経系の分子が“オレキシン受容体”というタンパク質と結合することで脳を覚醒させるスイッチを押しています。
ナルコレプシーの患者さんの脳ではオレキシンを作る細胞に異常が起きているために必要な量作られず日中でも覚醒スイッチが十分に作動しません。逆にこのスイッチが作動したままになると覚醒状態が夜間でも続くことになり不眠症につながります。
ナルコレプシーの治療には、リタリンやモディオダールなどの覚醒を維持する薬物が使用されますが、これらは中枢神経を直接もしくは間接的に刺激する、文字通り“覚醒剤”に近いもので慎重に処方する必要があります。特にリタリンは明確な診断基準がないウツ病にも処方されてきたため、あいまいな診断で使用された結果、依存・乱用が問題になり今はウツ病に処方されることはなくなりました。
Orexia Therapeutics社が開発するナルコレプシー治療薬はオレキシンと同じようにオレキシン受容体と結合することで覚醒スイッチを押すタイプの薬剤で、中枢神経を刺激するリタリンやモディオダールとは異なります。
オレキシンはタンパク質でできた神経伝達物質なのですが、これを人工的に作って脳に直接投与すると覚醒効果があることが確かめられています。しかし、タンパク質は経口投与や点滴で投薬しても脳へ到達しないため使い物になりません。
これは“脳関門”と呼ばれる障壁があって、有害な細菌、ウイルス、タンパク質のような大きな分子から脳を守っているためです。
経口投与で効果を得るためには、脳関門を通過できるような小さな分子である必要があり、同社はタンパク質の立体構造解析とコンピュータシミュレーションを組み合わせた構造ベースのドラッグデザイン(SBDD)を使うことでオレキシンと同じ働きを持つ小分子の開発に成功しました。
ナルコレプシーの治療薬は乱用の問題から規制が厳しくなる傾向にあり、本当に必要としている患者さんが入手困難になるという事態を招いてます。
同社が開発するオレキシンの代替となる小分子薬は依存・乱用を招くような脳の中枢神経の興奮作用を最小限に押さえながら覚醒を維持することが予測されるため、リタリンやモディオダールに代わる安全なナルコレプシー治療薬として期待されています。
またナルコレプシーと逆に、オレキシンの覚醒効果を抑える睡眠薬も登場していて脳全体の活動を抑える従来の薬より自然な睡眠に導くとされています。
オレキシンが睡眠と覚醒の切り替えを行うキーとなる神経伝達物質であることからナルコレプシーと不眠症の両方のターゲットとしてオレキシンが注目されていて、依存症や副作用のない治療薬の開発に期待が高まっています。
会社ウェブサイト
www.centessa.com
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