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アメリカ成長株:スライド・インシュアランス・ホールディングス(Slide Insurance Holdings):損害保険会社

金融

アメリカ成長株:スライド・インシュアランス・ホールディングス(Slide Insurance Holdings)の概要

スライド・インシュアランス・ホールディングス
Slide Insurance Holdings Inc
ティッカーコード:SLDE
上場市場:NASDAQ National Market System

業績についてのリンク
https://finance.yahoo.co.jp/quote/SLDE/performance

スライド・インシュアランス・ホールディングスは、AI(人工知能)を活用して住宅保険を中心に展開する急成長中の沿岸地域専門の損害保険会社です。特に災害リスクの高い沿岸地域において、データ分析に基づいた独自の引受能力を強みとしています。

保険の対象となる地域はハリケーンや自然災害リスクが高いフロリダ州を中心とした米国の大西洋沿岸に位置する州です。
通常、保険会社は大きな保険金支払いが発生するリスクが高いため、自然災害の多い地域は避ける傾向にあります。実際、フロリダ州の沿岸地域では従来の全米規模の大手保険会社が撤退したり、引受を縮小したりする傾向にあります。その結果、損害保険の供給が不足し、この地域に大きな需要が生まれました。
そこに目をつけたのが同社であり、AIによるリスク分析や再保険ネットワークを駆使し、大手が敬遠する高リスクの沿岸部住宅の保険市場へ戦略的に参入しました。

再保険は保険会社のための保険で、大規模災害で生じる巨額な保険金支払いから経営を守るために支払いの一部を他社に移転し、リスクを分散させる仕組みです。
特に、民間市場で保険が見つからない、または法外な保険料になる住宅所有者のための最終的な公的保険制度に参加し、短期間で数十万件規模の保険契約を獲得するなど、市場の空白をスピーディーに埋めています。

同社はリスクの高い地域でも収益を維持・拡大できる保険モデルを確立していますが、これは以下のような仕組みによって支えられています。

・AIによる精密な保険引受とデータ分析
約6兆ドル規模のTIVデータベース(引受と保険金請求のデータセット)を独自開発したAI・機械学習モデルで活用。
このモデルは契約ごとの損失率、再保険コスト、収益性を販売時点でリアルタイムに予測できる。
従来の保険会社が地域区分で一律の保険料を設定するのに対し、同社はAI分析を用いて個別の住宅ごとのリスクを評価し、契約単位で将来損失を予測して保険料を算出。
この仕組みにより、リスクの高い地域でも正確に引受を選別し、不採算契約を回避して期待損失に応じた最適な価格設定を実現できる。

・再保険構造による資本保全と高収益性
再保険によるリスク分散設計によって、ハリケーンなどの大規模災害損失を限定化している。
業界標準を上回る“194年に一度の大災害”にも耐えうる約25億ドル規模の多層再保険プログラムを構築。
自社グループの中にある再保険会社(キャプティブ)を使ってリスクを小分けに管理しながら、災害対応の債券を発行して投資家から資金を集め、災害時の準備金を市場にも分担させることで、大規模災害による財務的な影響を限定化している。

購入する再保険の60%以上を複数年契約とすることで市場の価格変動リスクを避けている。
この構造により、大規模災害発生後でも税引前利益の25%以内に損失を抑えるリスクヘッジを設計しており、資本効率を高めている。

・高効率な保険業プロセスと自動化
自社開発の包括的なエンド・トゥー・エンド保険のプラットフォームを用いて、申し込みから査定、保険料算出、再保険コスト見積もりまでを自動化。
損害査定プロセスにAI分析と航空画像分析を組み合わせ、被害発生から48時間以内に保険金査定と修繕業者の手配を実現する体制を構築。
効率的なクレーム処理によって損害調整費用を削減し、営業利益率を業界平均より10~15%改善している。

以上のような技術とリスク制御体系を通じて「収益性の高いリスクだけを精密に選び、余剰リスクは再保険に転嫁する」という高度なポートフォリオ経営を実現しています。
その結果、損害保険会社の収益状況を総合的に示す指標であるコンバインド・レシオ(支出率)は、72.3%(業界平均は90%台)になり、高リスク市場でも極めて高い収益性を維持しています。

同社のコンセプトの中心は、ざっくりと「この地域は危険」と決めつけずに、細かく細分化してリスクを判断し、それに応じた保険料を設定するという点にあります。
それを可能にしているのがビッグデータとそれを解析するAIテクノロジーです。
従来のように地域ごとに危険度を設定するのではなく、衛星画像、建物構造、築年数、屋根材質、標高、過去の風水害頻度、周辺の修理コスト動向など、数百種類に及ぶ情報を組み合わせて一軒ごとにリスクを数値化しています。

このAIモデルは機械学習によって常に更新され、災害発生後の実際の損害データを反映していくため、リスクが高い地域でも安全な住宅と危険な住宅を正確に判別できます。
結果として「危険地域だから一律に高い保険料」という従来の常識を覆し、公平で実態に即した料率設定を実現できるのです。

最近、地球温暖化が引き起こす災害の激甚化に伴い、自然災害による建物の被害が拡大し、損害額も増加傾向にあります。
今後、より大規模な災害が頻発する環境下でも同社が高い収益性を維持するためには、再保険プログラムを多層化して費用効率と損害吸収力のバランスを最適化し、AIによる災害予測やリスク分析の精度を一層高めることで、想定外の損失の拡大を防ぐ必要があるでしょう。

会社ウェブサイト
https://slideinsurance.com/

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