アメリカ成長株: ゼンタリス・ファーマシューティカルズ(Zentalis Pharmaceuticals)の概要
ゼンタリス・ファーマシューティカルズ
Zentalis Pharmaceuticals Inc
ティッカーコード：ZNTL
上場市場：NASDAQ National Market System
業績についてのリンク
https://stocks.finance.yahoo.co.jp/us/annual/ZNTL
大手自動車メーカーの市販車を改造し付加価値をつけて販売するチューニングメーカーというものがありますが、ゼンタリス・ファーマシューティカルズ社は既存の医薬品を改造してより優れた効果を持つ新しい薬を作り出す、言わば“製薬業界のチューニングメーカー”です。
未開拓の分野に踏み込んで新しい道を切り開くのではなく、すでに詳細まで調べられている疾患をターゲットとしているため、基礎研究の必要がなく薬のチューニングに専念できるという点で有利です。
当然競争も激しいのですが、同社によるとガン生物学と医薬品化学を組み合わせた強力な“創薬エンジン”を持っていて大手製薬会社よりも新しい治療薬を短期間で開発できるそうです。
現在のところ同社は７つの治療薬の臨床試験を進めていますが、乳ガン、固形腫瘍、血液悪性腫瘍、肺ガンなどの、いずれも患者数が多く病気の解明も進んでいて既存薬があるような“メジャーな”ガンをターゲットとしています。その中で一番臨床試験が進んでいる“ZN-c5”は乳ガンのための抗がん剤です。
これは乳ガンの発生や増殖に関わることが分かっている“エストロゲン受容体”の阻害と分解を促進する治療薬で、エストロゲンの阻害効果だけの多くの既存薬よりもよく効くというのが売りです。
同じ様な機構で作用する“フルベストラント”という類似の抗がん剤（アストラゼネカ社）がすでに実用化されていますが、評価はあまり高くないようで、英国のNICE（国立医療技術評価機構）はその効果には懐疑的であり、既存薬以上の効果は認められないと評しています。ZN-c5がフルベストラントや既存薬を越えた効果を発揮して臨床試験を終了できれば、同社の評価が一気に上ることは確実です。
しかし、同社のような“既存薬のチューニング”という手法がうまく行き過ぎると少し困ったことになるかもしれません。というのは、これが創薬業界で流行ってしまうと、新しい分野に参入する企業が減り今までにないような画期的な治療薬が出て来なくなってしまう可能性があるからです。
ただでさえ膨大な開発費がかかる世界ですから、地道な基礎研究をすっ飛ばして手っ取り早く新しい治療薬を作れるとなればそちらに流れてしまうのは自然なことです。
研究費や施設に余裕がない小さなベンチャー企業はよしとしても、製薬大手までがチューニングメーカーに成り下がるようなことはやめていただきたいのですが、最近は自社開発よりも創薬ベンチャーの買収に勤しむ傾向にあり、危惧していることが現実になってしまうかもしれません。
会社ウェブサイト
www.zentalis.com
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