アメリカ成長株:タルサス・ファーマスーティカルス(Tarsus Pharmaceuticals)の概要
タルサス・ファーマスーティカルス
Tarsus Pharmaceuticals Inc
ティッカーコード：TARS
上場市場：NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://finance.yahoo.co.jp/quote/TARS/performance
タルサス・ファーマスーティカルス社は、高いアンメットニーズ（満たされていない医療ニーズ）がある、主に眼科の治療薬を開発・商業化しています。
現在の事業の柱は、デモデックスニキビダニが引き起こす、まつ毛ダニ性眼瞼炎（がんけんえん）の治療薬である“XDEMVY”という目薬です。
ニキビダニは、人間の顔の皮脂腺や毛根に潜んでいる、体長が1ミリ以下の小さなイモムシのような寄生虫で、成人の皮膚には自然に存在しています。多くの場合無害ですが、過剰に繁殖するとさまざまな皮膚疾患の原因になることがあり、まつ毛ダニ性眼瞼炎もその一つで、まぶたの縁や皮膚に炎症を引き起こします。
米国では約2,500万人が罹患していると推定されており、特に成人のまぶたの病変の一因として重要となっています。
アイメイクやまつ毛エクステの普及、不十分なクレンジングなどにより、目元の衛生状態が悪化して発症するケースが増えています。
同社が開発したXDEMVYは、ロチラネル（lotilaner）という化合物を主成分としていて、寄生虫や昆虫にしか存在しない神経系のイオンチャネル（イオンを細胞の内外に通過させる細胞表面のゲート）を標的とし、阻害することでダニを麻痺・駆除します。
XDEMVYは、FDA（米国食品医薬品局）承認を受けた唯一のまつ毛ダニ性眼瞼炎治療薬です。
2023年7月の承認を受け、同年8月末から処方薬として商業販売が開始されました。
商業化以降、XDEMVYは眼科領域で非常に成功した新薬の一つとなっており、売上は急速に拡大しています。また、米国だけでなく、中国、EU、日本での承認と商業化を目指しており、各国で申請作業を進めています。
XDEMVYの販売と並行して、主成分であるロチラネルをその他の症例にも適用する以下の２つの治療薬を開発中です。
1)TP-04（眼型酒さ）
・まぶたおよび周辺組織への使用に特化して設計された、皮膚に塗るタイプの外用ゲル製剤。
・眼型酒さ（しゅさ）は、“酒さ”（顔に赤みやブツブツができる皮膚疾患）の一種で、目の周辺やまぶたに、かゆみ、乾燥が起きて、眼が充血し、異物感、まぶしさを感じる。
・米国では約1500万～1800万人が罹患しており、そのうち50%以上がデモデックスダニが原因となっている。
・2025年後半に第2相臨床試験を開始する予定。
・眼型酒さにおける標準治療を確立する可能性を秘めている。
2)TP-05（ライム病、マラリア）
・経口薬として使用する予防薬で、主にライム病予防と地域マラリア削減を目標として開発中。
・ライム病はダニ、マラリアは蚊を介する感染症であり、ロチラネルはこれらの媒介虫に有効。
・ライム病は現在、承認された解決策がなく増大する公衆衛生上の危機となっている。
・マラリアは前臨床試験の段階にあり、ライム病は2026年に第2相臨床試験を開始する予定。
・ワクチンを使わない薬物ベースの予防治療薬として注目されている。
XDEMVYの売上は、2024年通年で約1億8,000万ドル、2025年第1四半期には前年同期比で約200%増の7,830万ドルに達しています。
処方医数や患者数も増加し、2024年末には15,000人以上の眼科専門医がXDEMVYを処方、2025年2月時点でアメリカの90%以上の患者が保険適用対象となっています。
このような商業的成功は、有効成分であるロチラネル自体の高い有用性と市場での受容性を示しており、今後ロチラネルを基盤としたTP-04、TP-05などの開発品や新たな適応拡大への期待も大いに高まります。
医療業界だけでなく一般消費者への積極的なダイレクト広告や販売網拡大策も功を奏しており、今後も処方数・売上ともにさらなる上昇が見込まれています。
一般的に、臨床段階の開発薬は、予期しない副作用が出たり、有効性が低かったりして頓挫する場合もあります。
その点、すでに成功しているロチラネルの場合は、そのリスクの可能性は低く、今後の同社の成長は安定的かつ持続的なものとなると考えてよいでしょう。
会社ウェブサイト
https://tarsusrx.com/
コメント