アメリカ成長株: ADMAバイオロジックス(ADMA Biologics)の概要
ADMAバイオロジックス
ADMA Biologics Inc
ティッカーコード:ADMA
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://finance.yahoo.co.jp/quote/ADMA/performance
ADMAバイオロジックス社は、免疫不全や感染症リスクの高い患者向けの免疫グロブリン製剤を開発・製造・販売する製薬会社です。
免疫は、ウイルスや細菌などの異物が体内に侵入してきた場合に攻撃・排除する機能ですが、これがなんらかの原因でうまく働かないと、細菌やウイルスの感染を受けやすくなり、慢性化した感染症や重篤な疾患につながる可能性があります。
同社の治療薬の対象となるのは、主に原発性免疫不全症(PI)という遺伝的要因で生まれつき免疫がうまく働かない遺伝性疾患です。
原因は、免疫に関わる免疫グロブリンという抗体タンパク質の遺伝子異常によって正常に機能しない抗体が作られてしまうことにあります。
同社が開発する治療薬は、正常に機能する免疫グロブリンを体外から投与することによって症状を改善するもので、免疫グロブリン療法と呼ばれています。
以下の3つ製品がFDA(米国食品医薬品局)承認済みで、同社によって製造・販売されています。
1)ASCENIV
原発性免疫不全症(PI)の治療に使用。
静脈内注射用の免疫グロブリン製剤で、免疫力が低下している患者に投与され、感染症の予防や治療に役立つ。
標準的な免疫グロブリン療法が効きにくい患者のための代わりの治療法として高い需要がある。現在、小児用としての利用の開発も進められており、2026年前半にFDA承認が得られる可能性があり、同社の商業製品提供をさらに強化すると予想される。
2)BIVIGAM
原発性免疫不全症(PI)の治療に使用。
静脈内注射用の免疫グロブリン製剤で、免疫不全患者の体の免疫機能を補強し、感染症リスクを低減する。
多数の健康なドナーから集めた血漿由来の多様な抗体を補充することで、患者の感染防御力を高める。
静脈内投与により、患者の血中抗体濃度を維持し、感染症の発症や重症化を予防。
3)Nabi-HB
B型肝炎ウイルス(HBV)に対する免疫力を増強する免疫グロブリン製剤。
高濃度の抗HBV抗体を含み、主に感染後のB型肝炎予防に使われる。
すでに感染した患者だけでなく、HBVに曝露された新生児や医療従事者など、感染リスクのある人に対しても速やかな感染防御力を提供できる。
この中で注目すべきなのは、“ASCENIV”が同社独自の特許取得済みであるドナースクリーニングとプラズマプール設計を用いて製造されているという点です。
ドナースクリーニングは、血漿提供者の中から特定の抗体を持つドナーを効率よく選別する技術で、これにより血漿の抗体濃度を最適化し、高品質な血漿を確保することが可能となります。
プラズマプール設計は、AI(人工知能)と機械学習を組み合わせて最適な血漿の選別と混合比率を自動的に決定するプロセスで、これにより特定の抗体を持つドナーと、一般ドナーの血漿を特定の比率で厳密に混合して均質な製剤を作る技術です。
特許技術で作られた製剤は従来のものと比べて、特定抗体の安定供給、治療効果の一貫性、特定患者層への最適化などの点で優れています。
こうした製品に加えて、新しい免疫グロブリン療法の開発も進めています。
SG-001は肺炎球菌感染症の予防や治療を目的とした開発中のハイパー免疫グロブリン製剤です。
肺炎球菌は市中肺炎の主要原因となるもので、乳幼児や高齢者、がん患者や慢性疾患を持つ人など、免疫が低い状態で感染すると重症化する危険があります。
ハイパー免疫グロブリンは通常の免疫グロブリンと比べて、病原菌に対する防御力が高い抗体を多く含んでいて、感染症の予防や治療においてより効果的に働きます。これにより、感染リスクの高い患者や免疫力が低下している人々に対して、迅速かつ強力に免疫をサポートできます。
肺炎球菌治療の市場規模は非常に大きく、SG-001のFDA承認が得られれば最大年間で3億~5億ドル規模の収益が見込まれています。
免疫グロブリン療法は即効性があり、多くの疾患に対して有効ですが、最新のバイオテクノロジーというよりも、地道な従来の治療法に近いものです。
ドナーからの血漿提供に頼っており、工場で大量生産できず安定供給できない、コストが高い、不安定な性質のため投与には点滴が必要で保存・輸送の手間がかかるなどの問題もあります。
最近では、従来の治療法に代わる最先端技術も登場してきており、免疫グロブリン療法も例外ではないでしょう。
対象が遺伝子疾患の場合には、異常なタンパク質を作る元になる遺伝子そのものを書き換えてしてしまう、“遺伝子治療”という根本的な治療の道もあります。
また、タンパク質工学の進歩により、人工的な抗体を使った免疫グロブリン療法の可能性も出てきています。
しかし、従来型の免疫グロブリン療法に代わる、遺伝子治療や人工抗体には、安全性、コスト、規制などの高いハードルがあり、実現にはまだまだ時間がかかりそうです。
従来型の免疫グロブリン療法にも、革新的な技術によって置き換えられるまでの“つなぎ”としての重要な役割があります。同社は当面の間、限りある貴重な抗体を最大限に活用し、少しでも効率よく使うために技術を改良していくことで、免疫グロブリン療法の質の向上と、医療資源の有効活用に貢献していくでしょう。
会社ウェブサイト
https://www.admabiologics.com/
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