アメリカ成長株:ディサーナ・ファーマシューティカルズ(Dicerna Pharmaceuticals)のアップデート
ディサーナ・ファーマシューティカルズ
Dicerna Pharmaceuticals Inc
ティッカーコード:DRNA
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/DRNA
RNA干渉を利用したRNAi治療薬を開発するディサーナ・ファーマシューティカルズ社を以前紹介しましたが、期待の高かったこの技術の今後の可能性について考えてみたいと思います。
RNA干渉は外部から加えた短いRNAの断片によってタンパク質の設計図であるメッセンジャーRNAが分解される現象です。
これを利用して標的のタンパク質のメッセンジャーRNAを分解し、病気の原因となるタンパク質が作られるのを阻止するのがRNAi治療薬です。
従来の治療薬は病気を引き起こすタンパク質そのものを標的として分解を促進したり、その働きを妨害したりするのを目標に開発されますが、この方法ではタンパク質を大量に集めて構造解析し、それに合う構造の分子を設計する必要があるため手間・時間・コストがかかります。
それに対してRNAi治療薬は標的タンパク質のアミノ酸配列から推定されるRNAを合成するだけで済むので設計は至って簡単です。
実現すれば様々な創薬不能とされてきた病気の治療も可能とあって大いに期待されていました。ところがRNAi治療薬の開発は実際には難航しているのが現実で、撤退や試験の中断が相次いでいました。
家族性アミロイドポリニューロパチーのRNAi治療薬としてFDAに初承認された“パチシラン”のように発売まで漕ぎ着けたのは非常にレアなケースです。
同社の開発の筆頭だった”Nedosiran”(原発性高シュウ酸尿症治療薬)も最終試験の段階で効果に疑問符がつくという残念な結果になっていまいました。
そこで注目したいのは、同時に開発している慢性B型肝炎ウイルス(HBV)の抗ウイルス薬の“RG6346”です。
標的は“HBs”というウイルスの表面を形成するライフサイクルに必須なタンパク質で、これが欠けると増殖できなくなります。
ウイルスのタンパク質は人間のものと大きく異なるため、人体のタンパク質を標的にする場合と比べて標的に適していて副作用が小さく効きやすいと考えられます。
RG6346は、2020年6月に第1相試験(フェーズⅠ)の安全性試験を無事に終えて今年の3月にはロシュ社との共同開発で第2相試験(フェーズⅡ)を開始しました成功すればRNA干渉を利用した初の抗ウイルス薬となります。
そうなると、なかなか決定打の出ない新型コロナウイルスの抗ウイルス薬の開発にも期待が高まってきます。
昆虫や植物がRNA干渉を使ってウイルスを撃退していることを考えると、人体にこれを応用する戦略は理にかなっていると言えます。現在世界では次々と現れるコロナ変異株に振り回される状況が続いていて、ワクチンの効果が低下したり治療薬の効きが悪くなったりすることが危惧されています。
その点、RNAi治療薬はRNA断片の配列を変えるだけで対応できるので変異にも強く、コロナとの戦いにおける有力な武器となり得るものです。
RNAを治療薬として使う上では、RNAの不安定性と患部への輸送という2つの課題が立ちはだかっていました。
しかし、ファイザー社やモデルナ社のメッセンジャーRNAワクチンの開発でRNAの安定化や体内デリバリーの技術が大幅に発展したことから、再びRNAi治療薬が脚光を浴びるようになるかもしれません。
会社ウェブサイト
www.dicerna.com
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