アメリカ成長株: ブループリント・メディシンズ(Blueprint Medicines)のアップデート2
ブループリント・メディシンズ
Blueprint Medicines Corp
ティッカーコード:BPMC
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/BPMC
ブループリント・メディシンズ社はキナーゼ阻害剤の開発に特化した医薬品開発メーカーです。キナーゼはタンパク質をリン酸化する酵素で、ガン細胞で無秩序な細胞増殖を促すシグナル伝達に関わっています。
→ ブループリント・メディシンズの概要
→ ブループリント・メディシンズのアップデート
同社の開発薬の多くは、キナーゼをターゲットとしてピンポイントで阻害することでガン細胞の増殖を抑える分子標的薬です。
同社が開発し、すでにFDA(アメリカ食品医薬品局)に承認されているアバプリチニブやプラルセチニブはこのタイプのものです。
今回は、同社が現在開発中のキナーゼ阻害剤の中で最も有望とされている“BLU-852”に注目したいと思います。
BLU-852はその他の開発薬と同じくガン治療薬ではありますが、ターゲットが違っていてガン細胞を直接叩くのではなく免疫によって攻撃させるという戦略を取ります。
小さなガン細胞の元は毎日のように体の中で生まれていますが、免疫細胞によって攻撃されて消えるため問題にはなりません。
ところが中には免疫からの攻撃を回避するガン細胞があり、見逃されてしまうと無秩序な増殖を繰り返して体を蝕んでいきます。
免疫細胞は本来、自分自身を攻撃することがないように自己の細胞と異物を見分けていますが、ガン細胞は自己の細胞を装うことで免疫から逃れてしまうのです。
ガン細胞を自己の細胞と誤認すると、免疫を抑制する機構が働いて攻撃を止めてしまいますがBLU-852は、この抑制シグナルの伝達に関わるMAP4K1というキナーゼを阻害します。
MAP4K1が阻害されると免疫が正常に働いてガン細胞が異物として排除されます。
このように、BLU-852は免疫を介して間接的にガン細胞を叩くのに対し、アバプリチニブを始めとするその他の開発薬は直接的にガン細胞に作用します。
ガン細胞の増殖を直接抑えようとすると、ガン細胞だけではなく健常な細胞までが影響を受けるため細胞毒性による様々な副作用が起きますが、人体が元々持っている免疫を利用するだけのBLU-852には直接的な細胞毒性はありません。
同じように自己の免疫を利用したガン治療薬には“免疫チェックポイント阻害剤”がありますが、これは免疫細胞の一つであるT細胞が対象の表面をさぐって自己の細胞と異物を区別するチェックポイントを妨害するもので、すでに実用化され成果を上げています。
免疫チェックポイント阻害剤はBLU-852と組み合わせて使用するとより強力な抗腫瘍作用を発揮できることが分かっていて、現在ロシュ社の免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の共同開発が進んでいます。
大きな期待を持って登場した免疫チェックポイント阻害薬ですが、単剤で使用しても治療効果には限界があると言われていて、最近は化学療法と併用する“併用化学療法”なる治療も行われています。
そもそも免疫チェックポイント阻害薬は化学療法のような辛い副作用の少ない治療薬として開発されたはずなのに、化学療法と組み合わせるのではあまり意味がありません。
BLU-852が化学療法に代わってチェックポイント阻害剤の効果を増強できれば、人体が本来持つ治癒力を利用するガン免疫療法を確立できる可能性があります。
BLU-852はまだ臨床試験の初期段階ですが、この“最も有望”と言われるキナーゼ阻害剤には大きな期待がかかっており今後の展開に注目したいと思います。
会社ウェブサイト
www.blueprintmedicines.com
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