アメリカ成長株:センテッサ(Centessa)の概要
センテッサ・ファーマシューティカルズ
Centessa Pharmaceuticals PLC
ティッカーコード:CNTA
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/CNTA
センテッサ・ファーマシューティカルズ社はガン、血友病、自己免疫疾患、高血圧、神経障害、遺伝病などの様々な疾患のための治療薬を開発する10の製薬企業を子会社として抱えています。
今回はこれらの子会社のうちのApcinteX社が開発している血友病のための治療薬候補“SerpinPC”をピックアップして紹介します。
血友病は痛みを伴う出血が頻発し、関節を痛め、早期に死亡してしまう深刻な病で正常に血が固まらないことで引き起こされます。ヨーロッパの王族の多くが血友病患者であったことから、歴史的にも非常に有名な病気です。
原因は血液凝固因子の不足にあることが分かっていて、これを補充する治療法が長らく行われて来ました。
補充療法には献血から作られる血液製剤と遺伝子組み換えによって作られる凝固因子製剤を使う2つの方法がありますが、感染症や安定性の問題があります。
例えば、日本で有名な薬害エイズ事件で見られたように、不完全な処理でウイルスや細菌が残ってしまうことで感染症が起こります。また、化学合成した分子と比べて血液製剤は不安定で分解が早く効果が持続しないのです。
そこで同社は、補充療法に代わる手段として、人体に元々備わっている血液凝固機能を利用した治療薬を開発しています。
血液凝固には“トロンビン”という酵素がキーとなることが分かっていて、トロンビンが少ないと血が固まらずに出血を引き起こし、多すぎると過剰な凝固による血栓ができてしまいます。
この仕組みを詳しく調べると、トロンビンは“プロテインC”というタンパク質分解酵素を活性化し、これが血液凝固因子を分解することで血が固まるのを妨げていることが分かりました。逆に、トロンビンが減ればプロテインCが活性化されず血液凝固因子が働いて出血が止まります。ということは、トロンビンよりも下流のプロテインCの働きを直接抑えてやればよいわけです。
そこで同社は“SerpinPC”というプロテインC阻害剤を開発しました。
SerpinPCは遺伝子組み換えで作られたタンパク質で分解されにくく、かつプロテインCだけを阻害するように設計されています。プロテインCが血液凝固因子を分解するのを阻害することでトロンビンの量に関係なく血液凝固を促進することができます。
SerpinPCは効果が長く持続し、副作用も小さいことが期待されていて、現在臨床試験の第二段階にあり、順調に製品化に向かっています。
SerpinPCの“Serpin(セルピン)”は、ほとんど全ての生物が持っているタンパク分解酵素を阻害するタンパク質で、様々なタイプのものが見つかっています。
タンパク分解酵素の阻害剤と言えば低分子の薬剤が多く開発されていますが、相手を選ばずに阻害してしまうため、副作用が大きい傾向にあります。
一方セルピン類は抗体のような巨大なタンパク質の分子で、決まった相手だけを選んで阻害できるため、副作用の小さい薬剤としての利用が期待されています。
セルピン類は血液凝固の他にも様々な生理機能のコントロールに関わっていて、それぞれの役割に合わせたものがあります。
多様性のあるセルピン類は様々なシチュエーションで使える便利なタンパク分解酵素の阻害剤として利用できるため、これを元にしてSerpinPCのような治療薬が開発されてくることが期待されています。
会社ウェブサイト
www.centessa.com
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