アメリカ成長株: リズム・ファーマシューティカルズ(Rhythm Pharmaceuticals)の概要
リズム・ファーマシューティカルズ
Rhythm Pharmaceuticals Inc
ティッカーコード:RYTM
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://finance.yahoo.co.jp/quote/RYTM/performance
“空腹を感じたら食べ、食べたら満腹になる”当たり前のように思いますが、これは体の中でホルモンによって食欲が適切に制御されている結果です。
食欲抑制ホルモンの一つである“メラノコルチン”は、その受容体であるMC4R(メラノコルチン4型受容体)に結合することで食欲抑制とエネルギー代謝促進のシグナルを脳に伝達します。
メラノコルチンが正常に機能していればエネルギーの獲得と消費のバランスが取れて肥満になることはありません。
ところがこの経路に関連するタンパク質の遺伝子に異常が生じると食欲の抑制が効かなくなってしまいます。この疾患の患者は過剰な食欲を抑えられず通常の食事量を超えて食べ続ける結果、肥満が進行することになります。
今回紹介するリズム・ファーマシューティカルズ社はMC4R経路に注目し、この経路のシグナルを増強することで、こうした“遺伝子変異性肥満症”の治療を目指しています。
同社が開発したSetmelanotide(セトメラノチド)はメラノコルチンに似た構造で、その受容体であるMC4Rに結合することでメラノコルチンのように振る舞うことができます。
セトメラノチドが適用されるのは、以下の遺伝子変異によって引き起こされる遺伝子変異性肥満症に適用されます。
※遺伝子名(作られるタンパク質):
1.POMC(プロオピオメラノコルチン):
プロオピオメラノコルチンはメラノコルチンの元になるタンパク質で、分解による活性化を受けてメラノコルチンになる。
POMC遺伝子の変異はプロオピオメラノコルチンが異常な形となることで正常な分解や活性化が起きずメラノコルチンとして機能しなくなる。
2.PCSK1(プロプロテインコンバーテーゼサブチリシン/ケキシンタイプ1):
このタンパク質はプロオピオメラノコルチンを活性型のメラノコルチンに変換する酵素。
PCSK1遺伝子の変異はこの酵素の異常を引き起こし、メラノコルチンへの分解や活性化が妨げられる。
3.LEPR(レプチン受容体):
食欲を抑制するホルモンであるレプチンはレプチン受容体と結合し、メラノコルチンの作用を増強して食欲抑制のシグナルを脳にMC4Rを介して伝える。
LEPR遺伝子の変異はレプチン受容体の異常を引き起こし、レプチンとの結合を妨げることでレプチンの食欲抑制シグナルが失われる。
4.SRC1(核受容体共活性化因子1):
このタンパク質には遺伝子のDNAからメッセンジャーRNAへの転写を助ける役割がある。
SRC1遺伝子の変異は遺伝子からタンパク質が作られることを妨げ、食欲抑制を含む様々なシグナル伝達や代謝調節が乱れる。
5.SH2B1(細胞内受容体タンパク質):
このタンパク質は細胞内のシグナル伝達に関わっており、SH2B1遺伝子の変異はインスリンやレプチンのシグナル伝達が変化し、食欲調節やエネルギーバランスの調節が乱れる。
※遺伝子はタンパク質の設計図であり、何らかの原因で遺伝子の情報が書き換えられると正常なタンパク質が作られなくなります。
これらの遺伝子変異は食欲抑制シグナルやエネルギー代謝を阻害し、肥満や過食症などの症状を引き起こします。
同社が開発中のセトメラノチドはメラノコルチンの機能を補完することによって遺伝的な要因で失われた食欲抑制シグナルを回復し、増強します。
4.と5.の場合にはメラノコルチンやMC4Rが直接関与していませんが、それにもかかわらずセトメラノチドの効果が期待されるということは、一般的な肥満症にも適用できる可能性を示唆しています。
最近では、MC4Rの動作不良が加齢性肥満(中年太り)に関わっているという実験動物での報告もあり、ここをターゲットにした創薬が想定されています。
ということは、希少な遺伝子変異性肥満症だけでなく加齢性肥満のような一般的な肥満にもセトメラノチドが有効かもしれません。
今のところ同社にそのような計画はないようですが、将来的には一般向けのダイエット薬として開発を進める可能性もあり、そうなれば肥満に悩む多くの人々を救うことになるかもしれません。
会社ウェブサイト
http://www.rhythmtx.com
コメント