アメリカ成長株:ASTスペースモバイル(AST SpaceMobile)の概要
ASTスペースモバイル
AST SpaceMobile Inc
ティッカーコード:ASTS
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://finance.yahoo.co.jp/quote/ASTS/performance
ASTスペースモバイル社は、低軌道衛星ネットワークを用いた宇宙ベースのブロードバンドネットワーク構築を目指しています。
これは、既存のスマートフォンやモバイル機器をそのまま用いて、地上基地局の電波圏外でも通信できるようにするサービスです。
衛星通信サービスと言えば、スペースX社が提供するスターリンク衛星が有名ですが、利用するには専用のアンテナが必要となります。一方、同社のサービスは追加機器のアンテナが不要である点で大きく異なります。
宇宙の衛星から直接4G、LTE、5Gの各通信規格に対応した電波を送信するため、アンテナがなくても既存の端末で受信できるもので、DTC(Direct to Cell)方式と呼ばれます。
専用アンテナの導入コスト、持ち運び、設置の手間などを考えると、現在広く提供されているスターリンクの衛星通信サービスと比較して圧倒的に有利なシステムと言えます。
まだ本格的なサービス提供はまだ始まっていませんが、同社が去年から始めている米国、日本、英国などでパートナー通信事業者との実証試験や技術的デモンストレーションは既に多数成功しており、スマートフォンを使った衛星直接通信(音声・データ・ビデオ通話)の運用が確認されています。
一般向けの本格的サービスは、2025年末から断続的に営業開始し、2026年末に米国、欧州主要国、日本で段階的に提供予定となっています。
同社の現在の事業をまとめると以下のようになります。
1.衛星通信サービス(SpaceMobile)
・低軌道衛星ネットワークにより、既存のスマートフォン・IoT端末に地上設備や追加機器なしで直接通信サービス(通話・データ・ビデオ等)を提供。
・4G、LTE、5G準拠のブロードバンド(最大120Mbps)に対応し、低遅延通信を目指す。
2.グローバルパートナー連携
・AT&T、Verizon、Vodafone、楽天モバイルなど世界50以上の大手通信キャリアと提携し、既存地上網と衛星通信のシームレスな連携モデルを構築。
・サービス利用者に直接課金せず、携帯ネットワーク事業者から衛星ネットワークの利用に関する接続料を受け取る。
3.衛星・通信インフラ設計と量産
・米国のテキサスやスペインのバルセロナなどで大規模な自社衛星製造工場(最大月6基生産)を運営。
・独自開発した高性能の低消費電力の専用チップ、信号制御装置、中継機を低コストで量産。
4.法人・公共セグメント展開
・政府機関、災害対策、公共安全のためのIoT(モノのインターネット)、M2M(Machine to Machine 機械間通信)機器向け通信サービスの提供。
・米国国防総省や欧州現地法人との共同開発も進めている。
5.特許・開発・研究投資
・3600件以上の特許・申請中技術を持ち、自社所有の技術資産を最大限活用。
・スペインなど海外大学との共同研究・検証施設も設立。
スペースX社もアンテナ不要のDTCサービスを開始していますが、大量のデータ通信は難しく、テキストメッセージの送受信や位置情報共有、緊急速報の受信など、緊急時や低容量の通信に用途が限定されます。
同社は、通常のモバイルブロードバンド(4G、5Gレベルの通信)を電波圏外エリアのスマートフォンに直接提供することを目指していますが、サービス開始までは少し時間がかかりそうです。
一方、スペースXのDTCサービスは、低容量通信ではありながらすでに開始されており、シェアを取ってから将来的に大容量通信に切り替えていくという戦略のようです。
最近、DTCサービスの競争は激化しており、いつでもどこでも手軽にスマートフォンを使いたいというユーザーのニーズに応えるために各社がしのぎを削っています。
同社のサービスの優位な点は、巨大衛星アンテナによる大容量通信とグローバル携帯キャリアとの提携ネットワークにあります。
他社のDTCの試験サービスがショートメールや低速データが中心であるのに対し、同社の衛星が持つ大面積フェーズドアレイアンテナは120Mbps級の高速通信が可能です。
また、世界中の主要キャリア(AT&T、Verizon、Vodafone、楽天など40社以上)と業務提携済みで、約30億契約者分のアクセス基盤を早期に確保しています。
ユーザー側からすれば、電波が届く範囲を気にせずシームレスにスマートフォンを使えるに越したことはなく、他社に比べて同社のサービスが有利であるのは明らかです。
ただし、他社も徐々に大容量通信に対応しつつあり、同社が技術面の優位性を今後も維持し続けるのは大変です。
ネットワークの安定性、エリアの拡大、コスト面での優位性なども重要な差別化要素となるため、同社は技術革新や提携強化を進めてより広範囲かつ高品質なサービス提供を目指していく必要があるでしょう。
会社ウェブサイト
https://ast-science.com/

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