アメリカ成長株: リレー・セラピューティクス(Relay Therapeutics)の概要
リレー・セラピューティクス
Relay Therapeutics Inc
ティッカーコード:RLAY
上場市場:NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/RLAY
新しい治療薬の開発は、病気の原因となっている物質の特定から始まりますが、たいていの場合はタンパク質です。
次にターゲットとなったタンパク質が働かないようにすることを目指しますが、これには大きく分けて“バイオ医薬品”と“低分子医薬品”を使う2つの方法があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。
抗体を使うバイオ医薬品は、作るのは生体まかせなので設計する必要がなく、素早く提供できますが、大量生産が難しく不安定なため輸送が困難であり点滴で投与する必要があります。一方、低分子医薬品は、開発には手間暇がかかりますが、大量生産できる上に保存・輸送に有利な錠剤の形で提供できます。
リレー・セラピューティクス社は低分子治療薬の開発に特化していて、いくつかのガン治療薬が臨床試験中です。
低分子医薬品の開発は、ターゲットのタンパク質の立体構造を詳しく解析し、どの部分にどんな形のピースをはめ込めばそのタンパク質の機能を抑えることができるかという分子レベルのパズルを解くようなものです。
例えば同社が臨床試験中のRLY-1971という低分子治療薬は、ガン化やガンの増殖に関与するSHP2というタンパク質をターゲットにしていて、SHP2のバインディングポケット(薬剤結合部位)と呼ばれる“くぼみ”にRLY-1971の分子がピッタリと収まることで全体の構造変化を引き起こして機能させないようにする抗ガン剤です。
しかし、このパズルを解くのが非常に難しいのです。というのも、タンパク質は一定の形をとっているのではなく分子運動によって常に動いているからです。
同社では、この“動き”がタンパク質の機能とどのように関わっているかを、スーパーコンピューターを使って解析し、標的となるバインディングポケットを探し出します。
これを可能にしたのは、タンパク質の構造を室温下で解析する技術です。従来の構造解析は、タンパク質をマイナス170度に冷やした状態で行っていましたが、この極端な低温下では生体内でのタンパク質の状態とはかけ離れているという問題があったのです。タンパク質の室温下構造解析のデータを基にしたコンピューターシミュレーションによって、以前は難しかった病気の原因となるタンパク質の阻害剤の開発もできるようになりました。
コンピューターシミュレーションが登場する以前は、星の数ある低分子化合物の中から大雑把に候補をしぼり、実験によって効果を一つ一つ調べていくという時間も手間もかかる方法に頼っていたことを考えると、比較にならないくらい効率化しました。
現在、新型コロナウイルスの治療薬の開発が急がれていますが、ここでもコンピューターシミュレーションの技術が生かされています。
新型コロナウイルスの研究が盛んに行われた結果、ウイルスの持つタンパク質のうちのいくつかがターゲットの候補として挙げられており、コンピューターシミュレーションによってこれまでなかったような“特効薬”が開発されることが期待されています。
低分子治療薬は錠剤の形で提供できるため、大量生産、保存、輸送の点で有利である上に、点滴ができるような病院施設や衛生管理の必要がなく、大量の治療薬を素早く世界のどんな地域にも供給できます。
またワクチンは事前に接種しておかなければ意味がないのですが、治療薬は発症後でも間に合います。
今回のコロナ騒動ではワクチンばかりが注目を集めていますが、ワクチン開発には超えるべき壁が何重にもあり、いまだに供給が見通せない状況にあります。世界的な流行を抑えるためにはむしろ低分子治療の方が向いていると見る向きもあり実際に何社かで開発が進められています。
ひょっとするとワクチンが治験や効果の検証で足踏みしているうちに低分子の特効薬が登場して一気に収束に向かうというようなことになるかもしれません。
会社ウェブサイト
www.relaytx.com
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